刑事被告人のすゝめ#008

閲覧頂きありがとうございます✨

今回は公判前整理手続及び期日間整理手続
について触れていこうかなと思います🙆
私がやったのは期日間整理手続ですが、なぜこの手続を請求したかというと、前の記事でも少し触れたように検察官請求証拠だけだとどうしたって検察官の立証趣旨に沿った都合が良いものなので、表に出ている(つまり検察官請求書証「物証も含む」)証拠以外にも未開示の証拠というのが沢山あるのが普通です。特に冤罪や無罪を争う案件ではその未開示の証拠の中に無罪の足掛かりとなる証拠があったり
する可能性もあります。そして、表に出ていない証拠ということは、検察官の立証にあんまり役に立たないものか、あるいは検察官にとって不都合なものである場合が多いです。ただ、整理手続に付したからといって、検察官が手持ちの証拠を全てすんなり
開示するかというとそうではなく、隠したい証拠は徹底的に隠します。なので、整理手続を何ヶ月、あるいは数年かけてやっても得られるものはなにもなかった、という結果になることもよくある話です。

実際に私が経験したこととしては、【A】【B】【C】という三つのビルがあって、犯行現場は【B】と【C】、しかし、【B】と【C】は犯行当時施錠されていたからビルと無関係の被告人には侵入は不可。だが、隣接する【A】ビルは施錠されていなかったから誰でも侵入可能であり、被告人でも可能。よって被告人は【A】から侵入し、【B、C】のビルへと移動して連続的に犯行に及んだ。というようなことを検察官は主張していました。私は現場に行ったことも見たこともないので「なるほどそれならいけるのかな🤔」と思っていましたが、弁護人はとにかく現場に行ってみないと判断がつかないしモヤモヤする。ということで、現地調査に行って頂くことに。すると、【A】ビルの入口にはパチンコの景品交換所があり、入口を出入りする様子がハッキリと映るように防犯カメラが設置されていたことが判明。
だとすると、、、🤔犯人が【A】から侵入したというのであれば【A】に入っていく様子が映った防犯カメラ映像があるはずじゃない?となり、私達としてもこれは検察官の立証を吹き飛ばすかなり有力な材料になり得ると考え、整理手続で検察官に開示を求めました。しかしながら数カ月かけて開示を複数回求めても検察官は「今確認しているところ」を繰り返すばかり。結局、「弁護人が開示を求める証拠は警察署にも検察庁にも存在しない」としらを切り通しました。おそらく【A】のカメラ映像は存在するものの、そこには「誰も映っていなかった」か「被告人ではない誰かが映っていた(つまり真犯人)」のだと思われます。そんなもの出そうもんなら当然検察官の立証はぐらつくわけで、裁判に負けるぐらいなら【隠滅】ぐらい検察官は平気でやります。
この点は裁判官もかなり不思議がっていましたが、
結局1年7ヶ月かけてやった期日間整理手続でなにかこっちに有力な証拠を見つけることはできませんでした。厳密に言えば、捜査機関が証拠を捏造したことを示す証拠があるにはあったのですが(私の移動経路を示すものとして証拠請求された交通系ICカードが別人のものとすり替えられていた)、その相手が【うっかり】出してしまった証拠を元にこちらが解析した報告書を作成し、証拠として出しましたが、出した途端に検察官は私の移動経路に関する立証を全て取り消しました。そうして、都合悪い証拠は隠す、やぶ蛇になりそうな立証は消す、ということをやってどんどん冤罪は作り上げられていきます。

まぁそんなわけで、整理手続をする意義や意味は正直私にはわかりません。ただこの1年7ヶ月という期間が無ければあらゆるトラブルに遭遇出来なかったし、勉強する時間も足りなかったから、今のこの活動をすることもなかったのかもしれません。その意味では、成長する時間をもらえたということに関しては良かったのかな、と。

公判前整理手続や期日間整理手続の一般的な流れと
意味については、紋切り型な言い方をすると「充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うために必要不可欠である」という理由で請求します。個別の案件によって言い方は少し変えますが趣旨は同じです。そして、手続に付される事が決定すると次は証拠の開示請求というものを行います。開示するにあたっては「相手が必ず持っているであろう証拠」を狙い撃ちする必要があります。ぼんやりとしたこれもあるんじゃない?あるなら出してよ、というような開示請求では絶対に出てきません。なにしろあっても出してこないのが検察官ですからね。
たとえば、検察官はA→B→C→D→Fというような証拠を出してきて犯罪を立証しようとする場合、【E】が抜けていることになります。このような、この証拠を前提とするなら、こういう証拠もあるはずだ、という証拠のことを【類型証拠】と呼びます。まずはこれを請求して、検察官は任意開示をします。そこでこちらに有利な証拠が出てくることは検察官が
よっぽどアホじゃない限り起こりません。類型証拠の任意開示が行われて、こちらの道筋としては二通りに分かれます。一つは、この証拠を出してこないのなら「この証拠の不存在」を叩くことによって検察官立証の信用性や正確性を揺るがせていく。もう一つはこの証拠を何としてでも獲得する、ということです。いずれにせよ途中で検察官に後から言い逃れされないように刑訴法に基づく【求釈明】を求めて裁判官の前で言質を取ることが重要です。あなたはこういうことをこの証拠で立証しようとしているけど、それを前提とするならばこの証拠があるはずだが、無いってことでいいのか?的なことを検察官に説明を求めるのが求釈明という手続きです。表面的には検察官の立証の意図が分かんないから説明してよ🤷っていう名目ですが、「本質は説明させることによって検察官立証を崩す足掛かりとする」ことが目的です(弁護士によって考え方は違います)。
どうしても諦めきれない証拠があるのなら、次は検察官に対してではなく裁判所に対して【裁定請求】という申し立てを行います。これはざっくり言えば検察官に任意開示を散々求めたけどこの証拠があるはずなのに検察官が出してくれない!裁判所から出すように検察官に命令してよ!という趣旨です。
そこに合理性と蓋然性があれば裁判所としても看過できないので検察官に開示を命令しますが、だいたいは私の事件のように「存在しない」と言われて証拠は消されます。だから、「存在しない」という回答があった上で裁定請求をしても検察官は「出せと言われても無い袖は振れない🤷」って言えば終わりなので結局出てくることは無いことがほとんどです。時間だけが無駄に過ぎてしまうので整理手続の争い方にもかなりの知識と経験が求められます。
また、得られる結果が少ない手続をダラダラと時間を掛けてやるよりも、実刑が確実ならパッと刑務所に入って早く社会復帰した方が、執行猶予が高確率で見込まれる場合も早く裁判を終わらせて社会復帰した方が圧倒的に賢いと私は思います。統計的に見てもコストパフォーマンスもタイムパフォーマンスも悪い手続きは弁護士もやりたがらないので年々減少傾向にあります。一方で、そんなに知識や経験のない弁護士は整理手続をとにかくやってみよう、という提案をしがちですが事実関係に争いがないのなら細かいことは気にせず早期の社会復帰を目指すことをオススメします。どうしても争いたいなら、私のように認めれば2年と経たずに社会復帰できたものを、3年半かけて最高裁まで争って、なおかつ有罪判決確定の半年間の刑務所行き、という回り道をする覚悟があるのなら、頑張って下さい😉

ちなみに、整理手続は裁判所で行われるものの非公開なので、被告人が出席を希望しなければ裁判官室などで三者協議が月に一回程度、各10分づつぐらい行われます。この非公開、という点について私はかなり危険性が高いと感じています。裁判官裁判でもそうですが、特に裁判員裁判ではほぼ全事件で公判前整理手続が行われますが手続には裁判員(民間の人)は関わらないので、手続の中である程度結論が出てしまっていることが殆どです。一言で言うならば出来レースです。時たま、ニュースなどで裁判員裁判で予想外(無罪とか)の判決が出ることもありますがあれは裁判官、検察官にとってイレギュラーが起きただけであって、そのイレギュラーが思いのほか世論に支持されてしまったから、この結果は避けられなかった、ってだけのお話。しかしそれが刑事裁判においては本質的に重要な要素であるものだと私は考えています。悪人を赦してやれ、とは思わないけど、過剰な罰を科すのはさらなる悪人を作り出すだけだということに気づいて欲しいな、と。
まぁ悪人がいないと裁判官も検察官も警察も刑務官仕事がなくなるから必死に毎日悪人を作っているんですけどね。税金で。

では、整理手続についてはこれぐらいにしておきます。手順としてはもっとあるのでかなり端折ってますが、とりあえず「あんまり意味ないよ」ってことだけ伝わればおっけーです😉

 特に刑事裁判に関わっている方でなにか分からないことがある方は気軽にコメントなり頂ければ、無料で相談に乗ってますのでいつでもどうぞm(_ _)m



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