【百科詩典】しゅっぱんぎょうかいとこうこくしゅうにゅう【出版業界と広告収入】

販売部数を競い、売上高で勝負しているのであれば、たいした間違いは起こらない。
読者に媚びるケースも発生するだろうし、流行に色目を使ったり、二匹目のドジョウを狙いに行って自分たちのオリジナリティーを捨てたりするような悲劇が起こることもある。
ただ、広告収入にもたれかかるようになると、点滴栄養で生きながらえる病人と同じく、後戻りがきかなくなる。
オリンピックと憲法改正を睨んで、出版業界の目の前には、巨大な広告収入がぶら下がっている。
編集部の人間には、美味しく見えるエサには、釣り針がついていることを思い出してほしい。
まあ、ウジ虫がおいしそうに見えている時点ですでに負け戦なのかもしれないわけだが。

〜小田嶋隆「ア・ピース・オブ・警句」