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密室トーク Vol.3

地理人(今和泉)からは、コミュニティハブの一環で、毎月密室トークイベントをお届けしています。
題して「好きで始めたこと、仕事にする?」

「好きなことで仕事をする」…そんな人もいますが、それが最善の方法とは限りません。6月は自身のマニア活動を発端に仕事にした松澤さん、村田さんを招き、7月はその間で揺らぐ坂田さんに話を伺ってみました。好きなことを仕事にしたほうが良いか、分けた方が良いか…それを知るためには、分けている人の話も聞きたいところです。今回は、好きなことと本業を分けているゲストをお呼びして、リアルな事情に迫りました。(以下、開催レポートです)

・日時
9月25日(月)19:30〜21:30

・話し手(聞き手)
石井公二(片手袋研究家)
松澤茂信(合同会社別視点代表)
今和泉隆行(空想地図作家)

石井さんのお話は、書籍やインタビュー、これまでのトークイベントで、片手袋についてのお話だけでも時間が足りなくなってしまうほどの濃さ。そのためなかなか迫れないそれ以上の話を掘り出すべく、幼少期のお話から伺うことに。片手袋以外にさまざまな映画からエルヴィス・プレスリーを含めた広範囲のカルチャーへの造詣の深さの萌芽はどこから来るのか聞いてみると、幼少期からその萌芽は始まっており、若くして活字中毒だったそうです。

いわゆるマニア活動が徐々に生業になったり、生業に近づいてきているこれまでのゲストの方々とは異なり、石井さんは片手袋を生業とせず、それぞれ分けて活動しています。実家の飲食店を継いで本業をしていますが、実家および本人にその意志があったわけではなく、石井さんはギター弾いたり本読んだり、働かずに生きていきたかった、と話します。「お店の多忙さを見かねて手伝っているうちに、いつしかお店を継いでいて、生業になっていた。自由に片手袋の発言をするためにも、生業と片手袋を分けたのは正解だったと思う。どちらも自由にやるため、どちらかのストレスをどちらかで解消することができる。生業があるから片手袋で変に稼ごうとしなくなる。」……この密室テーマの問いである「好きで始めたこと、仕事にする?」の答えとして、仕事にした例もありましたが、逆に「仕事にしないほうが、好きで始めたことは自由にできる」という石井さんの実例も、一つの答えなのです。

生業はすんなりと定まったものの、片手袋活動のアウトプットは、思いの外時間を要します。初めて発見した2004年から起算して、展示に至るのがその9年後、それからいくつかのテレビ・ラジオ番組に出演しつつ、最も成し遂げたかった出版は2019年…と15年後の話となります。生業を定めたかったが生業が定まらなかったまま、うっかり本が出てしまった地理人と構図は逆で、早く叶えようと思ったことは時間がかかり、逆にそこまで意識していなかったことが叶ってしまうという、自分の意志と反する流れもあるのです。「目的ありきで下心あると、あまりうまくいかないことがある」と話す石井さんでしたが、片手袋から派生してデイリーポータルZのライターを始めたのも、予期せぬ始まりだったようです。片手袋に取り組む前からカルチャーに触れていて、40年分溜まっていた発想をアウトプットする機会になっているようです。

本が出てからのほうがややこしい悩みが増えた、とも話す石井さん。「それまで無心でやってこれたが、一回まとめた(達成した)ことによってテンションのピークを越えてしまう。そこで他の人の視点や観点を取り入れることで、次につながっていくような気がしている。」この意向が現在の都市のラス・メニーナスにつながっているのかもしれません。

それでは次回は一転して、好きなことと本業が近そうなゲストをお呼びしてお話を伺います。

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