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【2019 天皇杯 4回戦】鹿島アントラーズvs横浜F・マリノス サクサクレビュー

1.はじめに

 さあ、残されたリーグ以外のタイトルの可能性。それが天皇杯!難敵鹿島のアウェイに乗り込んだマリノス。リーグ戦で直接対決がないだけに、この試合に勝って相手の勢いを削ぎたいところ。どんな試合だったのでしょうか。簡単に振り返っていきます。

2.スタメン

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■鹿島アントラーズ

・布陣はお馴染みの4-4-2
・中心選手は土居、白崎、クォン・スンテがベンチに

■横浜F・マリノス

・リーグとほぼ総取り換え
・ただし、次節出場停止の喜田とティーラトンは先発
・マテウスが出場できないからか、左WGは引き続き渓太が先発

3.優勢だった開始当初と劣勢になった失点後

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 前半開始当初はマリノスが優勢に試合を進めていました。というのも、相手ボランチが低めな位置を取り、こちらのボランチに対して積極的に前に出てこなかったからだと思います。相手の様子を伺って後方の守備を固めよう、というカップ戦ならではの戦い方でしょう。2トップはカバーシャドーにてこちらのボランチを消しますが、後ろからアプローチが続いていないため、横にずれれば簡単に回避できてしまいます。これによって、ボランチに繋ぐことができ、比較的中央から展開することが多かったように思います。

 また、サイドではいつも通りSBが内側に絞って上がる。そうすると大外が空くので、トップ下に入った中川は外に流れます。これによって相手SHに二択を迫ることができ、局所的に1対2の状態を作り出します。また、中川はスペースを見ることがうまく、相手ボランチとCBの間だったり、SH、SB、CBの三角形の中に入ったりしていました。この間で受けることもあり、相手SHやボランチに常に迷いを与え、相手ブロック内でボールを回すことができていました。この時間はマリノス優位だったと言えるでしょう。

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 しかし失点してからは状況が一転。リードして余裕が生まれてのか、相手ボランチがこちらのボランチを捕まえにくるようになりました。基本的にはボールサイドのボランチが上がって相手のボランチをマーク。相方は後方に残って中央をプロテクト。もう片方の相手ボランチには、2トップが背中で消し、絞ったSHが上がって捕まえにいく。こうされると今度は喜田や大津が中央でボールを受けることが困難になります。

 中央がガッチリ封鎖されたので、相手の間に位置しても中川までボールが届かない状況が続きます。それに業を煮やしたのか、相手ブロックの外側に下りてボールをもらうことが散見されるように。たしかにそれならボールは受けられますが、外側なので鹿島からしたら脅威ではないです。しかも最前線にいる山谷との距離も大きく開き、彼が孤立してしまいました。マリノスの今の布陣はトップ下とCFの距離感が大事で、互いに適切な距離にいないと効果を十分に発揮できません。例えば、中川が間でボールを受けて相手CBを引っ張ったら、そのCBの裏を山谷が狙う。といったものを見たかったです。ここは逆三角形中盤のときとCFの役割が異なるため、やり慣れていなかったのかもしれません。

 U字でボールを回しながらも、外に張っているエリキが小池と1対1になる状況はそのままでした。それを利用し、相手を左側に寄せてからU字でパススピードを上げてエリキまで展開する。そして小池と勝負!いわゆる質で殴るってやつですね。これだけが唯一の活路でした。実際PKをもぎ取っているので、ここをもっと有効活用できていたら、また違った展開になったかもしれません。

4.義理チョコに食いつき本命チョコを逃す

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 この試合、鹿島はマリノスのハイラインに対して、選手の抜け出し方を工夫、徹底していました。

 まず最初にCFがディフェンスラインの裏に出る。しかしこれにはマリノスの選手たちも当然対応します。ラインを一気に上げてオフサイド!と思いきや、そのタイミングでサイドに開いたSHが裏抜けしたではありませんか。マリノスの選手たちと前後で入れ替わっているので当然オフサイドはありません。

 このように、最初のCF裏抜けは囮。本命は次に出てくるSH。という抜け出し方をこの試合何度もしてきました。これはマリノス対策として事前に用意していたものでしょう。最初の失点はこの形で中村に抜け出されたものになります。リーグ戦でFC東京やセレッソ大阪にやられた形と一緒ですね。

 この日は前線のプレスが中々連動せず、山谷が単騎突進したり、WGが上がりすぎてSBを空けてしまったりと、相手CHやSBにプレッシャーをそこまでかけられていませんでした。この選手たちが比較的自由にボールを出せる状況でラインを上げているので放り込み放題。ここはまだマリノスの明確な弱点ですね…

 最初にもらった義理チョコに大喜びしているうちに、少し遅れて差し出された本命チョコを見逃してしまう…青春の甘酸っぱさがあるようなないような、そんなディフェンスラインとなっております。思春期を抜け出して大人になるにはもう少し時間が必要そうです。

5.試合をクローズする鹿島

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 後半になり、3-1でリードしていることもあってか、鹿島はかなり重心を下げた守り方をしてきました。

 2トップはCBに出ていくことをやめ、基本的には戻って相手ボランチに対応。これによって鹿島のボランチは前に出る必要がなくなったので、トップ下である中川をレオ・シルバと永木で見れます。そうするとこちらのCBは自由にボールを持てますが、それは許容する形です。

 こうすると撤退してしまうので事故が起こりそうですが、縦にもコンパクトになり、かつ11人が自陣で守備をするため、中央に割って入ることが全くできなくなりました。結局前半同様、U字での展開を強いられてしまいます。

 そうこうしている内にエリキの定時(60分)に。この日のマリノスは残業を許さず、サクっと退社させました。こうすると唯一の活路がなくなってしまいます。続けて仲川、皓太を入れるも中央は攻略できず。そのまま試合は終了してしまいました。

6.スタッツ

■試合データ

7.おわりに

 またしても敵地鹿島にて勝利を挙げることができませんでした…勝ち切るために現実的な行動をした鹿島の選手たち。これが勝者のメンタリティーというやつなのかもしれません。自分たちが置かれている状況を把握し、それを利用してしたたかに立ち回っていたと思います。しかしネガティブな面だけではなかったです。いくつかの明るい部分も確認することができました。

 まずエリキについて。レギュラーにも関わらず、先発で起用したことから、監督が意地でもチームに馴染ませようとしていることが伺えます。それに応えるように、この試合では攻撃時常に右サイドへ張っていました。広島戦のように内側に行き過ぎることはなかったです。ただし、守備面では犬飼やレオ・シルバへアタックするなど、まだ誰にプレッシャーをかければいいかわかってないみたいです。しかし、1つずつ階段を上って成長している姿を確認することができたのは喜ばしいことだと思います。

 次に大津ですが、ターンする技術が飛躍的に上昇しているように思います。相手のフィジカルに負けることもありましたが、ボールをトラップせずに相手をスクリーンして反転しようとするなど、ボランチでの起用だからこそ身に付いたようなスキルを確認できました。エリキ交代後にWGに入りましたが、同じように反転していたのは効いていたと思います。不慣れなポジションをやったからか、この試合では70分くらいからガス欠気味でしたが、それは大目に見てもいいのかと思います。

 最後に仲川と皓太のハイプレスです。両翼が相手SBを捕まえ、仲川がボールを保持しているCBへ寄せたとき、唯一のパスコースであるCB目がけて皓太がマークを捨ててスプリントする様子が見られました。相手の選択肢を削ぎ、唯一の選択肢に対して素早くアプローチする。他にも選手がいる場合は突っ込むことをしていなかったので、ハッキリとした取り所かどうかの判断ができているのだと思います。この判断力の高さは次の仙台戦で活きるかもしれません。

 さて、クヨクヨもしていられません。次の仙台戦はすぐそこに迫ってきています。この試合、先発メンバーをほとんど入れ替えたことや、大幅なビハインドなのにエリキを定時退社させたり、仲川や皓太を頑なに残り20分まで代えなかったのは、監督がリーグのタイトルを本気で狙っている証だと思います。それに応えるためにも、次の仙台戦で勝ち星を挙げましょう!!

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