【第38話】 蝋燭を灯すキオスク🇲🇲
宿を出て夜間に働く人を探した。蒸し暑くじっとりと汗をかく熱帯夜だ。一人でも多く撮りたいが、どうしても夜の取材は難しくなる。酒場に行けば人はいくらでも探せたが、なんとなく気分が乗らない。趣味の合わない音をガンガン鳴らす場所に行く気にならなかったし、何か別の職種の人を撮りたいと思っていた。いや、職種で探すというより「この人を撮りたい」という感覚が湧いてくる人を探すのだ。
彼女は暗い歩道の上にささやかな店を張っていた。向かいの歩道からしばらく眺める。どことなく寂しさと懐かしさを感じさせる佇まいだった。「いいな、撮りたいな」と思った。
他の売店の中をまじまじと見せてもらったことはないから珍しいのかわからない。小さな仏像の横で蝋燭を灯した彼女の職場。不思議と落ち着いて撮ることができた。それが何かは知らないが、尊いものを信じようとする彼女の姿は響く。この売店は、雑然とした街にポツンと存在するオアシスそのものだった。
ヤンゴンは急速に現代化している。訪れるたびに粗野で素朴な景色が消えていってしまうので残念な気持ちになる。もちろん、それは観光客の勝手な思いだ。発展を望む人は多いだろう。だから、古いものが一掃されてしまう前にこの売店を撮れて良かったと思う。観光で来ていたら通り過ぎただけだったはずだ。
今回の滞在は2週間。他都市に移動はせず、ヤンゴンでこのような職場をじっくり探して撮ろうと思った。
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