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ジミンさんのソロアルバム「FACE」について (②Interlude : Dive~)

こちらのnoteの続き

② Interlude : Dive

「Like Crazy」までのつなぎだが、いろいろな音のサンプルのバックに流れるBGMがなにかしらドラマチックな感じ。
印象的なサンプル音は、オッパ感たっぷりのコンサートでのジミンさんの挨拶の声、最後のサンプル音は、コップに水を満たして飲み干した後の息。
まずは一息つける状態になったのか。

③ Like Crazy 

メイントラック。紹介ではシンセポップスとあった。冒頭と最後に挟まれたセリフの声はASMR的な面白さがある。80年代~90年代に流行ったシンセイサイザーの音が間奏で使用されておしゃれに聞こえる。リバイスされたものが新鮮に感じられるというのは最近のトレンドの特徴なのかも。ファッションでも音楽でも。
MVにもストーリを感じさせる。
迷って道を見失っている。刹那的な享楽にふけっている自分を持て余しているし、時間の浪費の沼にいる。
落ちていく自分を知りながらも、抜け出せないし、抜け出したくない、虚無的な日々を歌っている感じ。
「Face-off」で見せた攻撃的な要素もなく、気が抜けたように自分に埋没していく日々。
MVではそうやって溜まっていった気持ちの澱みたいなものが泥で表現されている。部屋の中の床が泥で埋め尽くされており、そこにうつろな瞳で座っているジミンさんの姿が象徴的。
ジミンさんがインスピレーションを受けたという映画「Like Crazy」(邦題「今日、キミに会えたら」)を見たが、演技とセリフが即興の映画だったらしく、全体の感情表現がナチュラルだったのはその手法のせいだと納得した。
恋人たちの現実的な別れを描いている。ジミンさんが感じた部分はどういう点だろう。冒頭と最後にいれたセリフは以下のとおり。

I think we can last forever.
I am afraid everything will disappear.

alone again.
What's the point ?

永遠のものだと思っていたものが、変容して崩れていく残酷さだろうか。(考えすぎ?)

MVでは、知らない誰かの泥のついた手で引っ張られてクラブに誘われるシーンが描かれているが、クラブから部屋に戻ってみると自分の手が泥で汚れていたことがわかる。誰かの手だと思っていたのはそうじゃなく自分の手であったという点、そこも面白い。溺れていたい自分と抜け出したい自分の2面なのか・・・。

④ Alone

目覚ましの音で始まるこの楽曲は、「Like Crazy」の世界から戻って、我に返ってみて思うことを独り言のように歌っている感じ。喪失感に苛まされ、惰性に流される日々。それでも、そういう自分を振り返り、どうしよう、どうかしたいという意志が感じられる。
ジミンさんの地声に近い歌い方、生のレアなジミンさんの声という感じがいい。なんていえばいいのか、ジミンさんは、歌詞の世界が表現している感情そのものを伝える歌い方をされる。それは伴奏・アレンジ込みの表現なのだからPdoggPDもジミンさんの世界に飛び込んで作った世界なのだろうと思う。
そういう意味で言語を超えて伝わる音になっており、このAloneではそれがよくわかる。
VOGUEでジミンさんを語るPdoggPDの話は共感しかない。

Pdogg PD:
My first impression of Jimin was it was more than how great he is at dancing.
Usually, it's not easy for one to know that certain expressive feeling through dance.
But Jimin was just so amazing at expressing emotion through dance that i remenber thinking, "Wow, he's good."
And then when I heard his voice, he had such a beautiful tone, so I was impressed even more.
(以下、自動翻訳)
ジミンの第一印象は、ダンスが上手いというだけではありませんでした。
通常、ダンスを通してその表現力を知ることは容易ではありません。
でも、ジミンはダンスで感情を表現するのがとても上手で、「うわー上手い」と思ったのを覚えています。
そして声を聞くと、とても綺麗な音色だったので、さらに感動しました。

「A Day With BTS’s Jimin in NYC | Vogue」より

加えていうなら、ジミンさんは、PdoggPDがいうようにダンスで感情を表現することが上手いだけでなく、声(歌い方)でも感情を表現することも上手いと思う。
ジミンさんよりダンスがうまい踊り手はいるし、ジミンさんより歌唱力のある歌手もいる。けれど、ジミンさんが伝える感情の伝播力を超える人は多くないと思う。
前のnoteに書いてるし、何度でもいうが、「I need U」のジミンさんパートを聞いたとき、バンタンを深く知らないときだったが、このジミンさんのパートに「I need U」のテーマがもつ感情がぎっしり詰まっていたのだ。それがフックになった。感受性の受容体(receptor)というのがあるとすれば、自分の受容体は、「Jimin type」の音の波動を合致させる型なのだろうと思う。とにかく、ジミンさんの声に反応する。
ジミンさんのダンスと声(歌)は自分のような「Jimin type」の受容体にはビンビン響く。そこは言語化できない理屈ではない世界の話しなので。(少しアルバムから脱線しました・・・)

⑤ Set Me Free Pt.2

過去と決別して自分を解き放つ、そういう歌。MVの群舞は圧巻。
ジミンさんのラップの切れ、ダンスパフォも期待以上。
力強くなって帰ってきたパク ジミンさんだ。
初見でいうことないくらい満足した作品だった。
こうしてみると「Face-off」から「Set Me Free Pt.2」までが、ジミンさんがいうように1つの物語ともいえる。ジミンさんが自分の壁をやぶったその観察日誌のようなアルバムだ。
アルバム通してこの「Set Me Free Pt.2」にたどりつく過程を丹念に表現している。なんていうか、意味のないことを良しとしないジミンさんの考え(個人的な想像)でいくと、たどりついたからこそ、「Face-off」も「Like Crazy」も「Alone」にも意義が見いだせるというか(勝手な想像)・・。
もちろん、単独楽曲の魅力はあるけど、ビハインドとしてのその時間の価値を浮かび上がらせる、そういう意図もジミンさんに感じるので。
平たく言うと、人生には無駄ないってこと、も含まれている。

(壁を破ったといえば、ビルボードHOT100で1位を取るという快挙で、数字上の記録の壁を破った。アジア人でソロの1位は坂本九の「上を向いて歩こう」以来というのだから、どれくらい凄いのかわかる。)

⑥ Letter(hidden track)

アルバムには隠しトラック「Letter」がある。文字通りジミンさんからARMYに宛てたラブレター(敢えてそう呼ぶ)。
自分のとってはこちらがメイントラックといってもよいくらい。
「BTSのジミンさん」としてのメッセージがあり、歌詞には「砂漠」、「海」、「春の日」のキーワードも置いている。
聞いているとても心が穏やかになる。かつてARMYだった人たちにすら向けて歌っているような気もする。
映画「Like  Crazy」では永遠と思っていたものが、時間経過のなかで変容していく現実を突き付けていた。そうやって物事が移ろうことをわかっていながらも「BTSのジミンさん」は永遠となるもの、そういうものがあると信じたい、信じようという願いを込めて歌っているように思えて、泣けてきた。

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