【百科詩典】きょうそうてきなマインド【競争的なマインド】

歴史が教えているように、競争的なマインドの人間は危機を生き抜くことができない。危機とは「一人では生きてゆけない」状況のことだからである。だから、それを生き延びるためには、他の人々とある種の「共生体」を形成できる能力が必要である。論理的に考えれば誰でもわかることだが、自己利益よりも、帰属する集団の公共的な利益を優先的に配慮するという習慣を深く内面化させた人間たちでかたちづくる共生体がもっとも危機耐性が高い。個人的にどれほど強健であっても、「自分さえよければそれでいい」と思っている人間たちの集団は脆い。疑心暗鬼を生じ、わずかのきっかけで崩壊する。
〜内田樹