ナナへの気持ち

実家で飼っている犬が昨夜亡くなった。

16歳と3ヶ月だから、天寿を全うしたということになるようだ。
内臓とかはどこも悪くなかった。ただ数年前から片目が見えなくなって耳もあまり聞こえていないようだった。今年の夏に帰省した時は、もう両目が見えていないようだったし、呼びかけにもほとんど反応しなかった。
年齢とともにゆっくりと確実に、体の機能が停止に向かっていた。
だけど毎朝夕の散歩は2日前くらいまでは行っていたらしいし(ゆっくりとだが)、ごはんも食べたらしい。
ただ、夜の寝付きが悪くて泣き声を上げるらしく、その度に母がなだめていたそうだ。

思い出すと16年前、父が亡くなって半年後に彼女(犬)はやってきた。豆柴の子犬で、小さくてとても可愛かった。母がナナと名付けた。僕はもう実家を離れていたから、時々帰省の時に遊んだり散歩させるくらいの関係だった。体は小さいけど、リードを引っ張る力は強く、エネルギーに満ちていた。頭も良かった。帰省で家に着いた時は大はしゃぎで迎えてくれたが、数日してまた帰る時は小屋から一歩も出て来なかった。どうして分かるのか分からないけど、いつもそうだった。

16年の間、母はほとんど欠かさず毎朝夕散歩に連れて行った。雷や台風の夜は怖がったから玄関の中に入れてあげた(外で飼っていた)。冬の寒い日もそうした。ある大晦日の夜、やはり家に入れて寝かせていると、リードが外れていたのか、夜中居間に上がり込んでおせち料理の鯛を勝手に食べてしまうなんて事もあった。
母はナナを子供のようにかわいがった。小さい頃から噛み癖があったけど、しつけらしいしつけもしなかった。
散歩から帰って来た母とナナの顔はいつも明るく楽しそうだった。
歳をとってからは、心配する事も多かっただろうと思う。ご飯を食べなくなった事もあった。母はドッグフードを色々試したり、水でふやかせて食べさせたりした。そんな色々な工夫をして、片目が見えなくなってからもまた元気に過ごした。
最後はナナが泣いたり眠れないようで、医者に薬をもらってきて、ずっとそばにいてあげたようだ。

今朝歩いていると、飼い主と散歩中の小さな柴犬がいた。やはり元気いっぱいで、いい顔で小気味良く歩いていた。

明るくて楽しい時間だったね、と思った。母とナナ、そういう16年と3ヶ月だったと思う。

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