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筆が止まるとき ~情報出しに悩む~

 小説家です。SF作家です。小説を書くのは遅いです。あまり好きでもありません。さっきも、気が削がれてしまいました。

 私は大学病院で認知行動療法を受けています。で、そこのドクターが、もっと気楽にいろいろできるように、とおっしゃったので、このnoteを始めたのです。

 原稿は書けないけど、書けない理由なら気楽に書けるぞ。

 何もできないでうじうじ時間を過ごすより、ちょっとは収入に結びつくかなと思って、今の状況を説明してみます。
 小説家を目指している人の役に立てばいいな。

今回のパターン

 筆が止まる理由はさまざまあるけど、今回は、そして私にとって最多なのは、「情報の出し方に迷ってしまう」です。

 だいたい、序盤、ちょっと進んでも必ず中盤、話を進めるにあたって書いておかなければならないモノをどうやって挟み込むかに悩んで、書けなくなっちゃう。

 今は序盤も序盤、原稿用紙にしてまだ4枚ほどなのに、うーんと唸ってます。情けない。無理矢理書くことはできるんですが、こうやってサボってる感じですね。

入れ込まなければならない情報

 物語は、自分が考えたモノを人に判ってもらわないといけない。
 ですから、当然、事件や出来事などの動的なストーリー展開と同時に、説明や詳細を加えていくわけです。

 ぱっと思いつく必要なモノは、こんな感じ。

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▼情景描写

 簡単に言うと、周りの様子です。どこにいるかが判るように。
 ただ、回を改めて書くかもしれませんが、ここの文章によって雰囲気を醸し出すことも大事です。

 木が生えている
 1)あたたかな太陽に向けて、元気に手を広げているかのような葉
 2)冷たく冴えた青空の下で、縮こまっているかのようなねじくれた枝

 あえて「~のような」という直喩を使いましたが、まあ、こんな感じで、木を描写しているけれど気温まで判る、もっと言えばその時の視点人物の心情までも伝えられる、ということです。

▼説明的な地の文

 これがほんとに難しい。例に挙げた「~というのは、」など、私にとっては垢抜けない表現です。説明するぞ!というのが見え見えで、ちょっとかっこ悪い。
 けど、説明は絶対に要る。特にSFの場合は現実にないことを書くんですから、読者に理解してもらうためには必須です。
 その昔、田中康夫が『なんとなくクリスタル』で、

東京で生まれ育った比較的裕福な若者しか理解できないブランドやレストラン、学校や地名などの固有名詞がちりばめられており、それぞれに田中の視点を基にした丁寧な442個もの註・分析が入っており、(出典・Wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%80%81%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB

 てなことをやっていて話題になりましたが、二番煎じは通用しませんしね。

 主人公の動作や、別の情報に載せて、すら~っと自然に説明できれば、といつも心がけています。
 せめて、前段落を受けている(後述)、というのが私の最低クリアライン。

▼会話

 会話にはいろいろ役目があって、とりたてて内容がなくてもその場の楽しいやりとりを示すものから、目一杯説明ゼリフで「安いテレビドラマか!」と憤っちゃうものまであります。

 これもまた別に書くかもしれませんが、ミステリでよく言われる〈ワトソン役〉というのは、会話によって情報を引き出す常套手段です。
「ホームズ君、それはいったいどういうことかね」
 と、ワトソンが質問することによって、変人のホームズが説明せざるを得ない状況になる。
  アニメやラノベで、よく肩に乗るペット的なものがいますが、あれも同じ役目ですね。
「どうしよう、○○。これって××ってことよね」
 とかなんとか、ペット的なものに語りかけると独り言も不自然じゃないですから。

 あと、会話はキャラクターの情報を出すという役割もあります

 日本語を英訳するときに、よく一人称の多さが問題になります。僕・俺・私・わたくし・あたし・わし・おいら・自分・うち・○○(自分の名前)……。
 役割語(年老いた博士はだいたい「わし」と言い、花魁は「あちき」と言う)、つまりは自分をどう呼ぶかによってキャラの役割まで判ってしまうということですね。
 もちろん語尾や言葉遣いでもキャラの性格が表現できます。これらも情報のうちです。

▼伏線の仕込み

 このほかに、「そのシーンでは必要ないのに書かなきゃいけない伏線の仕込み」もあります。
 あとから読者が「あのときのアレはこういうことだったのかーっ」と納得や驚きを得てもらうためのものですね。
 その時には必要ないので、この情報は唐突になりやすい。けどあまりにも自然すぎると、伏線だということに気付いてもらえない。
 効果的な伏線を張ろうとすると、とっても難しいです。


心理描写がないだと?

 と思った人は、鋭いですね。
 普通はここで心理描写の項を立てます。

 これもまた改めて書くかもですが(って、こればっかりですみません。ここを書くにも時間はかかるんであって、収益テストなのでいつまで続けられるかわかんないので)、よほどの必要性がない限り、「さあ、心理描写をするぞ」とは思わない方がいい、というのが私の持論です。

 遠くを見ていれば、物思いに沈んでいると察せられる。
 握りこぶしを固めていれば、我慢しているのが判る。
 声が弾んでいれば、楽しさを伝えられる。

 これらは情景描写のうちではないでしょうか。
 ずらずらーっと思い悩んでいることを書き連ねて、「彼はこう思っていた」とするよりも、スマートです。
「嬉しかった」「悲しい」「好き」とストレートに形容詞や形容動詞で書くと薄っぺらい感じがしませんか?(「好き」を表現できますか? の手法を思い出してくださいね)

 映画やドラマで、独白(モノローグ)がなくても充分感動するのは、役者の表情や状況で主人公の感情が伝わってくるから。
 あえて考えを描かないほうが効果的なこともあります。


そりゃあ、悩むわなー

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 これらを、ストーリーの中で自然に語らなければならない。そりゃあ、悩むわ。
 というか、筆が乗ってくると悩むまでもなく、それこそ自然に順番なんか決まっちゃって、すらすら~、つるつる~、って繋がるんですが、やだなあやだなあと思っているうちは駄目ですね。

 次の回では、実際の冒頭部をお見せしながら、私がどこでつまずいているのかをお話ししたいと思います。

みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。