スライド14

対談:サイクロンZ氏

テーマ:芸人のキャラ作り


とりっと

Zさんはお笑い芸人からマジシャンになってるんですよね。

Z
まぁ、マジシャンと名乗ってよいのかどうかわかりませんが、マジックを取り入れたお笑いのネタをやっています。コメディ&マジシャンと、一応言わせてもらっていますが。

とりっと
なるほど。ただ、やってることが同じだとしても、考え方が違うと思うんですよね。マジシャンって、マジックの不思議さから入っていくんです。同じマジックをやるにしても、お笑い出身だと、人を楽しませたいとか笑わせたいとか、マジック以外の部分について深く考えているのかなと思うんですね。そういうところを聞かせていただきたいと思っているので、よろしくお願いします。

Z
よろしくお願いします。

とりっと
いきなり自由テーマなのですが、マジシャンがこうしたらもっと良くなるのに、とか、なんでこんなことしてるんだろう、と思うことってありますか?

Z
そうですね。僕ももう18年ぐらいマジックのお仕事をやっていますが、若手マジシャンを見ると、自分のことをよくわかっていないのではないかと思うことがあります。

とりっと
自分のことをわかっていない、というと?

Z
たとえば、自分に似合う服を着ないキャラクターを羽織っているというか。

とりっと
キャラが合ってないということ?

Z
そうです。マジックをすると、お客さんよりも優位に立つような状況になるときもありますが、18歳ぐらいの若いマジシャンが、お客さんを「おニイさん」と呼んでいる場面に出くわすんです。これは、誰か別の先輩マジシャンの真似をして、「おニイさん」と呼ぶようになったのだと思うのですが、だけど18歳が、自分よりもずっと年上のお客さんに「おニイさん」と言うのって、おかしいじゃないですか。「お客様」と呼ぶほうが正しい場面ですよね。だけど、先輩のセリフをコピーしちゃって、自分が言うと似合わないような言葉遣いをしちゃってるんです。

とりっと
ああ、確かにいますね。先輩のをコピーして、自分に合ってないキャラのトークをしているマジシャンいますね。今5人ぐらい思い当たりました(笑)

Z
そういうの見ると、僕はサブイボが立つんですよ(笑)。ああ、このマジシャンは、誰かのコピーをしているんだな、と。ただ台本を読んでいるだけで、心から自分の言葉で話してはいないんですよね。僕が観客だったら、そういうマジシャンが出てきても、マジックを見ようという気持ちにもならないんです。自分の言葉を言っていないと思うと、見ていて気持ち悪くて。たとえば、笑わせようと思ってギャーっと盛り上げたとしても、もともと根暗な人がそれをやると、悲壮感が出ちゃうじゃないですか。

とりっと
なるほどなるほど。

Z
だから、服と言うのは雰囲気や佇まいも含めた言葉ですが、無理した服を着るのではなく、自分に合った佇まいをするべきだと。

とりっと
僕も思うのが、どう見てもキモい人がいるんですね、いい意味で。誰が見てもキモさが出ている人が、自分のことをキモいと思っていない、とかね。

Z
ああ!何人かいますね(笑)

とりっと
僕から見れば、それはもったいない。周りが思っているのに、それをイジれる空気を作れないのがもったいない。自分が気付いて、イジれる空気を作れれば、そのキモさを笑いに変えられるのに、と思う。だけど本人がそれを否定しちゃうと、逆に周りは気を使わないといけなくなってしまう、と。

Z
たとえば手品家・新宿店だったら、ケチャップをこぼすというドッキリグッズで、「うわー!」って言って盛り上げるじゃないですか。だけど、その「うわー!」が似合わない人もいますよね。でも似合わないのにコピーしてやってると、無理してやってるなと心配になっちゃうんです。だから、自分に合ったやり方やセリフにするとか、自分に合った道具を使うとか、考えるべきだと思うんです。最初にマジックを始めるときは、真似から始めるだろうけど、自分に合った服を探して着るという作業も必要だと思うんです。

とりっと
ただ真似して終わるんじゃなくて、自分のキャラに合ったやり方ってなんだろうと、考えて実践するほうが、成長があっていいんじゃないか、ということですよね。

Z
そうですそうです。

とりっと
なるほどね。じゃあ、まずは自分のキャラクターを客観的に見ることが大事だっていうことになりますね。

Z
そうですね。だけど、それをせずに、逆に、きちんと先輩の演目をコピーすることのほうが正しいと思っている若手マジシャンが多いように思います。

とりっと
Zさんは、キャラクターという部分にアンテナが立っているから、そういう世界が見えるのでしょうね。でも、マジシャンから入っちゃうと、マジックが上手い下手はよく見えるのに、キャラクターにはアンテナが立ってないから見えていないんですよね。
自分に合ったキャラクターを探すためには、客観的に自分を見なければならないと思いますが、それについて、何か気を付けていることはありますか?

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