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20240305 昼と夜のはざまに

このところ、すこしずつ今年の5月に行う野外劇の下見を進めていたりする。劇場の下見とちがって野外劇の場合「その日その時間のその場所」というのがどういう感じになるのかは一年のうちその日になってみないとわからない。生えている植物や空気の感じ、陽の光や温度や湿度がその場にいる人にどんな感覚をもたらすのか。二ヶ月以上先のこととなると服装もまったくちがうだろうし、とにかくそれを思い描くことができるようになるために可能な限りその場にいっていろいろ想像してみるようにしている。

▼今回の公演は日の入りの時間に合わせて開演しようと思っているから、開演時間はすべておおよそ日の入り時刻の18時30分になっている。昨年の7月に同じ作品のごく短い小品をつくって稽古場で発表したときに、稽古場の窓から見える日暮れが一番きれいな時間帯を選んで発表の時間をすこしずらしたことがあった。野外劇でも一応すこしの照明機材は使えるけれども、自然がもたらしてくれる一番大きな照明の変化を使わせてもらわない手はないと思ったのだった。

▼夕暮れ、日暮れどき、マジックアワー、たそがれどき、かたわれどき(『君の名は。』)、なんて言われるいちばん淡い時間帯とうまく付き合って、昼でも夜でもない時のはざまに目を凝らしたときに、見えないはずのものが見えるようになるような上演になってくれたらと思っていたりする。

▼今回はなにしろ相手にするのが自然なので、どれだけ稽古場で想定して準備をしたとしても、強い風が吹いたり大雨が降ったりすれば簡単に吹いて飛んでしまう。だからあまり線の細い繊細すぎる表現は通らないかもしれないし、劇場という箱庭とはまたちがう俳優の存在の仕方を真剣に考えなければならない。

▼と同時に「国破れて山河あり」ではないけれど、私たちがどうであれ、自然はいつもそこにあるという自然に対する信頼があればこそできる表現もあるのではないかという気もする。数十年というスパンで生まれては死んでいく生物としての人間と、風景として変わらずそこにあり続けてくれる植物や土や空や太陽や月や星、というコントラストも感じられるような時間になってくれたらよい。

▼あとはシンプルに当日雨が降るかどうか、というのはもう運でしかない。演出家によっては野外劇を行うとかなりの高確率で雨が降るというタイプの方もいらっしゃるけれども、こればかりは自分の運を天に試してみるというような気持ちでいる。野外劇の場合「雨が降ったら降ったでそれはかっこいい」という人もいるけれども、やはり晴れてほしいし、なるべく気持ちのよい晴れの日になってくれと思いながら、毎日小さな徳を積むように心掛けている。

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