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「善と悪」「聖と邪」は表裏一体

「自分は絶対に悪いことはしない人間だ」と考えている人が少なくないようだが、残念だが私はそれを信じない。私はいかなる人間の心の中にも「聖と邪」「天使と悪魔」が共存していると考えている。スイス人医師マックス・ピカートの言うようにすべての人の心に「ヒトラー的なもの」が宿っているのだ。

「善と悪」「聖と邪」は表裏一体だ。むしろ自分の内なる魔性に気づかない人ほど危険かもしれない。普通の人間であれば自分の愛する人や家族が辱めを受けたり殺されたりすれば冷静さを失わずにいられない。たとえそれが間違った情報に基づいていても激しい敵意がメラメラと湧き上がってしまうのだ。あのヒトラーだってもしあの時あの場であの人に遭遇しなければ、しがない一介の絵描きのままその平凡な生涯を終えていたに違いない。逆にもしあの時あなたがあの場に居合わせたならばあなたが「ヒトラー」になっていたかもしれないのだ。

当時のドイツ人が好戦的で異常な人たちだったのではなく当時の時代背景が彼ら彼女らの心に潜む魔性を呼び覚ましてしまったのだ。どんなに人間の理性と善性を信じて崇高な理想を掲げても、それで平和が来るわけでは決してない。悲しいかな、平和は力の均衡によってしか実現しない。

人間の理性を過剰に信じた社会主義者(知的エリート)たちが自分たちの理想に反して夥しい人命を奪ってしまった事実を、そして「理想主義的な民主国家」を目指していたはずのワイマール共和国がヒトラーというとんでもないモンスターを生み出してしまったことを私たちは決して忘れてはならない。

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