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【第14話】 夜の小さな商店🇮🇳

宿の向かいに小さな売店があった。昼に水を求めて寄った時はなんとも思わなかったが、夜になるとちょっと雰囲気がある店になる。帰宅途中の客を相手に忙しなく出入りする若い店主を見ていて、撮りたいなと思った。別の店で買ったケバブを頬張りながら眺めていると、しばらくして客が途絶えた。さぁチャンスが来た、声をかけてみよう。

商人の街 ジョージタウン
その一角に売店がある
老婆の二人組が何か買いに来た
飴を1つ クッキーを1枚
「顔を撮らせて」に応じる店主
お菓子と殺鼠剤
この店にも常連がいるのだろう

「忙しいから無理だよ」と言われた。当然だ。仕事帰りの客が立ち寄る時間帯である。商売の邪魔になるのは間違いない。でも、こちらとしてはその忙しい様子を撮ってみたいのだ。

「邪魔はしないから頼むよ」と何度か粘ると、仕方ないな、勝手に撮れよという表情で首を横に振った。

知らない人に声をかけ、職場を撮らせてもらう。これがこんなに楽しいことだとは思わなかった。意を決して話しかける。説明をする。粘る。了承を得る。そして、撮る。それだけで良かった。仮に撮影ボタンを押し忘れたとしても、その体験だけで十分だったのかもしれない。こんなに充実した気持ちになるのは久しぶりだった。

インドでは、いやスリランカやネパールでもそうだったが、肯定の意を表す時、首を横に二、三度振ったりする。彼らの中にいるとこちらも自然に同じジェスチャーを身につけていく。こうやって次第に打ち解ける術も身についてくる。

仕事ね 俺の仕事はこの店で日用品を販売することだよ

毎朝 商品を仕入れてくるだろう
それをこの店で売りさばくんだよ

この仕事を選んだのは親父がやってたのをずっと見てきたからかな
子どもの頃からこの仕事が当たり前だったし馴染んでいたからね

この仕事ができて満足してるよ
生計も立てられるし毎日食べていけるからね

お客に対しても仕事に対してもだけど
正直で誠実というのが大切だと思ってるよ
じゃなきゃ務まらない仕事なんだ

もし誠実に仕事をしていればお客は通ってくれるしそれでこっちも稼げるわけだからね
ほら 神様になら誰もが誠実になるだろう
仕事に対してその誠実さで取り組んでるんだ

もし幸せかどうか聞くなら答えはイエスだよ
ここで一生懸命に働いた後 手にしたおカネで家族の世話ができるんだ
それって幸せなことだよ

Kiosk in south INDIA summer 2018
www.monologue365.jp

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