ある特定団体の話


自分の友人の元カノが新興宗教に嵌ってしまったかもしれないので、佐々木はそういうのに詳しそうだから調べてくれないかと言われて割と無責任に引き受けたことがあった。その彼女とも親しかったので、連絡したら「中野で会いたい」と返事。中野駅で待ち合わせすると、駅近くの小綺麗なサロンのようなところへ連れていかれた。ファミレスの居ぬきのような内装でボックス席に通されると、彼女より少し年上の女性が来て、パンフレットのようなものを取り出した。かいつまむと「この世界は悪い政治や汚職が蔓延っているが、それは悪魔が世界を支配しようとしている、そして2000年にハルマゲドンが起こる前兆なのだ。しかし、恐れることはない、キリスト生誕から2000年、救世主が韓国からやってきてこの世を救う。だから私たちと世界平和の為に尽力しないか」と、僕はとっさに「あなたたちは統一教会ですね?」と言ったその瞬間だった。その女性から血の気が引いて、奥の部屋に行くと、もう少し年上の男を連れてきた。男は凄い剣幕で「お前も悪魔の手先だな、ここからすぐに出ていけ!」と言われ追い立てられるようにそこを出ることになった。自分があさはかだったのだ。急いた自分の性格が災いをして相手を警戒させてしまったのだ。結果、彼女との連絡は誰も取れなくなってしまった。翌日、部屋は引き払われ、バイト先も辞めていた。家族とも縁が切れてしまったのだ。

 自分は責任を感じていたところへ、スタッフの一人の父親が日本基督教団でカルト教団からの脱洗脳を専門に行っていることを知った。会いに行くと、おそらく彼女は統一教会幹部の家に住み込みで働き始めたのだろうとのこと。うまく行けば、金持ちの幹部でお手伝いさん的に働けるが、そうじゃないと6畳一間に5人くらいで生活し、働いた金は全て徴収され、月5千円くらいで暮らしているだろう。それを聞いて「彼女を取り戻すことは可能か?」と聞いたが「あなたには無理だ。本気で取り返したいという家族がいれば、我々はお手伝いする。最終的には夫や妻、または血縁の「絶対に取り戻す」という意思が必要」と言われた。そのことを元カレの友人に伝えると「わかったもういいよ」と挫折した。そこから、統一教会について本格的に調べた。

 国際勝共連合のこと政権与党や財界との結びつきなど。個人で対決するには余りに強大な相手であることも知った。数年後、オーム真理教の事件が起きた。カルト教団の関わることは恐ろしいということも知り、その後は関わっていない。映画にしようと思って脚本作りを進めたこともあったが、なかなか上手く行かなかった。

 生半可なことでこうした世界的なカルト教団に関わるのは危ない。自分の浅薄な行動が彼女を向こうに追いやってしまったと悔いが残る。

 

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