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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」

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「敵は本能寺にあり!」 天下取り目前の男、それを支える男、それを阻もうとする男、次の天下取りを狙う男、その流れに乗ろうとする男たち、そしてただ無邪気に男たちを弄ぶ少年………………… もっと読む
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記事一覧

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 85

 太若丸は、早速これを殿に見せた。 「家中軍法とな? 十兵衛が?」  殿は、興味津々でそ…

hiro75
5日前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 84

 翌朝登城すると、近習や小姓らが慌ただしく走り回っていた。  近習の長谷川秀一をつかまえ…

hiro75
7日前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 83

 殿は、乱を筆頭に小姓五、六名を連れて長浜へ、そこから舟で淡海の竹生島に向かった。  太…

hiro75
12日前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 82

 三月十二日に、越中にあった佐々成政と神保長住らが、その様子を報せるためにと、献上品の馬…

hiro75
2週間前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 81

 十日に安土に戻ると、馬揃えに招待いただい礼にと、再ヴァリニャーノらが訪れた。  此度は…

hiro75
3週間前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 80

 二月二十八日、快晴である。  当然だ、この日のために祈祷させたのだから ―― 太若丸も…

hiro75
1か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 79

 それから坂本は、上へ下への大騒ぎである。  すぐさま使いが京都所司代村井貞成(さだなり)もとに遣わされた。  貞成は貞勝の嫡男であるが、貞勝が歳明けて出家し春長軒(しゅんちょうけん)となり、当主の座を貞成に譲った。  まあ、貞勝も、信盛や秀貞らの追放を見て、色々と考えるところがあったのだろう、息子に席を譲ったのだが、仕事自体はまだまだ彼の手にあり、公家衆らの折衝は彼にしかできない。  公家衆との折衝や馬場の選定を急がせた。  また十兵衛は、各地の武将には殿から召集

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 78

「……とはいうものの、あいつは当面、東を見ることになろう、伊予だけでは不安じゃからのう」…

hiro75
1か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 77

 明けて天正九(一五八一)年、武将らの新年の挨拶は免除となり、近々のものだけで正月を過ご…

hiro75
1か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 76

 同じ頃、花隈では動きがあった。  荒木村重らが立て籠る最後の砦 ―― 花隈を取り囲んで…

hiro75
1か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 75

 七月二日、大坂和睦の勅使である近衛前久、勧修寺晴豊、庭田重保が、本願寺の前門跡顕如の使…

hiro75
2か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 74

 元親の〝四国切り取り〟の件は、十兵衛が何度も登城し、説得を試みた。  はじめは首を横に…

hiro75
2か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 73

 ただ、ただ時が過ぎ、夜が明けていくのではないかと思ったが、ようやく目を開き、 「庄兵衛…

hiro75
2か月前
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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第五章「盲愛の寺」 72

「そんな馬鹿げた話があるか!」と、内蔵助は己の膝を怒気を含んでどんと叩く、「あれほど〝四国切り取り〟を約しておきながら、それを反故にするだけなく、三好や河野に肩入れするつもりか? あの〝うつけ〟が!」  安土中に響き渡りそうな大声だ。  刑部は、しっと人差し指を口元にもっていった。 「大殿のお膝元だ、あまりけったいなことを口にするな」 「これが黙っていられようか!」 「まこと内蔵助の申すとおりじゃ!」  伝五も、皺だらけの顔をますます皺々にして怒っている。 「ま