佐々木浩久

佐々木浩久

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あゝ決戦航空隊

「あゝ決戦航空隊」を見終わる。 この映画は 大日本帝国海軍中将、大西瀧治郎を描いた山下耕作監督、脚本笠原和夫、野上龍男による1974年の映画だ。1974年といえば東映は『仁義なき戦い』シリーズの大ヒットで、実録ヤクザ映画ブーム真っ盛りの頃だ。そのせいもあり「仁義なき戦い」シリーズでお馴染みの役者が大挙出演している。成田三樹夫くらいか出ていないのは。 主人公の大西は海軍航空隊のトップであり、特攻隊の立案者である。フィリピンと台湾で数多の特攻パイロットを見送った後海軍軍令部

    • 小中和哉監督「single8」を巡る対話 黒沢清監督の言葉など

      4月1日 ユーロスペースで小中和哉監督「single8」を見て、その感想をFacebookに書いた折、小中監督から直接リプライを貰って、黒沢清監督の「ドレミファ娘の血は騒ぐ」に出演した時のことなどを話した。小中監督は「single8」で撮ったような8ミリ映画を高校時代に撮ったのち、立教大学へ進学、黒沢清監督とも交流があったが、そこからの話が面白かったのでノートに対談形式に纏めました。 小中 和哉「『ドレミファ娘』の音楽部員は麻生うさぎさんと絡みました。あの映画でちゃんと絡み

      • 追悼 千葉美裸さん

        千葉美裸さんと知りあったのはもう10年以上昔だと思う。ある共通の友人を通してだった。一緒に仕事をしたことはなかったが、時々SNSで絡んでくれて、キネカ大森での「発狂シリーズ」上映にも来てくれた。 だから、彼女が性加害の被害者だと知って驚いた。すぐにメールで連絡をして励まして、それからしばらくDMを通して簡単なやりとりをしていた。事件のことは殆ど話さなくて、女優を辞めてスタイリストやデザインの仕事を始めたので、その話が殆どだった。僕とはその件についてはあまり話したくない感じもし

        • ドン・シーゲル 燃える平原児

          ドン・シーゲル特集 「燃える平原児」 菊川のstrangerにて  エルビス・プレスリー主演の西部劇なのだが、設定と話がこの時代にしては中々責めている。ネイティブアメリカンと白人の間に生まれたのがプレスリーで、父親と母親、それに腹違いの兄と4人で牧場をやっている。ところが、近隣の地区でカイオワ族の酋長が交代。それまで穏健だった酋長から武闘派の酋長に変わり、徹底的に白人と交戦することになる。一方、母親が先住民で自分はそのハーフと言うプレスリーは、町の白人には差別され、カイオワに

        あゝ決戦航空隊

          ケイコ 目を澄ませて

          三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」を川崎109で見た。若い人から年輩の親子連れっぽい人もいて超満員。16ミリフィルムの粒子感ある画面と北区~足立区あたりの荒川河川敷と首都高環状線が交錯する殺伐さと情感が入り混じる風景の中で、劇伴を一切使わず、静かに進行していく女子ボクサーのスケッチ。全てを作り込んで自然に見せる演出が凄い。 「ケイコ 目を澄ませて」は、フィルムをHDに変換して仕上げていると思うが、これが奇跡の変換というか、フィルムの特性を見事に活かしている。かつてネガフイルムを

          ケイコ 目を澄ませて

          ある特定団体の話

          自分の友人の元カノが新興宗教に嵌ってしまったかもしれないので、佐々木はそういうのに詳しそうだから調べてくれないかと言われて割と無責任に引き受けたことがあった。その彼女とも親しかったので、連絡したら「中野で会いたい」と返事。中野駅で待ち合わせすると、駅近くの小綺麗なサロンのようなところへ連れていかれた。ファミレスの居ぬきのような内装でボックス席に通されると、彼女より少し年上の女性が来て、パンフレットのようなものを取り出した。かいつまむと「この世界は悪い政治や汚職が蔓延っているが

          ある特定団体の話

          追悼 千葉真一

          千葉真一さんが亡くなられた。先日40代の大学で働いている方と話をした時「千葉真一の代表作って何でしょうね?」と聞かれたからから、「それはやっぱり「キイハンター」でしょうと答えたが、40代の人は「キイハンター」は全く見たことがないということだった。「仁義なき戦い広島死闘編」は代表作になるが、主演映画ではない。「沖縄やくざ戦争」の国頭も代表作になるかもしれないが、主演ではない。主演映画と言うと79年の正月映画「戦国自衛隊」まで千葉真一は主演映画がないのだ。では、この間の千葉真一は

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          今村昌平 「復讐するは我にあり」を42年ぶりに見直した。

          42年前18歳で見た時には凄い映画だとは思っても楽しみ方が今一つわからず、そのことを編集の大永さんとも話したことがあった今村昌平監督「復讐するは我にあり」を配信で封切以来に見直したが、確かに犯人の出自からその人生を追って感動させるわけでもなく、ハラハラドキドキするようなサスペンスがあるわけでもなく、また、シリアルキラーを残酷に描くホラーでもないが、犯人の榎津巌の周りに巣くう人間模様が抜群に面白い。カトリック信仰に異常に拘る三国連太郎はもちろん、覗き趣味の清川虹子、エロ親父の北

          今村昌平 「復讐するは我にあり」を42年ぶりに見直した。

          地獄の警備員 リヴァイバル公開

          「地獄の警備員」2月13日新宿K's cinemaにてリバイバル公開決定!あまりにも思い出があり過ぎるこの作品。浅草六区の映画舘大勝館の廃墟で撮影したあれやこれやが蘇る。なんだかんだ、もう30年前だ。ディレカン倒産直前で、もう現場予算がまったくなくて、仕上げの食事は自炊した。渋谷東急のスーパーで食材を買って、ダビングルームの給湯室で僕が食事を作った。鳥すき焼きとか。その時の録音助手は井口奈己監督と、現在でもお世話になってる臼井勝さんだ。助監督青山真治監督と脚本家の小川智子さん

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          昭和音大と日本映画大学のコラボ授業 ヒッチコック「めまい」のバーナード・ハーマン

          昭和音大と日本映画大学のコラボ授業『映画音楽概論』終わってほっとする。「めまい」で、キム・ノヴァックがホテルに来るところから、着替えて緑の照明の中に照らし出され、そのあとのキスシーンまで上映、一回は見て、2回目はハーマンとヒッチコックの音楽演出について検証しながら見た。 キム・ノヴァックが美容室から帰って来るところを待ってるジェームズ・スチュアート。通りを歩いて、ホテルに入るところのキム・ノヴァックは見せずに、緑色のネオンの光に照らされながら窓外を見つめるスチュアートの期待と

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