刑事被告人のすゝめ#005

閲覧頂きありがとうございます😊堀口裕貴です。

前回の続きとして今回は逮捕後の取り調べの実情と対策について書いていきたいと思います。

よっぽど逮捕に慣れていて刑務所を出たり入ったりしている人は別として、ほとんどの人は逮捕や取り調べなんて一生に一回経験するかどうかというレベルの話です。突然見ず知らずの人達と一緒に檻の中に入れられ、スマホやパソコンも触れない、テレビもない、ラジオもない、冷たくてまずいご飯、留置管理官(看守)からの厳しい態度であったり、昨日まで社会で日常生活を送っていた人がこんな状況になるとまず冷静ではいられません。そこに追い打ちをかけるように日々取り調べが行われます。冤罪などの自分が関与していない事実に対する逮捕、取り調べもそうですし、たとえ実際に事件を起こしていた事実があったとしても警察(刑事)の取り調べが
しんどい、しつこい、話を聞いてくれないからと言って投げやりになって「はいはいわかりました私が全てやりました」となるのは絶対にNGです。冤罪が冤罪じゃなくなることもあるし、実際に起こした事件だとしても誇大されたり歪曲されたりすることはよくあることです。特に、痴漢冤罪などは前の記事にも書いたように認めた方が圧倒的に早く帰れます。私はそれなりに色んな被疑者や被告人もしくはそのご家族等からご相談を受けますが、

【認めた方が早く帰れるのは事実。罰金や執行猶予の有罪判決を受けて前科がつくかもしれないけど、執行猶予があろうとなかろうと一線を超える人は必ずまた一線を超えるから、本人がやってないと主張したとしても認めて早く社会復帰した方が良い】

とアドバイスします。弁護士は絶対そんなこと言いませんが(というか規定上言えません)、私は自身の経験と何十件と事件を見てきた総論として意見を言います。それに乗るか反るかは本人次第ですが、
認めれば数日で帰れるのに無罪を争う否認事件となると下手したら数年かかることになります。実際、
私は最高裁まで争って、裁判だけで3年半かかっています。

まぁそれはさておき、被疑者の不安定な心理状態を熟知した上で捜査官は「早く認めたほうが早く帰れるぞ?争ったってお前の言うことなんか誰も信じてくれない。認めたら楽になれる。俺の言うことを聞いておいたほうが得だ」というようなことを必ずと言っていいほど言ってきます。留置場での生活やしつこい取り調べを受けている内に「早く終わらせたい」となるのが人情というものですが私がこの記事で言いたいことは2つ。

  1. 被疑者段階では必ず完全黙秘すること。

  2. 捜査機関が作成した調書の内容がたとえ全くの事実だとしても署名と指印を押さないこと。

この2つです。被疑者段階では証拠が開示されていないし、どういう事実がどういう証拠によって裏付けられ、結果どのような結論(判決)になるのか、
予想がつきません。ただ、昔と今では価値観が多少違うものの、かつて【自白は証拠の王】と言われたように自白の信用性というのは今でも絶大です。特に検察官面前調書(検面調書といいます)は刑事訴訟法上、特に信用できる書面(特信性)とされているので一度自白してしまえばそれを公判でひっくり返すのはほぼ不可能です。だから少なくとも証拠が開示されるまでは【完全黙秘】が鉄則です。捜査機関は「黙秘すると不利になる」と言ってきますが黙秘権は憲法上も刑事訴訟法上も明確に保障されている被疑者、被告人の権利なので行使したからといって事態は良くも悪くもなりません。ただ、たとえば「これは黙秘してればワンチャンいけるかも🤔」的な考えの人がいたとして、初公判の罪状認否でも黙秘して、検察官の証拠調べや立証が進んだ段階でいよいよやばいな、と思って最終陳述の場面などで
「実は私がやりました」的な状況だと裁判官もそのへんはよく見ているのでそれなりに心証は悪くなりますから、結果も多少なりとも変わってきます。なので、認めるか、否認するかの判断の分かれ目は【初公判前まで】ということになります。起訴されて、証拠が開示されてから、自分の認識と意見を弁護人に伝えて、弁護人の意見も聞いた上で争うべきなのか、認めるべきなのかを判断するのがベターです。

度々争われる事案としては、正当防衛が成立するか否かという事件で、刑法上正当防衛は自身の危害を回避する為にやむを得ず行った行為と限られているのですが、例えば酔っぱらいにしつこく絡まれて突き飛ばしたら相手が頭を強打して打ちどころが悪く亡くなってしまった、というようなケースでは傷害致死の容疑で逮捕されることになります。そこで、
被疑者がいくら「あれは仕方がなかったんだ」と弁解しても、捜査機関は「そうは言ったって実際に突き飛ばしているんだから無感情でそういう行為をする人間はいない。しつこく絡まれているうちにお前も腹が立ってきて【この際こらしめてやろう】という気持ちも少なからずあったんじゃないのか?」とかなんとか言ってきて、話をするうちに「言われてみればそんな感情もあったかもしれない、、🤔」という気持ちになってきて自白調書にサインしてしまうというケースは割とよくあります。するとどうなるかというと、黙秘して裁判で無罪を争えば無罪がとれたのに、上手く言いくるめられて自白調書にサインしてしまうことによって【積極的加害意思】が認定されて実刑判決を受けることになります。適切な弁護をしなかった弁護人にも問題はありますが、もしもの時のための知識として

【証拠が開示されるまでは完全黙秘】

ということは必ず覚えておいて下さい。

と、いうわけで取り調べの実情と対策に関することはこのあたりにしておきます。もっと詳しく知りたいという方はコメントなり頂ければ幸いです。

⭐次回は起訴されてから初公判までの準備
 について書いていきます。

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