８時間、ジャングルを歩いて
シャーマンが、
僕達に会いに来てくれました。

ジャングルを歩くと分かりますが
道標はありません。
（僕達には分からなくて
　彼らにだけ分かるサインが
　ありそうですが）
ずっと緑が続きます。

誰かが通ったであろう
道（トレイル）はあります。
でも、緑の力が圧倒的に強いのがジャングルです。
時には、その道もなくなったりすることでしょう。

そんなところを
わざわざ来てくれました。

どの先住民族にも
シャーマンがいます。
北米大陸のネイティブアメリカン、
オーストラリア大陸のアボリジニ、
北極圏のイヌイット
そして、
太古の日本にも。

どの地域のシャーマンも、
深い精神状態に入って
お告げをしたり、
儀式のガイドをしたり、
治療のようなことをします。

地球上のどの地域にも
同じような形でシャーマンが
いるところをみると
ひとが授かっている
基本的な能力なのでしょう。

アチュアル族のシャーマンは、
僕達に深い儀式を授けてくれました。
一昼夜かかっておこなう
本格的なものです。

熟練したシャーマンだったので
僕達は安心して彼のガイドに
したがいました。

深夜のジャングルで
大地に寝転がり
深い精神状態に
数時間いることが出来ました。

翌朝、それぞれが見た
ビジョンのようなものを
シャーマンは読み解いてくれます。

僕が観たのは、あるシンボル。
何故か、スーパーマンの『S』のマークです。
シンプルで力強いものでした。
その意味は、わかりやすく

『勇気』と『希望』

そして、地球を巡るという
読み解き方もありました。

この時に、もしかしたら
その後の僕の人生が
運命づけられたのかも知れません。

あるいは、
やりたいことが無意識レベルで知っていて
それが顕在意識レベルで
分かった瞬間だったのでしょう。

アチュアル族の人々は、
何かを決断する前には
必ず、このような儀式を行います。

シャーマンは
夢を読み解いてくれますが
ああしろ、こうしろとの指図はしません。
決断は本人がするものとなっています。

そして、
一度、お告げで出てきたことは変えません。
YESだったらYES
NOだったらNO。
アチュアル族の人々は潔いのです。

このシャーマンを中心とした
アチュアル族の文化も、
僕達の文明と交流を始めると
簡単に崩壊してしまう可能性があります。

例えば、子供が毒蛇に噛まれたとします。
いままでなら、シャーマンの持っている知識で
森にある薬草を与えたり、
何かの呪文を唱えるなどのことをしていたでしょう。
そして、多くの場合
亡くなってしまいます。

それが、僕達の文明と触れることで
コミュニティの人々は
子供を街まで運んで血清を打てば
助かることを知ってしまいました。
シャーマンよりも、効くものが
出来てしまったのです。

今まで絶対的だったものが
二番手三番手になってしまうのです。
さらに、子供を助けるためにはお金が必要なことも。
街まで運ぶのに飛行機に乗せなくてはなりません。
さらに、病院での支払いも必要です。

彼らの文化にお金という新しくて強力な要素が
加わってきました。

文化人類学では、異なる文明の
初めての出会いを
『ファーストコンタクト』と呼びます

発達程度の開きがある文明が出会った時
優勢な方の価値観が劣位な方へ
一方的に移植されていきます。

そのことを分かっていたので
アチュアル族の人々は
これまで、こちらの文明に
接触してこなかったのかも知れません。

でも、もう始まっています。
後戻り出来ないのです。

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