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【完全版】フィッシュマンズ "HISTORY Of Fishmans"[Day.1] 1991-1994

配信が終わらないうちにデティールを書いておこう。ライブレポというより個人的なメモっぽくなりそうだがDAY1分は完成させた。


運良く[Day.1]はチケット入手できたのでLIQUIDROOMで見ることが出来たのは前に記事で書いたが”生ダブ”を全力で楽しみたいと思ったのでフロア最後列のセンターゼロズレを確保したら同じことを考えている屈強な男子たちがズラッとセンターに直列に位置していたためステージ上で何が起こっているかはほとんど分からなかったのが正直なところ。配信は演奏の手元も見えて素晴らしい。そして現場の生音と配信のキレイに分離された音で脳内補正できるのでもう最高なのである。現場を見渡すとフロアは20代ぐらいの若い男女(男子多め?)自分の感覚的には27年前のクアトロやON AIR EASTの感覚と変わっていない。自分と同世代のリアルタイムファンは見えやすい段差のあるフロアにいたのかもしれない。

メンバー入場時に流れていた謎の未発表曲、自分も初めて聴いた音源だ。リズムパターンとハカセのキーボードの音色から察するに1992~93年、「Walkin'」のセッションの頃の音ではないかと推測されるが、フィッシュマンズのウィキペディアに「待っている人」としてすでに載っていた。そしてすでにネットで配信している。これは明らかにマズいんじゃないかな?

そしておもむろに始まった「Oh!Crime」そう「Oh!Mountain」のバージョンだ!もうこの時点で気が付いてしまったが[Day.1]は1995年にあのままハカセ(HAKASE_SUN)がフィッシュマンズでの活動を続けていたらを想定したライブになることは確信してしまった。しかしメンバー紹介に続いて鳴らされたリズムはしっかりと腰の入った2022年のフィッシュマンズだった。

「チャンス」「いなごが飛んでる」このジャンプ系のオープニングに「ひこうき」が続くのは正にデビューの年、1991年の頃のライブでよくやっていたパターン。コロナ禍以降の配信ライブなどで披露されている欣ちゃんの素晴らしいヴォーカルとドラム、譲君のベースとハカセの安定したコンビネーションはもう本当にあの頃と地続きのような安心感がある。そして「いい言葉ちょうだい」はリアルタイムでもそんなに聴けなかったレア曲だったはず。ハカセのオルガンのシーケンスとピアノの両手弾きに譲君の沈み込むようなタッチのベースラインが絡む。正にこの感じが前期フィッシュマンズならではのグルーヴだ。そのままの流れで「土曜日の夜」に突入、オリジナル音源奏者のハカセによる巧みなキーボードとその上に木暮氏とダーツ氏のギターが舞う。欣ちゃんの叩きながらの熱唱もすごい。フロアからも思わず歓声が上がる。そしてそのまま「RUNNING MAN」に突入するのも「Oh!Mountain」と同じ構成で若いリスナーたちにも自然な流れだと思う。欣ちゃんと郁子さんが交互にヴォーカルを取るスタイル、なんて心地の良いグルーヴだろう。

「大声出したいよね!」と欣ちゃんのMC、「伝わっています!じっくりと届けていきます、最後までヨロシク!」とハイハットを刻んだ音だけで歓声が上がる。「頼りない天使」だ。郁子さんのヴォーカルをハカセのキーボードが優しく包み込む。そして「NEO YANKEE'S HOLIDAY」の話題から「疲れない人」。このTightn'Upなファンクナンバーはリズムこそ前期フィッシュマンズならではのアッパーファンクだけどメロディ自体はワンリフ・シークエンスの後期フィッシュマンズと同じ構造なんだよね。大サビ的な「難しい顔はもういらなーい!」開放感とハカセの大活躍のキーボードの対比が素晴らしく改めて佐藤伸治の天才コンポーザーぶりを思い知る。前半での個人的ハイライト!

郁子さんとハカセの二人だけによる「救われる気持ち」、昨年6月の配信ライブ「INVISIBILITY」でも披露されて驚いたナンバーだけど初期フィッシュマンズを知る世代はこの曲の佐藤伸治のハカセへの信頼感を知っていたことと思う。そして「映画フィッシュマンズ」を経てフィッシュマンズに戻ってきたハカセによる郁子さんのヴォーカルを包み込むようなエレピのボイシングにまた佐藤伸治への想いを乗せているように感じた。

そのままフィッシュマンズの原点とも言える「Blue Summer」が演奏される。欣ちゃんのヴォーカルもドラムもすべてエモーショナルだ。本当にフィッシュマンズは最初からずっとつながっていることが分かる曲だ。欣ちゃんのMCもエモい。ここでデビュー前の「ラ・ママ」時代について言及される。前の記事でも書いたが幻の初期フィッシュマンズの名曲「HAPPY MAN」が演奏される。「ここでサトちゃんのコルネットが入る。あまり音の出ないコルネットだけど」と叩きながら話す欣ちゃん。「ソングライツの大ヒット曲です」「ミッシェルのチバも歌えます。なんならアルフィーも・・・」とまるで台本のような軽妙なやりとり。木暮氏も絡んでくる。さらに「あの曲でヒットすると思ったのですが」「もうドラマのタイアップで」「オリジナルラブの後でね!」ここで欣ちゃんが「いやあれドラマが本当につまらなかったの!」と断言、譲氏も「出た!悪(ワル)欣ちゃん」。「悪(ワル)欣ちゃん」はスカパラクラスターの方も呟いていたがけっこう一般的なのだろうか。「せっかく話も出たから軽くやりましょうか!「100ミリちょっとの」!」久しぶりの「100ミリちょっとの」だ、本当に名曲なんだよ。ちゃんと売ってあげられなくてゴメン。レーベルの不甲斐なさを笑い飛ばしてくれた優しい欣ちゃんに涙が出た。

ここまで書いて一度アップした。やっぱり[Day.1]も終わらなかったけど続きはまた明日。

続きを書こう!欣ちゃん「時計の針を進めていきたいと思います!」

あの口笛とともに「Go Go Around This World!」が始まる。フィッシュマンズが変わったのは個人的にはこの時1994年2月のマキシシングルからだと思っている。出てくる音になんの迷いも無いしムーグ山本さんによるアートワークにもやはり迷いがない。他の誰にも似ていないどこにもない音を出すグループ、フィッシュマンズが初めてちゃんと1枚のCDに形に出来たイメージだった。オリジナルバージョンに近い演奏で後の「ORANGE」の時に作ったプロモーションCDだけで採用されたエンディングありバージョンのあの感じもとても懐かしい。「気分」も意外に演奏されていないナンバーだ。「Go Go〜」もそうだったがかつてはフレーズサンプリングを多用した演奏がしっくり来なかった時期もあったのだろう。しかし2022年のフィッシュマンズは完璧なグルーヴで演奏ししかも欣ちゃんが完璧に歌う。「さんざん無理して手に入れたこの歌は 世界の果てが見えても 止まりはしないさ」この曲を初めて試聴用カセットで聴いたときの衝撃を思い出す。絶好調な演奏だ!フロアからも思わず歓声が上がる!

そして個人的に[Day.1]最大の山場となる「オアシスへようこそ」が始まる。「Go Go Around This World!」に続くマキシシングル「Melody」の3曲目に収録されていたハカセの詞曲によるナンバー、当時フィッシュマンズ内で最もサンプラーに積極的に取り組んでいたハカセならではの多層的な構造が特色だ。佐藤君が演奏面でも音楽面でも絶大な信頼を置いていたハカセがフィッシュマンズに残した作品の中で最もヘヴィーでダークな感触はある意味でその後のフィッシュマンズに繋がる一つの道だったと思っている。しかしハカセはポリドール移籍直後に忽然とフィッシュマンズを脱退してしまう。ハカセの脱退劇はフィッシュマンズの歴史の中でも最大の謎の一つだった。「やっとこの曲を思いっきりライブで鳴らせてぐっときてます」と語る欣ちゃんのMCがすべてを表している。ハカセは完全にフィッシュマンズに戻ってきた。「すごいね、ハカセ。鍵盤、大活躍。」「もう忙しくてw」「もうね、頼ってます。頼りになるハカセ!」「フィッシュマンズで忙しいのは嬉しいから・・・、もういくらでもやります!ヨロシク!」「オーケー!スケジュール、たくさんあります!」個人的にこの日最も幸せな時間だった。

アルバム「オレンジ」から「感謝(驚)」。ドローバーとロータリーの効いたオルガン、レゾナンスの効いたポリシンセ、残響を効かせたピアノ、「オレンジ」でのオリジナルバージョンでの本家本元のサウンドで弾きまくるハカセ。欣ちゃん&譲との応酬も最高だ。やはりこの3人の鉄壁のコンビネーションに耳を奪われてしまう。「最高の夜です」本当にそう思うよ、欣ちゃん。ラストは「いかれたBaby」、たくさんの若手アーティスト、特に女性アーティストのカバーがすごく増えたけど我々古参世代には一番馴染みのある「Oh!Mountain」でのバージョンだ。最後のリムショットのリバーブと照明も決まって本編は一旦終わり。

アンコールに応えて再登場するメンバー、立ってしゃべる欣ちゃん。確かにスカパラの欣ちゃんコーナーは立って喋っている気がする。ダーツさんの「ナンパ橋の話」も良かった。そしてchelmicoの鈴木真海子さんが登場、出演後の嬉しそうなご本人のツイート。

「JUST THING」も「8月の現状」バージョンだが真海子さんのラップがとても印象的だった、「君はどうなの?」。

「あともう少しだけ、行きます。」フィッシュマンズの演奏がガラッと変わる印象づけた「Smilin' Days, Summer Horiday」、1993年でこのかっこいいエレクトロ・ファンクを鳴らせるバンドに変貌したのにほんの一部の人しか気づいてくれなかったこととのギャップに苦しんだあの頃のこともちょっぴり思い出す。郁子さんのオートチューンヴォーカルもかっこいい。

さて最後になにが来るか。「夜の想い」だ。あの印象的なローズ・ピアノのリフが始まる。そしてハカセが絶妙なドローバーにセッティングされたオルガンを添えていく。この曲も一番最初に試聴用カセットで聴いた時の衝撃が忘れられない。「ORANGE」についてはいつかちゃんと話したいな。正に[Day.1]を天に導くかのようなアンセムだ。そして最後にハカセとダーツさんがエンディング直前に、おもむろに別のキーのコードトーンを弾いてライブは終了する。この時すぐには分からなかったがこれは翌日の[Day.2]の1曲目である「A PIECE OF FUTURE」のコードだった。


最後まで読んでいただいたありがとうございました。個人的な昔話ばかりで恐縮ですが楽しんでいただけたら幸いです。記事を気に入っていただけたら「スキ」を押していただけるととても励みになります!