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タンザニアに来てからの4年間で気付かされたことと今後に向けて

2019年9月に初めてタンザニアに来てから、気付けば4年が経ちました。

2020年にエアコンのサブスクリプション事業の会社"Baridi Baridi"を立ち上げ、2021年4月からの販売開始後は、悪戦苦闘しながらの2年半を積み重ねてきました。

良い意味でも、悪い意味でも、濃厚な4年間でした。
その中で気付かされたことを書き残しておこうと思います。


1. 事業の難しさ × 市場環境の大変さ

エアコンのサブスク事業は世界で初めてのチャレンジです。

この事業をゼロから作り上げていく中で、なぜこの事業がなかったのかという理由を、身をもって体験しました。経営の視点から、コントロールしなければいけない工程が多いです。

サブスク事業の場合、

  • 商品 / ソフトウェアの開発・改善

  • 新しいサブスクの概念を理解してもらうための営業・マーケティング

  • 与信審査、支払いフォロー

  • 据付・保守対応、契約解除後の商品回収

などなどと、お客様からサービスの対価をいただき終わるまでにたくさんの工程が必要になります。

その工程を1つづつある程度のクオリティに磨かないと事業が成り立たないので、難易度が高いです。(また、それぞれをゼロから作り出す必要がありました。)  難易度を10段階で表すと9ぐらいです。

また、その事業をもって戦う市場環境も難易度9ぐらいです。タンザニアは、自分の理解の斜め上をいく問題が日々降りかかってくる国です。

"なんでやねん〜!!!!!!"と
心の底から突っ込んだ回数は数知れません。

それに加えて、我々は日本企業として"ピュアホワイト"で事業をやっていく必要がある一方で、現地企業は"備長炭色のグレー"で戦っているので、競争環境も厳しいです。

事業 9  × 市場環境  9 = 81ぐらいの難易度の中で、
事業をやっているような感覚です。

そんな場所を戦う場所に選んだということは、
経営者として、失格とみなされるかもしれません。

ですが、"難しさ"というものを違う視点から見ると、"弱み"だけではありません。他社が簡単に追いつくことができない事業になるというチャンスも大きいです。それだけではなく、成功することで、生み出すことができる社会的なインパクトの総量も大きくなるのです。

また、私の性格上、簡単なことに対しては集中力が続かないタイプです。
これぐらいのチャレンジに挑めることは、幸せを感じ、ワクワクして働ける一因になっていると思います。(4年前の状態から、もう一度やりなおしてください。と言われたら、心が折れてしまうかもしれないが。笑 )
※"無知"と"若さ"は大事。

2. 経営者・リーダーとしての未熟さ


4年前、タンザニアに来たときは29歳で、
会社を立ち上げて社長になったときは30歳でした。

このように、経営者・リーダーとしての経験値は、ほぼない状態でのスタートでした。

タンザニアに来る前、アメリカで働いていたときは、自分が社長やったら、ちゃんと事業やるのになと謎の自信がありました。(私の父親は極度の阪神タイガースファンで、「監督があほや。俺が監督やったら優勝や」とよく言っていたので、そんな感じに近いかもしれません。)

ですが、実際にチャレンジしてみると、なんともできない自分がいました。

事業がうまくいかないときに、組織をまとめきれず、方向性を決めれず、改善の手が打てず、その中で人が去っていくという状況が一番厳しかったです。特に去年の一時期は人生で一番追い込まれた時間だったかもしれません。

このように鼻をへし折られながら、気付かされたことがたくさんあったと思います。最近はようやく経営者として、リーダーとしてやるべきことは何かということが少しづつ分かってきたような気がします。

ある尊敬する方に、"リーダーとして大事にしていることはなんですか?"
と質問させてもらったのですが、その回答が心に残り、指針になっていると思います。

  1. 自分がもっていない才能ある人たちに活躍してもらうこと。

  2. 自分が価値を出せると思うことは、自分の手できっちりやりきること。

組織運営の中で、自分が入りすぎても、任せきれていない、信頼していないように思わせてしまう。一方で、入らずに、放置してしまうのも違うと思う中で、悩んでいた部分があったので、自分の中でどうすべきかが見える指針になりました。

"自分が価値を出せると思うことについては、全力でアウトプットを出す"ということは意識してやるようになりました。

周りからどう思われているかは分からないですが、指示やフィードバックだけを出す上司よりも、そっちのほうがいいと思っています。

3. 積み重ねの大切さ

Baridi Baridiは、ダイキン工業とWASSHAのJVです。
タンザニア事業の大先輩であるWASSHAは創業10年です。

10年もの間、この厳しい事業環境で、戦い続け、しんどいことに耐え、ここまでの事業を作ってこられたのは、尊敬しかありません。自分で事業をやってみると、その凄さをより一層感じます。

ちなみに、ダイキンも1924年創業で、世界170ヶ国以上の国で事業を行っています。

"積み重ね"の力というものはやはり偉大です。

Baridi BaridiもWASSHAのオフィスでお借りした机1つ、椅子2つからスタートしました。それから多くの壁にぶつかりながら、社員みんなの頑張りで、ようやく会社らしく、事業らしくなってきました。

予定より時間はかかりましたが、今は約1,200台ほどのエアコンがダルエスサラームで稼働しています。これは1台1台、みんなで積み重ねてきた結果です。それを実践してきた社員全員の頑張りを誇りに思います。

ダルエスサラーム内の普及状況
(住所というものがないので、緯度経度で管理しています)

"積み重ね"を継続するには?

積み重ねは大事だと心で思っていても、
実際にやり続けるということは難しいのではないでしょうか?

例えば、私も英語もっと勉強しないととか思ったことはありますが、なかなか継続して勉強できないタイプです。

2・3ヶ月といった単位ではなく、年単位で積みかねていくためには、自分が積み重ねていけるための原理をしっかり理解するということが結構大事だと思っています。

私の中の原理は、以下の3つです。
①自分の想い・価値観にあったものにチャレンジすること
例えば、周りからネガティブな意見をもらうこともありますが、その中で、"想い"の根幹がへし折れないというのが大事だと思います。
シンプルに、自分がどうでもいいと思っていることは頑張れないです。

②頑張ってくれる仲間や同僚、応援してくれる友人や周りの人達がいること
厳しい状況に陥ったとき、この大切な人たちの存在は大きかったです。先が見えないときにでも、とりあえず1歩1歩と前に向かう原動力になります。

③客観的に自分を見ること
事業がうまくいかないときは、二宮金次郎(尊徳)を思い出すようにしています。ただ本を読みながら、歩いていた人ではなく、600もの農村の立て直しをしてきた偉人です。こんな偉人でもある村の立て直しに7年間苦労し、いきづまった結果、行方不明になったことがあります。

こんな偉人でもうまくいかへんねやから、自分みたいな凡人がたった2-3年でうまくいくと思うなよと客観的に思うようにしています。(そうすると、自分を責める気持ちが少し楽になります。笑)

自分の人事は自分で決めれないので、将来どうなるかは分かりませんが、できるかぎりのものをBaridi Baridiに残せるように日々積み重ねていけたらと思っています。

今後に向けて

事業としては、毎年2倍以上の成長が必要になり、成長に向けた種まきや事業拡大に伴うオペレーション整備もあり、生き残りに向けてやるべきことはたくさんあります。

それもやった上で、経営者として取り組みたいのは、この事業の"難易度自体を下げる"ということです。事業の難易度自体が下がらないと、この事業は世界に広まっていくものにならないです。

例えば、1980年代のパソコンは一部の人たちが使うものでしたが、今では誰でも使えるものになっています。もちろん価格が安くなったということもありますが、やっぱり簡単なものでないと、イノベーションは普及しないです。

このサブスク事業自体を1つの商品と考えると、
"現状の複雑なものの本質を見極めて、どうシンプルに作り上げるか?"
という所がワクワクポイントです。

この事業が社会にもたらせるポテンシャルは大きいということは変わらず信じています。だからこそ、世界にチャレンジできるように、"収益性"も"シンプルさ"も追い求めていこうと思います。

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