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徹底検証「あのドレス」は何が問題だったのか

慶事に水を差すようで、あえて触れるかどうしようか悩んだんですけどね。まぁもう水を差すどころかぶっかけられまくってますけど。

ええ、例のドレス問題です。例のプールじゃないよ。

元々アンチが多いこともあって、相当叩かれていますよね。今回ばかりは仕方ない、と僕も思います。

でも、単に好きじゃないから、失敗したから叩くというのは建設的ではないんじゃないでしょうか。少なくとも僕はそう考えているので色々な状況がつまびらかになるまで静観しつつ、何か建設的な話が出来ないか、触れるべきなのか悩みました。

でも、やはりスルーは出来ない。
今回はアパレル業界に身を置く者、プロのスタイリストとして出来るだけ分かりやすく解説すると同時に、何を学ぶべきなのかを考えてみたいと思います。
 

1、何が良くなかったのか

全てです。
残念ながらあのドレスを選んだこと自体が間違いでした。

各所で触れられているのでざっとにしますが、、

・白は格式の高い色で、メイン色で着るなら「主役」の立場の人のもの
→お祝いをする立場の人が着ているのは不相応。結婚式に白いドレスで行かないのと同じ

・ベルスリーブ(釣り鐘状の袖)は近年ハイブランドでも採用されているが、周囲との調和を考えると明らかに不似合いであった
→張りがあり可愛らしく見えるデザインなので注目が集まってしまう。正装のドレスの場合はあまり腕を見せないのが好ましい

・デイドレスというドレスコードに照らすと明確な逸脱ではないものの、スカート丈はミニのものであり、即位の礼に相応しいとは言えない
→ヒールも高いものだったため、余計に素足が露出することに。前列に座ること、万歳をすることを考えれば選択肢に入らない

などなど、ツッコミどころは枚挙にいとまがありません。

特にスカート丈、万歳三唱のときは丈が上がってしまわないように窮屈そうな姿勢でしたよね。

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これは前回着た段階で分かりそうなものですが。。

そう、見逃せないのが「即位の礼正殿の儀に合わせて作られたものではない」ということ。既報ですが8月のアフリカ開発会議のときのためにオーダーメイドで作られたそうなんです。

ーー市販しているのでしょうか。

一般には売っていません。(8月の)アフリカ開発会議の直前に、昭恵さんに合ったデザイン、サイズでつくりました。

デザイナー・ツグエダユキエさんへのインタビューより
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/akie

着回すことは、決して悪いことではありません。
しかし、よりによって即位の礼の衣装を着まわそうと思われるとは、、よほど気に入っておられたのでしょうが、季節も立場も違います。前回は夏でホスト、今回は秋でゲストなわけで、そこには明確な差があるべきなのです。

そこが分かっていれば、メイン色に白を選ぶことはなく、デザインも特異でないもの、丈も落ち着いたものを選ぶのが必然。ではなぜこうなってしまったのでしょうか?
 

2、なぜ着用がスルーされてしまったのか

ここが重要なポイントの二つめです。

夫人にはスタイリストが付いておられない模様。
もし付いていたら、上記のポイントを踏まえて適切なアドバイスが出来たはずです。

つまり、周囲にそういった助言を出来る人が居ないということなんですね。英国のキャサリン妃のようにアパレル出身でセンスがあるならまだしも、特別なバックボーンが無いのにファーストレディーが好きな服を着て出歩くというのは無謀です。

海外、特に欧米では政治家や公人がスタイリストを付けることが一般的です。それはパブリックイメージがどれだけ票や人気を左右するか知っているから。

アメリカでは白黒テレビの時代に、大統領選で劣勢だったJFKが濃い色のスーツを着たことで薄い色だった対立候補ニクソンとの討論会で印象度を逆転した逸話が今でも語り継がれています。

ケネディの好印象の理由の一つは、彼が着ていたスーツの色と言われる。演説のとき、ケネディは濃い色のものを、それに対してニクソンは薄い色のものを着ていた。当時のモノクロテレビに映しだされた画面では、ケネディは濃い色で力強く見え、反対にニクソンは薄いグレーの色で、印象が弱く見えたとされている。後にラジオで討論を聞いていた人は「(討論内容だけ聞く限りでは)ニクソンが勝った」という意見が多く、テレビで討論を見た人は「ケネディが勝った」という意見が多かった。(Wikipedia、JFKの項よりhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・F・ケネディ

夫人は政治家ではありませんが、国家元首の妻として露出する場面も多い。日本を代表する女性として見られる役割もあります。それだけにしっかりとしたプロにアドバイスを仰ぐ、顧問とすることが必要なのではないでしょうか。スタイリストでなくても、式典やマナーの専門家でも良いと思う。これは早急に考えるべきことでしょう。
 

3、そもそも、このドレスがどうなのか

僕、最初は「デザイナーさん、巻き込み事故で可哀想だな」と思っていたんです。良い場面でピックアップされれば一気にファンが増えるだろうに、案の定デザイナーへの批判も起こっていて、それは違うんじゃないか!

と、思っていたんです。いたんですが、ちょっと雲行きが怪しい。

それはこんなコメントがあったからです。

ーー「即位礼正殿の儀」への参列をめぐって、TPOをわきまえていないという批判もありますが。
 
まったく問題ないです。バランスのとれたデイドレス。膝丈、レギュラー丈なので、ミニスカートではありません。
 
デザイナー・ツグエダユキエさんへのインタビューより
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/akie

まったく問題ない??
…マッタクモンダイナイ…どう読んでもno problemと言ってるとしか取れません。

いや、分かりますよ。
自分が作ったアイテムをクライアントが意図しない場所に着ていって急に批判が向いてきたら、こう言いたくもなるでしょう。自分のせいじゃないし。

でも正直な話「即位の礼のために作ってほしい」というオーダーだったら同じデザインにはしなかったでしょう。そう思いたい。

個人的には

「アイテムとしてはデイドレスのバランス、TPOに則ったもので、膝丈ですからミニスカートではありません。ですが、即位の礼のために製作したものではないので、TPO云々を言われるのは本意ではありません。もし着用されることが分かっていたらまた違った提案をしたと思います」

くらいのコメントをして頂きたかった。夫人を傷付けず、自身の作品も貶めない言い方は色々あったはずです。スタイリストとして、即位の礼のTPOに合っていたという発言はスルー出来ませんでした。

ただ、ドレス自体はオーダーを受け、夫人の要望を元に製作されたこの世に一着しかないアイテムです。好みはあれど、さもアイテムやデザインが悪いような批判は慎むべきだと考えています。服は着ていく人と場面によって輝きは大きく変わるからです。
 

4、根本的な問題はなにか

これが一番大事だと考えているのですが、根本的な問題は

ファーストレディー<自分 になっている

ということではないでしょうか。

もう長年そのポジションにおられて、どんな場面でどんな方々と臨席するか、格式はどれくらいで自分がどこに座り、マスコミにどんな風に扱われるのかを既にご存知のはずです。

それを俯瞰して考えれば、おのずと最適なファッションが浮かぶはず。地味だっていい場面は沢山あって、別に国民もモデルのような総理夫人を求めているわけではない。特別に目立たなくたっていいわけです。

それでもこういう話題を振りまいてしまうのは、公式の立場よりご自分を優先しているからなのかなと。こういうものが好き、見せたいという感覚が優先してしまうがために、受けなくていい批判を受けてしまう。これは側から見ると大変残念なことです。

これは一般でもよくあることで。
自分の立場が分かっていない、集団やマッピングでのポジショニングがイメージ出来ないためにおかしなファッションになってしまう例は珍しくないんです。

これはファッションセンスの問題ではなくて、イメージ力の問題。

自分がどういう立場で、どんな方向性で、この場ではどう振る舞えばいいかが映像としてイメージ出来れば、ハズレを選ぶことはあり得ないんです。

自分の立場≧自分の趣味 でなければ。

特に社会的な立場がハッキリしている方やビジネスとして表に出る方は、そういうスタンスでいるべきでしょう。個人の趣味はプライベートで自由に発揮すればいい。

 
5、具体的にどんなドレスだったら良かったのか

結局なんだったら良かったのか?についてはあまり語られていないようなので、ちょっと考えてみました。正解はないので、あくまで個人的なセレクトですが。

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安定感のあるものを選ぶなら、ロング丈で9〜8分袖、シルク生地のドレープのあるものなどいいかも知れない。色は地味でも動きがあるので個性が出る。色味は明るめが好みならシルバー系のグリーンでも。

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おそらく夫人の好みはこういう雰囲気では。
スカート部分をベージュに寄せれば批判には当たらなくなるでしょう。ボディ部分はベルベットかシルククレープだといいかな。

僕ならこんなイメージをご提案するでしょうか。着物でいいだろという声も多いようですが、もちろんそれもアリだと思います。異論は認める。

 
色々と批判に晒されていますが、スタイルは良い方(かた)だと思うし国産のブランドを積極的に着用する姿勢は素晴らしいこと。稲田元防衛相も同じような批判をされることが多いけれど、お二人のファッションへの意欲は評価されるべきことだと思います。

それだけに、場をイメージすることが出来なかったのは残念の極み。

今は個人でもスタイリストを付けることが珍しくない時代です。公人の方にはぜひ、プロの力を借りることを当たり前にして頂きたい。

大事な場面での「やってしまった」を防ぐ。
専門家はそのために居るのです。

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