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おみねは店を飛び出した。 いた! 寒空の下を、自分の目指す道に向って、ゆっくりと歩…
縁側に腰を掛けると、「そう、そう、随分お待たせしましたが」と、唐草の風呂敷を取り出した…
あの一件から、一月ほど経った。 縁側から入り込む風が随分冷たくなり、火鉢で手先を炙り…
打ってしまった。思わず手が出てしまった。打った手が痺れて、初めてまずいことをしてしまっ…
「駄目です、そんなの駄目です。若様、何を言っているのか分かっていらしゃるのですか」 お…
「お上さん」とお糸が呼ぶので、帳場から顔を出すと、若様の神妙な顔が見えた。 ーー 来た…
「馬鹿だよ、この子は、本当に馬鹿な子だよ。自分が幸せになる前に、他人の幸せを考えるなんてさ」 そう言うおけいは、涙で双眸を崩していた。 お糸も、おみつも、いつの間にか、おつたの周りに集まり、鼻をぐちゅぐちゅと啜っていた。 「そうだよ、この子は馬鹿な子なんだよ」とおみねも涙を流しながら言った、「馬鹿が付くほど優しい子なんだよ。自分が幸せになることで、他の人が不幸になるのを黙って見ちゃいられないのさ。そうだよ、優しい子なんだよ」 おみねは、おつたを抱いた。その柔らか
「あたし、昨日、嬉しくて、嬉しくて眠れなかったの。寝ようと、寝ようと思うんだけど、若様の…
「お上さん、ちょっとお話が」 夕方の客で込み入るまで、まだ合間があった。 おつたは、…
「武士を捨てたって、先は見えてるよ。自分の仕事も碌に分かってねえやつが、普通の仕事なんて…
翌朝、店の者たちは、すでにおつたと若様の話を知っていた。 手放しで喜んだ。 当のお…
その夜、店を閉めて、おみねは帳簿を捲りながら若様のことを考えていた。 すると、おつた…
一階から、「お上さん、ちょいと」と呼ぶ声がした。 「すみません、長居をさせてしまいまし…
「迷っていました、自分のいく道を。迷って、迷ってここに足を運びました。別に、酒が答えを出してくれるわけではないのですが、飲まずにはいられませんでした」 ああ、それで日を置かずにお見えになったのかと、おみねは理解した。 「でも、ここに来たのは良かった。答えが見つかりましたよ」 おみねは首を傾げた。 「昨夜、鏡磨ぎの嘉平さんと酒を飲んだのですが……」 酔っ払った嘉平を長屋まで送っていくと、世話になった、礼がしたいから飲んでいけと誘われたらしい。若様は辞退したが、そ