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Inbreeding(近親交配)

鶏でも同じ親から生まれてきたもの同士を交配し続けると、遺伝子が劣勢になってきて卵も産まなければ体も小さくて、弱々しいものになってしまいます。

桃太郎の話

桃太郎の話はこの近親交配を戒める教訓を含んでいるように思われます。洗濯に行ったお婆さんが川から桃を拾ってくる。というのはよそから嫁を迎えるという事の象徴です。桃が女性を示す事は一般的にイメージされやすい。川を流れてきた桃というのは縁もゆかりもない『流れ者の女』です。

『流れ者の女』などとしては人々に受け入れにくい。そこで川を流れてきた桃としました。その桃から健やかな桃太郎が生まれるというのは優生学上の知識を具体例で示したものです。逆に言えば昔の日本人が近親交配の害に深くむしばまれてきた事になります。


イトコ婚

日本とドイツは伝統的に直系家族、つまり子供の内一人だけが結婚して配偶者や子供と共に親の家に留まり、一組ずつ縦の系列で婚姻関係を保持していく家族形態でした。ここでは夫婦の関係よりも親子関係が重視され、直系観に従って2-3世代が生活共同体を形成します。これは世界各地の農村に多く見られる家族形態です。

ドイツはヨーロッパ大陸の中心にあり、いつでも勢力を外に拡張できるのに対し、日本は島国で四方を海に囲まれている為に海を越えての拡張はしにくい環境です。つまり基本的にはドイツは『外向き拡張志向』であり、日本は『内向き孤立志向』です。

もう一つの違いは、『イトコ婚』の有無です。日本では伝統的に『イトコ婚』が一定の割合で存在しました。しかしドイツでは皆無です。日本では今は減りましたが、第2次大戦の直後の時点では約10%に達していました。

私の両親もイトコではありませんが、親戚でした。京都の田舎ですので家系図を見ますと、過去にはかなりの内婚が続けられていたようです。

『イトコ婚』という同一グループ内での結婚、つまり内婚は文化の閉鎖的で内向的な傾向を示しています。例えば共同体内で伝承されてきた技術の外部流失を避ける為に内婚が奨励されたケースがあります。いずれにせよ日本はドイツよりも閉鎖性、内向性の傾向が強いと言えます。

実際、日本人は自分を世界の周辺に位置付けようとします。『世界の中に存在はしているが世界の一部をなしていない』かのようです。ヨーロッパの不安定要因となっているドイツの拡張志向は大きな問題ですが、日本も自らの孤立志向を自覚した方がいいと思います。

現代社会との関係

交通が発達して人の移動が簡単になった現代社会ですが、日本文化を維持する為にも日本はもう少し移民の受け入れや女性が職業生活を営みながら子供を産み育てられるような仕組みを取り入れる必要があります。

他方で生物学的に近親交配がよくないとすると知的な分野でも同じでしょう。企業や学校などの組織のトップが同族で占められていると弱体化し易いものです。それで昔の商家では代々養子を迎えて新しい血を入れる事を家憲としたところが多くあります。似たものは似た者に影響を及ぼす事が出来ないといいます。

同族だけで固まっていると、どうしても活力を失いがちです。学校などで新しい思考を生み出すにも思考の近親交配は好ましくありません。それなのに近代の専門文化、知的分業は似た者同士を同じところに集めました。大学の組織は同一分野の専門家をまとめて単位とし、それに学生を所属させる学部、学科から成っています。

これにより、学問が社会全体との係わりを認識しにくくなって、伝統ある大学ほど近親交配の害毒を受けています。

会社でランチに行くのも毎日同じような経歴を持つ人が一緒に行く事が多くあります。これは話題が共通していて、お互いに快適さを感じるからでしょう。しかしこの様な集団からは新しいものは生み出しにくい事になります。

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