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フィッシュマンズ「LONG SEASON 2023」

ようやくフィッシュマンズ「LONG SEASON 2023@名古屋ダイヤモンドホール」について書くことが出来ました!長かったなあ。

7年ぶりのツアー、そして映画「フィッシュマンズ」公開もあったので東京のチケットはあっという間にソールドアウト、日程的にも仕事と重なっていたので名古屋に遠征することにしました。それにしてもチケット購入のすぐ後には名阪もソールドアウトしてしまったので、映画「フィッシュマンズ」公開後のフィッシュマンズの認知度は凄いものがあるなと改めて思いました。

ナタリーによる初日公演Zepp DiverCity(TOKYO)レポート

三田格さんによるディープなレポート

上記の2つのレポートがとても充実していて何も書くことがなくなってしまうぐらいなのですが、2021年の映画公開からフィッシュマンズについて書き留めることがこのnoteの原点なので自分なりの視点でここ数年のフィッシュマンズや欣ちゃんが思い描いていたであろうことを個人的な想像も含めて書いてみたいと思います。

最初に話は2022年3月1日、2日に東京・LIQUIDROOMで開催された「HISTORY Of Fishmans」まで遡ります。

映画公開後最初のワンマンということでチケットは初日しか取れずDAY-2は配信での参加でした。DAY-1のレポートはコチラ

ライブを生で見た上で結局配信動画も購入し何度も聴きながら書いたので特にライブ後半への書き込みが熱いです!そしてこの日のラスト曲「夜の想い」に対する記述を引用します。

そして最後にハカセとダーツさんがエンディング直前に、おもむろに別のキーのコードトーンを弾いてライブは終了する。この時すぐには分からなかったがこれは翌日の[Day.2]の1曲目である「A PIECE OF FUTURE」のコードだった。

それから自分は結局「DAY-2」についてのレポートは書けなかったのです。
直接見ることが出来なかったことも理由かもしれませんがライブの内容は素晴らしかったものの「DAY-1」に比べて何かが欠けていると感じてしまった気がします。所謂「後期フィッシュマンズ」は内省的な楽曲が多いため全体的に沈み込むようなライブになっていたのと「DAY-2」のハイライト、原田郁子さんのギター弾き語りによる「IN THE FLIGHT」から「WALKING IN THE RHYTHM」に展開する「宇宙日本世田谷」組曲をもってしても何かが足りないと思ってしまったのがその原因だったのではないかと(今思うと)感じられます。

そして同じ年の秋に開催された「WIND PARADE '22」にはフィッシュマンズと一緒に音楽を作ってくれる新たな若い世代のアーティストを模索しており〜折坂悠太、カネコアヤノの2組とジョインしています。もちろんくるりもいましたが2018年以前に参加していたアーティストたちよりもさらに若い世代のアーティストたちとの出会いもまた欣ちゃんに大いに刺激したものと思われます。

このフェスのアフタートークショーにアーティストのキュレーションや欣ちゃんの会場についての想いを語られています。

2023年5月「OTODAMA’23」〜ここで久しぶりにUAさんとの再会を果たしておりUAさんとヴォーカリストとしての力量・存在感が確かめられたのとUAさん自身もフィッシュマンズとの活動を本当に楽しんでいる姿が見ることが出来ました。予定されていたThe Birthdayのチバユウスケさんのゲスト参加がこの頃から体調不良で実現できなかったのが本当に残念です。

「頂 -ITADAKI- 2023」〜2023年6月に静岡県営・吉田公園で予定されていたフェスですが台風で中止になったのですね。フィッシュマンズの他にEGO-WRAPPIN'やThe Birthdayなどの出演が予定されていました。

2023年9月、2度めとなる「WIND PARADE '23」開催〜2日間に拡大されフィッシュマンズが出演した1日目だけ参加しましたがフィッシュマンズの前に出演したGEZANが凄かったです。そしてフィッシュマンズのライブは前年の「WIND PARADE '22」のラストに演奏された「SEASON」で始まり、cero高木晶平、ハナレグミ、そしてGEZANマヒトゥ・ザ・ピーポーがゲスト参加しあの衝撃的な「エア・ドロップしまあ〜す」が演奏された「WEATHER REPORT」やまたこの日のラストに、ダーツ関口さんのお嬢さん、旬子さんを迎えて演奏されたのが「FUTURE」が特に印象的でした。「FUTURE」は1stアルバム「Chappie, Don't Cry」に収められているフィッシュマンズ史上最もテンポの遅い曲で、ピースフルなムードながらそのテンポの遅さから当時は「ノリの悪いフィッシュマンズ」の風評を起こしかねない楽曲でもありましたが、佐藤君はこの曲が大好きで初期のライブでは必ず演奏されていたことを思い出します。アレンジをちょっとシティポップ風というかリズムを少しバウンスさせテンションコードや装飾音を加えたアレンジで、原田郁子さんと旬子さんの女性ヴォーカルを前面にしてアップデートしていたことが印象的でした。

こんな2年間の歴史を経緯して欣ちゃん、譲君、そしてハカセのオリジナル・スリー(佐野ディレクターの命名とのこと〜三田格さんのレポート参照)の3人を中心に念入りにリハーサルをして取り組んだのが「LONG SEASON 2023」ツアーだったのだと思います。

前置きが長くなりました。
名古屋ダイヤモンドホールもこれでもかというぐらい人がいっぱい入っていました。リアルタイムの90年代は名古屋クアトロでの公演が多かった記憶があるのでドライなダイヤモンドホールだとどうなるか、どんな響きになるか楽しみにしていました。そして定刻にんると三田格さんのレポート通りなんの演出もなくメンバーがおもむろに登場し始まったのが「A PIECE OF FUTURE」。レトロでドラムマシーンライクなビートメイクとヴォーコーダーで変調された木暮氏ヴォイスによるメンバー紹介とブレイクを多用したダーツ&木暮のギターバトル、HASKASE_SUNの変幻自在の鍵盤プレイと原田郁子さんのヴォーカルを一通り紹介するイントロダクション的な構成、私はここでこのコンサートは2年前の「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」から続く物語だと確信しました。原田さんが歌う「BABY BLUE」、続く「バックビートにのっかって」も同じ流れと思われます。そして続けて演奏される「Smilin' Days, Summer Holiday」で強力にドライブ感を巻き上げて「いかれたBaby」に着地、ここまでが6名によるオリジナル・フィッシュマンズでのパフォーマンスをプレゼンスしたパートだったと言えます。「Smilin' Days, Summer Holiday」中間部のHAKASE_SUNのサンプラーの遊びパートも復活していました。

欣ちゃんが刻むハイハットとパッドシンセの和音に乗せての「頼りない天使」 でUAさんが入ってくる。UAさんの衣装がとても可愛かったのですが各公演で衣装を変えていたのでしょうか。UAさんのXから。

それにしてもUAさんの歌声の素晴らしさよ。佐藤君とは全く違うスタイルのシンガーながら圧倒的な声の存在感で会場をねじ伏せるようなイメージ。続く「すばらしくてNICE CHOICE」も畝るようなバイブレーションを放ち今回UAさんにとっては初めて歌った「NICE CHOICE」」だそうですが完全にUAさんの世界に引き込んでいるようでした。それに対してMCでは「エビフリャーくれやあ」「欣ちゃんのウィスパーボイスMCが好き」とかめちゃめちゃお茶目な感じでUAさん自身もフィッシュマンズのライブを心の底から楽しんでいる感じがしました。他のライブレポートも「いわゆる大阪のオバちゃん」状態って書かれていたからツアー中は終始ノリノリだったのだと思います。「OTODAMA’23」でも見せていたUAさんの(佐藤君リスペクトの)「変態タコ踊り」も健在でした。

この2年間でのライブで常に重要な位置で演奏されていた「WALKING IN THE RHYTHM」もハナレグミ・永積さんも合流しUAさんと揃って会場を煽りまくる展開に。一層低音に凄みを聴かせる譲君のベースライン、カオスなブレイクからドラマチックなエンディングを迎えました。ここまで凄まじいテンションでの演奏が続きましたがUAさんが一旦退場し、ハナレグミ・永積さんが「これは佐藤さんが使っていたギターです」とアコギを抱えてます。確かTAKAMINEのギター、「Walkin」とか「イナゴが飛んでる」を歌う時に使っていたギターだったと思いますが、ここで歌われたのが「夜の想い」。本当に大好きな曲です。気分的にはここで1回、休憩が入るのかなと思うぐらい完成した構成だったと思いますが、そのまま「ナイトクルージング」に突入していきました。

三田格さんのレポートの中でZAKさんコメントから「Orange」での「夜の思い」が次の「空中キャンプ」の始まりだったという見解が述べられていますが前期から聴いてきたリスナーとしては「夜の想い」も「ナイトクルージング」も「FUTURE」と同じ仲間であり、「前期も後期も伸治さんは変わっていなかったと思う」と言うチバユウスケさんのコメント(「フィッシュマンズ大全」より)と同感であります。フィッシュマンズは最初から、厳密にはZAKさんがチームに参加してから、基本的なところは変わっていないというのが私の個人的な見解であり下記のnoteにも記載した通りであります。

そしてそのまま自然に始まった「ロングシーズン」。リアルに生で聴くのは1998年「男たちの別れ」ツアー@心斎橋クアトロ以来だから25年ぶりでしょうか。そしてここで気づいたことが「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」に足りなかったものは「ロングシーズン」と「ロングシーズン」を演奏する前の「じゃあもう1曲聴いてください。」と言ってニヤリとする佐藤君の笑顔だったんだと気が付きました。しかしそれを覆すパワーを見せたのが中間部で聴かせてくれた欣ちゃんのドラムソロでした。リンゴ・スター、キース・ムーン、ジョン・ボーナム〜欣ちゃんの大好きな英国ロックドラマーたちのルーツ的なドラミングが深海のようなエコー空間で炸裂していました。照明も素晴らしかったです。

さらにこの後に展開された「LONG SEASON」倍速バージョンの元ネタなど「ロングシーズン」ついての欣ちゃんのインタビューがありましたのでシェアさせていただきます!

そして個人的に印象に残っているのは後期フィッシュマンズ曲でのHAKASE_SUNの鍵盤裁き。全曲でも素晴らしいバッキングやハーモニーで支えていたり「ロングシーズン」でも初めてアコーディオンを披露していてオリジナル演奏家のHONZIさんへのリスペクトを表明していて感動しました。もう2度と佐藤君の笑顔が見れないことを改めて認識させられた「ロングシーズン」でしたけど25年経ってそれを上回るすごい時間を体験させてもらいました。会場でもすごい喝采が湧いていました。

最後は「FUTURE」。「WIND PARADE '23」のときよりさらにゆったりと優しい空間で包んでくれました。本編の最初と最後を「FUTURE」=未来と言う言葉でまとめてくれたのはダーツさんのアイディアだったそうです。

名古屋でもアンコールの拍手は鳴り止まなかったと思います。そして佐藤君が存命な頃でも演奏したことはなかったという「POKKA POKKA」を歌い出したのはマヒトゥ・ザ・ピーポーでした。HAKASE_SUNのオルガン主体のバッキングで原曲とは全く違う厳かなムードに変わりマヒトゥ氏のヴォーカルも宣教師のような高尚な響きに聴こえ最後に佐藤君やHONZIさんの魂を召喚するようなイメージです。そしてUAさんや永積さんも呼び込んだ「Weather Report」で大団円。ここでもマヒトゥ氏が主導権を握り「WIND PARADE '23」でも聴かせた「こちらの現状、エア・ドロップしまーす!」を初めとする新鮮なラップパートを切り開いてくれました。この2年間の演奏活動での大きな成果だったのでしょう。本当の最後は「ひこうき」。ここまでたっぷり3時間半、フロアはだいぶへばっていましたが木暮・ダーツのギターソロ合戦、HAKASE_SUNのソロ、ヴォーカリスト全員の合唱、フィッシュマンズは最後の最後まで本当に元気でした。

公演後、新しく出来たフィッシュマンズの公式サイトに欣ちゃんのメッセージが載っていました。本当に欣ちゃんにとってやり切ったライブだったことがわかります。

「message from KIN-ICHI MOTEGI」

バンドはこの2年でもまた成長していました。
映画「フィシュマンズ」の英語字幕での海外公開も始まり、次は海外フェスでのライブを目指すのでしょうか。自分もできる限りフィッシュマンズを追いかけたいと思います。

長々と駄文にお付き合いいただきありがとうございました!

最後まで読んでいただいたありがとうございました。個人的な昔話ばかりで恐縮ですが楽しんでいただけたら幸いです。記事を気に入っていただけたら「スキ」を押していただけるととても励みになります!