【タイに住む】[準備編] 4 - フライトチケット(お客様の気持ちは分かります)

フライトチケットまたはその予約確認書

特別観光ビザ(Special Tourist Visa -STV) 申請概要

本当は去年の10月頃に、2週間程度の旅行で12月にタイに行こうと飛行機のチケットを購入していました。
12月のタイは乾期でとてもいいシーズンなのです。

でもコロナ過です。以前と違って、タイに入国するには別途タイランドパスというネット上の事前手続きが必要で、これを渡航の7日前までに登録しなければならなくなっています。
私は他の準備がいろいろ済んでから2週間くらい前に余裕を持って登録すれば大丈夫だろうと考えていたのですが、突然オミクロンだかなんだかという新規株が猛烈に広がりだして、あっという間もなく12月以降のタイランドパスが、これが収束するまでは新規登録の無期限停止という、外国人観光客の事実上入国禁止となる措置となってしまいました。
バカを言ってはいけません。私は12月の飛行機も宿もすでに手配済なのです。
でもそういった以前から予約していた観光客に配慮しては、すでにタイランドパスを登録済な渡航に限り、12月以降であっても許可するとのことでした。

オーケー、兄弟、ここに座って少し話をしよう。タイランドパスは渡航の7日前まででよかったんだよね?私はまだ登録していないんだ。なぜなら私の12月のタイ旅行はまだ2週間以上先だからだ。
しかし聞く耳はありません。コロナという目に見えない恐怖はひとから寛容性を奪うのです。
いくら飛行機や宿やその他諸々の用意ができていても、タイランドパスの事前手続きが済んでいない観光客はタイに入れないのです。
ほんとクレイジーです。

こんなときのために私は飛行機のチケットをキャンセル可のものに申し込んでいました。
いいだろう、タイは微笑みの国だ。私も微笑んで受け入れよう。
しかしなんの手違いか、チケットはキャンセラブルではなくフレキシブルとかいうちょっとニュアンスの違うオプションになっていたようで、どうやらこれだと返金はできず、同じ航空会社の同じ便の同じ席でのみ、空いていれば別の日程に無料で変更できるというものでした。
縛りがすごいなーと思いながらも、まあでもちょっと先の日程にしておけばどこかしら空いてるだろうと高を括って再計画をすることになりました。

そうこうしていると、どうやら2月からまたタイランドパスの新規登録が再開するという情報が流れてきました。
2月もまだタイは乾期でいいシーズンなのです。
むしろ2月こそ。心踊りながらフレキシブルしてみました。いい感じです。
しかし、なんと後日その航空会社が「残念ながらこのような事態はときどき起こり得ます」という訳の分からない理由を添えながら、私のフレキシブルに変更したフライトを含めて全便キャンセルし、当面飛ぶ予定はないという連絡が入りました。

なにおこの!こうなったら再フレキシブルだ。しかしフレキシブルするには同じ航空会社の同じ便の同じ席…という縛りがありました。同じ席どころか、同じ便も同じ航空会社も飛ばないじゃないか!
このことで本当に航空会社や予約サービスサイトの窓口に何度電話したことか。そして何度「お客様の気持ちは分かります」と聞いたことか。

しかし別の航空会社には変えられないのです。
オーケー、私は微笑みたい。それでもタイで暮らす適合性を試されているのだと、こんなときこそ心の中でマイペンライを連呼して、新規で再予約を取り直しました。
今度は別の航空会社で、ちゃんとキャンセラブルのやつで。「転ばぬ先の杖」ってやつですね(もう転んでケガしてますが)。

ところが今度は日本が帰国時の隔離制限を厳しくしていて、帰ってから計1週間隔離生活を送らなければならず、これがまったく緩和される気配がありませんでした(注: 執筆時点では3/1から緩和措置が取られています)。
うちの奥さんの仕事柄、今度はこれがネックとなり、寸前までふたりで話しあったのですが、今回はちょっと見送ろうということになりました。

タイのベストシーズンである乾期はこうして過ぎ去りました。
どうしよう、この世は無常の四面楚歌なのか。私はおでこからツノが生えてきました。こうしてひとは鬼になっていくのですね。

私は考えました。鬼になりたくない一心で。
そもそもこのコロナ過のご時勢で、行きも帰りもその前後にも付帯する厳しくかつ流動的な制約を愚直にコツコツ乗り越えて期待通りに進めようとするビフォアコロナ時代の死後硬直的イデオロギーが、新時代への適応を困難なものにしているのかもしれない、と。
そして私は気付きました。何事も人生と同じで帰りなどないのだと。
こうなったら一点突破で行くことだけ考えよう。
欲張りはやめて、慎ましく謙虚に生きるのだ。

私の心に温かみが戻ってきました。
昔、幼稚園児だった頃のある冬に幼稚園のテラスでひとりで薄曇の空に手をかざして、冬でも太陽ってあったかいんだなあと感じたあのときの手の平の温かみを思い出しました。
カミュは太陽に突き動かされてシニカルにひとをあやめてしまいましたが、私は太陽に突き動かされてイノセントにタイに行くのです。
適性的にもこんなうってつけさはないでしょう(うってつけさ?)

そういうわけで、今度こそキャンセラブルなチケットで再度行きの予約だけ取り直して、こうしてタイに住んでみることにしてみたのでした。

チケット、コンプリート!


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