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異世界花屋(2話)

「お花屋さんかぁ」

わたしは、部屋の窓から夜空を見上げ星を眺める。
そんな事考えたことも無かった。
お花が好きで、お店に行っているだけだから。

王都では、大人になったら冒険者になる人が多い。
お金をたくさん稼げると言って。
生まれ持ったスキルで、モンスターを狩るんだって。
わたしは争ったりするのは苦手だし、冒険者にはならないと思う。

「こんにちは。今日も来てくれたのね」

アンさんは忙しそうだった。
薬草がよく売れているようだ。
腰に剣をぶら下げ、防具を着た30代位の男性がお店に来ていた。
冒険者の人だろうか。

「いつも有難うございます」

アンさんは、薬草を袋に包み冒険者に手渡していた。
お客様に対しての笑顔は、わたしに向ける顔と少し違う感じがする。
声のトーンが少し上がっている話し方だ。

「店終わってから、どこかに行かねえか?」

見ると、冒険者の人に誘われているみたいだった。

「いえ、私は忙しいので・・」

断ろうとするアンさんの手を掴む冒険者の男性。
ちょっと強引だな。
アンさん困ってるみたいだ。

「お客様、困ります」

店の奥から、エプロンを付けた男性が出てきた。
背の高い、アンさんと親し気に話していた人だ。

「この人は俺の彼女ですが、何か?」

黒髪の背の高い男性が、上から冒険者を睨むとすごすごと冒険者は帰っていった。

「助かったわ、ミライ。最近絡まれて困っていたの」

「そういうことは早く言ってくれれば良いのに。まぁ俺も見た目だけで、強くはないけど脅しにはなるみたいだからね」

後で聞いた話によると、ミライという人はアンさんの恋人らしい。
普段は、お城で働いているとか。
時々手伝いに来ているみたい。

****

「ああ、その人なら有名な人だよ。冒険者ながら、お城の仕事の面接を受かったとか聞いたねぇ。冒険者の間では有名な話とか」

家に帰ってから、お母さんに話したら教えてくれた。
お母さんは食堂をやっているのだけど、以前アンさんを雇っていたと言っていた。
冒険者の話もよく聞くらしい。

「真面目に働いてくれてね。辞めるって聞いたときは引き止めたかったんだけど、お店を始めるって聞いてたからね。まさかお花屋さんだとは思わなかったけど。世の中意外と狭いもんだねぇ」

アンさんとお母さんが、知り合いだったという事にはわたしも驚いた。
見た目も性格も全然違うから。

****

私は家に戻り、夕食の準備をしていた。
一軒家を借りて、ミライと住んでいるのだ。

「アン、あの女の子って不思議な感じがするね」

「可愛いでしょ?いつもお店に来てくれるの。サクちゃんって言うのよ」

「サクちゃんて言うんだ。ピンクの髪の女の子」

私は、テーブルにお皿を並べていく。
ミライが他人の事を言うなんて珍しい。
どうしたのだろうか?

「表現が難しいな、そんな気がするっていう程度なんだけど・・」

ミライは時々魔法?不思議な力を発揮することがあった。
凄い力があったり、凄い魔法が使えたりという事では無いのだけれど。
前に聞いた話によると、女神様ともお話出来るとかなんとか・・。
嘘は言ってないと思うけど、いまいち信じられないのが本音だ。




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