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古き良きそして奥深きサンリオアニメ映画

今はTVアニメ『ミュークルドリーミー』や『SHOW BY ROCK!! STARS!!』が大変好評(勿論僕も観てるにゅい)なサンリオさんなわけだが、実際のところサンリオファンではない世間一般の人からはサンリオ=アニメ作品というイメージをあまり持たれていないように思う(特に男子からは)。

しかしそんなイメージとは裏腹にサンリオは遥か太古の昔から数多くのアニメ作品を残してきている。それも輝かしき名作を。

これまでに僕が観てきた古いサンリオアニメに関しては過去の記事で感想をあげてきたりもしたが、つい最近今まで未視聴だったいくつかの古いサンリオアニメを新たに観る機会があり、その素晴らしさに改めてサンリオの奥深さを実感させていただいたので、今回は最近僕が観たサンリオアニメ映画の感想を作品ごとにざっと書いていこうと思う。一応重要な情報はネタバレしないように心がけているが、何も情報を入れずにこれから観ようと思っている人はサポートだけして後で読んでいただければ大丈夫である。サポートだけして。そう、サポートだけして。



【くるみ割り人形】
世界的に有名な童話にいちごの王様(辻信太郎氏)がアレンジを加え人形アニメとして1979年(タキシードサムデビュー年!)に公開した映画。
この時代ならではの独特の暗さもあり、“ジャンカリン”なる謎のオジイが登場する序盤などは特にホラーチックな怖さも感じさせる。トータル的に何がどうなったのかよくわからない部分もあったのだが、中盤の各国の学者やら魔術師やらがマウントを取り合いまくるギャグシーン(異様に長いのがまた可笑しい)や、終盤にキティちゃんやリトルツインスターズといったサンリオキャラクター、そしていちごの王様ご本人までも登場させる遊び心など、演出や雰囲気のみで感じても楽しめる作品であった。


【バラの花とジョー】
アンパンマンで有名なやなせたかしさんが原作を担当し、サンリオが制作(当時サンリオとやなせさんは関わりが深かった)した1977年(あのピーターデイビスのデビュー年)のアニメ映画。
美しいバラの花に恋をした犬のジョー(チーズにクリソツ)が、バラを攻撃しようとするカラスからバラを守るためにひたすら戦い続ける話。バラを擬人化して描いたり、また季節の移り変わりの映像表現に詩的な演出が施されていたりと美術的な面でも凝った内容である。大人の女性といった雰囲気のバラに対し子供っぽい見た目のジョー(チーズにクリソツ)の奮闘ぶりが心に響く。ラストシーンのお互いを思いやっての優しい嘘に感動しない者はいないはず。
チーズのスピンオフアニメではない。


【親子ねずみの不思議な旅】
ラッセル・ホーバン原作の児童文学をサンリオが1978年(なんとあのビッグチャレンジのデビュー年)にアニメ映画化した作品。
ゼンマイを巻いてもらわないと動けないオモチャの親子ねずみが、悪いドブネズミやら気さくなカエルやらと交流しながら素敵な家族を求めて旅をする物語で、何よりもまず自分の意志で動けない手をつないだ状態の親子ねずみが健気すぎて泣けてくる。声優を担当した方の素朴な演技もまた良い味を出していて、親子ねずみに幸せになってほしいと深く感情移入できる作品である。ドブネズミにも最後は救いがあり、今回観た中では最も優しさと温かみを感じるアニメであった。


【チリンの鈴】
『バラの花とジョー』同様、やなせたかしさん原作による1978年(まさかのボーイ&ガールのデビュー年)のサンリオ制作のアニメ映画。
幼い羊のチリンは牧場を襲ってきた狼ウォーに母親を殺され、強くなって復讐するためにウォーにあえて弟子入りするが、修行を重ねるうちに羊とも狼とも取れない異形の姿になっていき、いつしかウォーに対して親子のような感情までも抱くようになっていく。
多分これ以上にダークで重い話はサンリオ史上ないと思う。あんなに可愛かったチリンが復讐のために悪魔のような姿に変わっていくのは見ていてつらかったし、復讐というものがいかに虚しいことかということも考えさせられた。
しかしこれは一応は子供向け映画として公開されている作品である。これをあえて子供に見せようと思った当時のサンリオとやなせさんの想い。その想いに思いを馳せましょう。
ちなみに終盤のチリンが戻ってきた羊小屋のシーンで、「あっぱめ~」という鳴き声が聞こえてきたら笑っちゃうだろうなとか思ってしまった私はもうダメみたいです。


【シリウスの伝説】
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をモチーフにいちごの王様が原作を担当したアニメ映画。1981年(ゾウ自転車デビュー年)公開。
敵対する火の国の王女と水の国の王子が恋に落ち、様々なしがらみに苦しめられながらもお互いの愛を貫き通そうとする話。
とてつもなく面白かった。ピューロランドでショーにもなっていたので作品自体は知ってはいたが、予想以上の名作であった。水の王子シリウスと火の王女マルタの葛藤が深く丁寧に描かれていて、さらにそんな主役二人を支える友人チークとピアレの健気さには本当に心打たれた。あえてシリウスが火の王子のような見た目でマルタが水の王女のような見た目をしているのも面白いところで、これも多分狙ってのことだろう。
また特筆すべきは瞬間瞬間のあらゆるシーンが絵画のように美しいこと。背景がストーリーを引き立てるための要素でなく一つの美術作品としても高いレベルにあるため、視覚的な面でも楽しめる作品である。
ゾウ自転車デビュー年。


【妖精フローレンス】
いちごの王様原作の1985年(ハンギョドン、マロンクリームちゃんデビュー年。カモメも)公開のアニメ映画。
オーケストラでオーボエを担当するマイケルがスランプに陥り、偶然いつも世話している花壇から現れた妖精フローレンスに誘われ花の国を旅し、フローレンスと共に苦難を乗り越え勇気を取り戻す話。
なかなか個性的なアニメで、軸となるストーリーは勿論あるのだが、この作品はむしろ音楽と映像美に重点を置いている。有名なクラシック音楽をバックに(作曲者、曲名も表示される)、音楽に合わせた美しい映像をひたすら流している時間が多いので、映画というよりは一つの芸術作品的要素が強い。
『シリウスの伝説』とはまた違った、明るさと軽さを持った映像美なのでこちらの方が見やすい作品ではあると思う。何気ない日常シーンも間があって静かな雰囲気が心地良い。
ちなみに歌手の中島みゆきさんが声優を担当している。ムジカ可愛い。


【ちいさなジャンボ】
これまたやなせたかしさん原作、サンリオ制作のアニメ映画。公開は1977年(ララバイラバブルズデビュー年)。
突然だが僕がサンリオを大好きな理由として、一つはキャラクターが可愛いから、そしてもう一つはその根底にある精神性に芯(魂)を感じるからというのがある。その芯とはすなわち「みんななかよく」というこの上なくシンプルなもの。しかし現実問題それがこの争いの絶えない社会の中でどれだけ難しいことか。下手すると世界で一番難しいことかも知れない。ただそれであきらめることは簡単なことだしそれでは何も変わらない。だからこそそんな理想論にも聞こえてしまいそうな理念に対し数十年に渡って目を反らさずに正面から向き合い続けてきたサンリオのスピリットに、僕は大きなリスペクトの気持ちを抱いているのだ。
そしてそんなシンプルな理念は、いちごの王様が、やなせたかしさんが言うからこそさらに大きな意味を持つ。二人に共通しているのは戦争を経験していること。いちごの王様は爆撃機が焼夷弾を町中にまき散らし、周りに死体が転がる中妹を背負ってドブ川の中を逃げ回るという、現代の人の感覚ではそれこそ映画の世界のような出来事を現実で体験している人なのだ。
この『ちいさなジャンボ』にはなぜ今この地上にサンリオというものが存在しているのか。なぜサンリオは「みんななかよく」という理念を掲げているのか。その理由、原点が描かれている。
これまでこの作品を知らなかったオノレを恥じるとは言わない。古いゆえに見つけようとしなければ見つけられない作品である。だから知らないことは仕方ないことだと思う。ただ知ってしまったからには「サンリオファンは絶対必見」と言わざるを得ない重要な作品だ。
最も鮮やかで甘い香りのする花を愛でるのはとても素敵なことだが、ロックをやるならブルースへのリスペクトを、お笑いをやるなら落語へのリスペクトを持つべきなのと同じで、美しい花を育てた根に対するリスペクトを忘れてはならない。
ちなみにこれを観た後、僕は即絵本も購入した。

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アンパンマン風の何かがいますね。



というわけでざっとと言っておきながらやや長くなってしまったが(いつもだけど)、どれも全く違うタイプの作品でありながら、今のサンリオのように「可愛さ」を前面に押し出していないところがある種新鮮であり、なおかつ本当にお世辞抜きでどれも名作(悪い部分があれば正直に書くようにしているので)だったので、僕の感想を読んで興味を持ってくれた人はぜひ観てみてほしい。トータル的な面白さなら『シリウスの伝説』、重要度なら『ちいさなジャンボ』だと僕は思った。

肝心のどこで観れるの問題だが、僕はサンリオと全く関係ないある作品が目的でU-NEXTに入ったら偶然見つけた。なのでU-NEXTならまだ観れるはずである。バットマンも観れるよ。


それにしてもまだまだ奥深きいちご王国。その未知の秘宝を求めてサンリオ考古学者、これからも歴史を漁らせていただきます。



気が向いたらお願い致します。サンリオ資金にさせていただきます。