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ふとしたところに木屋根

普段はあまり利用することのないJR山手線・総武線の代々木駅。
年明け早々に飯田橋→恵比寿という移動があったので、
総武線と山手線が相まみえる2,3番ホームに降りた。

ふと見上げた駅のホーム。

代々木駅のホームは未だ木材が架かった屋根だった
取り残された風景
忘れ置かれた風景
そんな言葉が頭を過る。

近隣の駅、渋谷や原宿は駅舎が新しくなった。
新宿駅はあと何年工事中なのかさっぱりわからない。
サグラダ・ファミリアとどちらが先に工事完了するのか
壮大な工期レースをしているとも思えてしまう。
そんな近隣の駅舎からすると、
置いてけぼりにあった寂しい存在とも思えるし、
時間によって風化し、
芳醇な香りをその佇まいにまとっているとも思える。

ホームの屋根が切り取る風景は、
南新宿の高層ビル群を切り取り、
目前のドコモ代々木ビルの姿を輪切りにしている。
駅前の再開発計画があるから足元の景色も
次から次へと変化していくことだろう。

新しい無個性な景色の中で、
時代を超えた芳醇な個性が際立っていた。
剝がれかけの塗膜とその奥から露になる
灰色に変色した木材の素地。

昼間でも無機質にホームを照らすLED照明は
この先20年近くその姿を変えることはないだろう。

2,3番線のホーム屋根
1番線ホームは波板スレート
4番線は角波金属板

移り行く景色が浮かび上がらせた、
無個性だったはずの芳醇で個性的な屋根の表情
剥がれた塗膜が落ちてきたからと言って、
クレームになることはないだろうし、
気付かれることさえないかもしれない。
1日何万人の人がこの屋根に守られているかもしれないのに
その存在は意識されることはないだろう。

気付かれることなく日々その個性を育む屋根が
しばらく代々木の駅にあり続けてほしいと思う。
塗膜を風に乗せながら。

(ちょっと横道にそれて)
代々木駅は古レールの再利用された架構になっている
古レールが利用されててきれいだなと思うホームは、
総武線の浅草橋駅水道橋駅
私自身馴染み深い東急電鉄のホームは、
この代々木駅のような塗膜が剥がれかけた木造だったが
ここ10年くらいで一気にリニューアルが続いた。
膜構造であったり、木架構(旗の台駅池上駅
※安藤忠雄氏が設計した上野毛駅は超例外!
そんななじみの駅たちが
時間とともにどんな個性を獲得しうるかは期待しすぎず、
観察してみたいと思う。

建築の設計は50年後、100年後を想像しながら
使い手と建物、周辺の自然と環境を編み込む作業
廃墟となるか芳醇な個性となるか
自身の設計活動においてもできる限り遠くまで、
想像を巡らせる主体でありたいと思う。
「ふと」でありました。


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