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うまくいかない話、勘違いの話

上映時間のこと

友だちとは何日も前に約束をしておかないと落ち着かないのに、映画館や美容院に行くときは直前にならないと決められない。

映画館で何かを観よう、と思うときは必ず予約をしてから行くようにしている。
思い立ったときがいちばん観たいと思ったときで、その時残っている最も良い席を取りたいからだ。
さらに、購入しておくことで、出不精の未来のわたしがぐずつかないよう先回りができる。


それなのに、これまで上映時間に間に合ったことがほとんどない。

早く着けば時間を潰さねばとカフェでのんびりしていて、気づけば開始五分前になっていたり。結構ぎりぎりだなと思いながら、およそ一時間後の上映に合わせて家を出る準備をし、結局駅の出口で迷子になってしまったり。

その点、本編の前にCMが流れる映画館はいい。

先週もまた、間に合わせることができず、足元の暗い館内で自分の座席番号を見つけられないまま出たり入ったりしてしまった。

時間通りに着く人がいつもまぶしい。

飛行機の預け荷物のこと

初めて飛行機に乗ったのが、小6にしてひとりでだったからかもしれない。

スーツケースのような機内に持ち込めないおおきな荷物を預けると、最後は到着先の空港でぐるぐると回るベルトコンベアーから出てくる。

この仕組みがまったく理解できず、かなり長い間(おそらく20代半ばくらいまで)「ワープしているんだ」と勘違いしていた。

この勘違いを決定的にしたのが『ロストバゲッジ』だった。
行き先が国外だと、「そんなになくなるなんてことある?」と疑わしく思うほど同行者の誰かしらがハズレクジを引いていた。

幸い自分の荷物がなくなったことはないけれど、紛失してしまうなんてワープ中で輸送に失敗したとしか思えない。

ワープしてる方が面白いんだけどね。

未だにロストバゲッジがこわくて、行き先が国内であっても、飛行機に乗るときはなるべく小さい荷物で行くようにしている。

黒いワンピースのこと

2月の頭に黒いワンピースを買った。人生で初めてだった。

ワンピースに限らず、1〜2年前まで全身黒い服はしないようにしていた。着るとしたら、喪服だけだった。

喪服の漆黒は、悲しみの深さを表している。

黒い服は本当に悲しい時に着ないと嘘になってしまう気がした。心の底にある気持ちが、浅く見えてしまうのが嫌だった。

一方で、色の性質として黒は光を吸収しやすい。

これがすごく不思議だ、と思う。

吸収していない光の色が見えるのがわたしたちの見ている色なのだとしたら、黒は絵の具のチューブから出てくるような、べたっとした単色ではないのかもしれない。

どの色よりもたくさんの色を受け止められる黒だから、どの色よりもたくさんの感情を受け止められる黒だから、深い悲しみを表することができるのだとしたら。

そう思うと、黒い服を着ることで普段受け止めきれずにいた感情を取り戻せる気がする。

いろんな色を含んだ服を着るのは、きっと楽しい。

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