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蕎麦屋で呑む そば三昧の夜

蕎麦屋で呑む、ということにはちょっと憧れがあった。

なんとなく、格好いいお酒の飲み方を知っている、というような。そういう人は「通」だ、というような。「蕎麦前で酒をやりつつ、シメに蕎麦」という、イメージ。

でも憧れだけで、自分ではなんとなくやってみる機会もなくて。

美味しい蕎麦屋さんというのも、そこまで知らない。有名な蕎麦屋の老舗といえば……というあたりなら名前はいろいろと知ってはいるものの、実際に食べに行ったことはそこまで多くない。

行ったとしても蕎麦を食べにいくことが目的になるので、昼に、蕎麦のメニューを頼むだけ、みたいなことしかしたことがない。

そんなこんなで過ごしてきた人生だったのだけど。
(随分スケールの大きい話だ。)
ついに先日、その機会に恵まれた。

ときどき一緒に呑みに行っている友人S氏と久しぶりに会った際に、蕎麦の話になり。食に詳しい友人S氏、良い蕎麦屋さんを知っているとのことで、じゃあ今度そこに行こうという流れで伺ったのが今回。

場所は小田急相模原。東京の南の端、「神奈川県町田市」とも揶揄されるの多い町田からさらに南へ進んで、ここは明確に神奈川県。

都内でもいくつか美味しい店を候補に挙げてもらったのだけど、実はちょっと離れた方面にも良いお蕎麦屋さんがあるということで、相模原までやってきた。

目的の店は、駅から歩いて10分弱ほどの場所に。階段に少し隠れるような位置に、よく見ると蕎麦屋が。小田急相模原自体はそれなりに来たことはあるのだけど、本当に駅前を少し知っているくらい。なので、当然こんな店があるということは知らなかった。

手打ち蕎麦 竹乃屋

小さいお店。でも、割と最近オープンしたような、とてもきれいで落ち着いた雰囲気の店内。老舗の風格はないけれど、肩肘張らないで良い気楽さがある。

蕎麦焼酎のそば湯割りと「味噌」

まずは蕎麦焼酎のそば湯割りと、「味噌」という呼び方で出てきたのは、甘味噌に蕎麦の実を練り込んだもの。蕎麦の実がカリッとしていて、アーモンドやピーナッツみたいな食感。ピーナッツ味噌の蕎麦版、といった感じで美味しい。


友人S氏のオススメに従って、蕎麦前としていろいろと注文。

湯葉のお刺身
桜島大根の味噌漬け

湯葉は厚みがあって、シンプルだけど素材が良いのか濃厚な味。

桜島大根の味噌漬けは、食べた瞬間ほんのりと熟成感のようなものを感じる。聞いてみると、ちゃんと時間をかけて漬けてあるものらしく、即席というかその辺のものとも少し違うな、と思ったのは良い作りをされているから、なのかな。良い味。

卵焼き
牡蠣の揚げ出し

蕎麦屋さんの卵焼きって、憧れてたやつ。ふっくらと、そしてほんのり出汁が香る美味しい卵焼き。

牡蠣の揚げ出しは、じゅわっと牡蠣の風味、そして少し濃い目の出汁つゆで牡蠣の旨味をブースト。これはお酒に合うやつ。

間に蕎麦焼酎を挟みつつ、ほろ酔いとなったところで、蕎麦へ。

とろろのせいろ

自分はスタンダードかつ、とろろが美味しいという話を聞いてとろろそば。さすが、家で食べるのとは全然別物の、しっかりとした蕎麦の味。そしてねっとり濃厚な山芋のとろろが食べごたえがあって、一皿でも十分満足できるボリューム感。

田舎そば

友人S氏は田舎そば。スタンダードな更科とは違って、こちらは野趣あふれる強い風味。噛みしめると蕎麦の、素朴だけどフレーバーに富んだ穀物の香りがどーんと広がってくる。

田舎そばのそばがき

なんとこの田舎そばの粉をそばがきにもして頂いた。

もっちりどっしりなそばがきは、田舎そばともまた味がすこし違う。なんでだろう。不思議。こちらのほうが甘さを感じる。

鰹出汁のつゆにつけて食べると、つゆの甘味もあってか、まんじゅうか団子のような和菓子のようにも感じる。全体がみたらし団子と同じような構成になっているからかな?

食べ終わったあと、つゆをそば湯で割って飲むと、これがまた美味しい。蕎麦と合わせているときはなかなか気づかなかったけど、鰹出汁の豊かな香りが鼻に抜けていく。蕎麦だけじゃなくて、つゆも美味しい。トータルで全部美味しい。

蕎麦前~シメの蕎麦まで、ひと通り楽しんだ。
念願が叶った気分と、十分なボリュームでおなかもしっかりと、ダブルで満足。

と思ったら友人S氏。
「ここのそばプリンは食べないといかん」

そばプリン

というわけでそばプリンを注文。

パッと見た感じは何の変哲もないプリン? と、そば茶。

でも食べてみると、あっさりした甘さに、かなり強く蕎麦の香りが漂う。かなり濃厚で、少し口に運ぶだけでも凄い幸せな気分に。

そしてそこに、そば茶を啜ると、これがもう蕎麦の世界に閉じ込められたみたい。なんでこんなに、というくらいに合う。合うというか、甘さと、仄かな渋みと、なんだろう、旨味みたいなのが引き出されて、相乗効果で別次元の美味しさになってる。

これは、蕎麦を最大限に楽しむためのカクテルなんじゃないか、と。

ちょっと感動すら覚える風味の掛け算。このふたつ、絶対にセットじゃないといけない。

最後の最後で、とんでもない体験。
確かに、これは食べないわけにはいかない。

そばプリンは数量がかなり限られるらしいので、絶対に食べたいのなら事前に予約がオススメだとか。

素晴らしい蕎麦三昧を堪能することができてほくほく気分。
いい夜になった。

ごちそうさまでした。


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