『スリル・ミー』とは、面白い演目で(ストーリーは欠片も面白くないが)、役者の組み合わせとか、観る側の状況とか、いろんな要素で全然違う物語になる。
同じペアでも日によって全く違ったりするし。
余白があるからかなぁ。
音楽もピアノだけでシンプルだし。

2023は最初、木村前田ペアしか取れなかったんだけど、尾上廣瀬ペアも同じのやつを運良くお譲りいただけた。
1回ずつ。なんか、チケット取りあんまり頑張れなかった。まぁ、仕方がない。当日券を狙う元気もないし。

しかし、私が観た9月13日の木村前田ペアは、かなり面白い回だったのではないだろうか。
少なくとも私には。
だって、観たあとに、なんて『純愛』で『悲恋』で『懺悔の物語』なんだって思ったから。
今まで何回かスリル・ミーは観てるけど、こういう感想を持った記憶はないかな〜。

まず面白かったのが、木村「私」の強さ。
達成くんて、なんとなくどの役でも強いイメージがあるんだけど、「私」でも強かった。彼に媚びてないし、対等だし、なんなら「彼」よりもウエメセ。
これって、達成くんが過去の様々な「私」に影響受けず、独自の「私」を演じてるんだなって思って冒頭から、もう面白い。

前田公輝くんは、こうきくんじゃなくてごうきくんなのか〜くらいしかわからない役者さんで、１番印象に残ってるテレビ番組が、なんか猫のいる温泉に行くという旅番組で、そのときなゆるふわな印象が強かったので、正直「彼」のイメージが観る前はわかなかった。
登場時も歴代の「彼」に比べたら少々おとなしいかなとも思ったのだけど、話が進むに連れて芝居のうまさに引き込まれていった。
なにより、１９歳の「かっこつけ方」なんだよな。せいいっぱい大人のふりをする１９歳。

このペア、めちゃくちゃ１９歳だった。　

あと、個々では普通の子っぽいのに、２人が絡むとめちゃエロくなるの。すごく絵になる。
もう、見栄えの良さで優勝（２人とも超私の好みのタイプなので３割増でよく見えるのかもしれんけど）
この、エロくて萌える感じは、コミケで売ってる同人誌だな…って印象（わかる人には伝わると信じてる）
いや、私が絵がかける人なら描きまくると思う。

２人の関係性が対等に見えるから、世間的には仲の良い友人同士に擬態できてそうな印象もうけた。
でも、木村「私」が前田「彼」が好きすぎて、もうめちゃ恋しちゃってんのね実はって感じで。
好きすぎて、「彼」を甘やかして、甘やかして、甘やかして、骨抜きにしちゃった感もあったかな。
前田「彼」は寂しい子だから、これだけ好き好き言われたら、そりゃもう離れられないだろう。

木村「私」は「彼」を好きすぎて、離れない方法を思いついてしまったたんだろうけど、それも他ペアのように計算ずくなのかどうかわからない…と私は感じた。
ただもう、素直に恋慕に身を任せてしまったら、何かが狂ってしまって、こんな結果になってしまったのではないかと。

メガネのことを告白する木村「私」の恍惚とした表情が印象的。あれは一種のエクスタシーだったのではないだろうか。
「彼」のこの先の未来までも自分の手に入れたのだから。

だから、ここまではこのペアも「私」にとってはハッピーエンドルートなのかなと思っていた。

ところが、「彼」が死んでからの回想をする「私」がズタボロで、達成くん鼻水まで流しながらな熱演で、ぐちゃぐちゃに泣いてて、観てる私までものすごく悲しくなってきて。

釈放を言い渡されて、握りしめた手を開いていく時に、強い光の中で開放されていくはずなのに、その手のひらの中は空っぽで、何もないように見えた時に、初めて「私」が懺悔しているように見えた。
凄惨な事件の代償は空虚でしかなかったのだと。

木村「私」はこのあと廃人コースの人生歩みそうだなと思って観終わったのでした。

カーテンコールでも達成くん涙が留まらない様子で、前田くんもちょっとビックリしていた感じだった(笑)
本番で物語が成長するんだなとも思った瞬間。

めちゃくちゃ面白かったのでもう１回観たいんだけどなー。
配信して欲しいです。

余談。
ピアノの落合さんのこっそりファンなので、オペラグラスでピアノを引いてる姿をチラチラ覗いていたのだけど、ピアノを弾く殿方の姿はなんと素敵なのかと思って、ものすごく目が足りないペア+ピアノの組み合わせでした😻