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異人さんと食べる朝食

フランスの朝食といって、みなさんが想像されるのは何ですか?

焼きたてのクロワッサンとカフェオーレ

そんな感じでしょうか。
パリのカフェで朝食セットを頼むと、クロワッサンとコーヒーに、ジャムと絞りたてのフレッシュなオレンジジュースもついてくることもあります。なぜか水とシロップもついてきたこともありました。オレンジジュースを薄めて飲むんですかね、謎のままですが。。。

その昔、パリのオペラ座の近くにある、インターコンチネンタル パリ ル グランの朝食ブッフェに行くのが夢だと言っていた時がありました。外からでもわかるほど、高く積まれたクロワッサンの山を見て、あれを「もういらない!」と思うほど食べてみたい、と。

ちなみにこの朝食ブッフェ。パリでは珍しく、ご飯とお味噌汁などの日本食コーナー(小さいですが)もあったりするので、日本人には最高です。

焼きたてのクロワッサンとカフェオーレが、フランスの朝食だと信じ切っていた私ですが、パリに住んでみると、そうでもないことに気づきます。

焼きたてのクロワッサンを買うためには、近くにブランジェリー(パン屋)がないといけません。毎朝クロワッサンのためだけにわざわざ少し離れたブランジェリーに行くのは不可能です。
そして、日本よりも安価とはいえ、1個1ユーロぐらい、それを2人分で約250円を毎日消費すると、エンゲル係数が高くなってしまいます。
結構カロリーが高いので、エンゲル係数だけでなく、脂肪率も高くなってしまいます。

みんなはどうしているのだろう、と聞いてまわると、大体が昨日の残りのパンをトーストして、バターとジャムを塗って食べている、とのことでした。

あら、実家と同じじゃない。

もちろんパンは、昨日の残りではないですし、フランスパンでもカンパーニュでもなく、食パンと言われるベーシックなもので、バターではなくマーガリンでしたが、私の記憶をたどっても、朝食にお米を食べたという記憶はありません。

物心ついたころから、食パンにマーガリンをべったり塗りたくって食べていました。ジャムなどというシャレたものはあるわけもなく、私はマーガリンを塗ったその上に、砂糖をふりかけておりました。ちょっと知恵がついてくると、それをもう一度オーブントースターで焼き、砂糖が少し焦げてカリカリっとなるのが好きでした。

父は濃いめの紅茶に、ミルクと砂糖を大量に入れて飲んでいました。
甘い紅茶を飲んで、口の中が甘さでいっぱいになったところにパンを食べると、マーガリンのしょっぱさが交わって絶妙なんだと言っておりました。
私は逆で、砂糖いっぱいのパンをミルクと砂糖が入った紅茶と一緒に食べると甘すぎるので、何も入れない紅茶と一緒に食べていました。

父が好きだったからうちの朝ご飯はパンになったのか、今では理由を知ることはできませんが、とにかく幼いころから朝ご飯はパンだったおかげで、フランス人の夫との朝ご飯は不自由さを感じたことはありません。

パンにジャム、ということでもお分かりのように、フランス人は朝食は甘いものを食べるようです。
うちの夫は朝食では甘いパンを食べないと、調子が出ないと言っております。
というわけで、我が家の朝食はいつも甘いパンとコーヒーです。
食パンがちょっとグレードアップされたり、紅茶がコーヒーに変わりましたが、小さいころから、私の朝食は基本的には変わっていません。

父は私が幼いころから「異人さんとだけはやめてね」と繰り返し言っておりました。
異人さん、そう、外国人のことです。
誰と結婚してもいいけれど、外国人とだけは結婚しないように、と。

夫と一緒に住むことを報告した日、父は怒り狂い「お前とは親子の縁を切る!」と言いました。
父はこの世で一番好きな人でした。しかし、その父よりも好きな人ができてしまったので、どうすることもできません。とても辛かったですが、それを受け止めました。

異人さんとだけは結婚するのはやめて、と言った父が、フランス人の夫と一緒に住んでも不自由ないように、幼いころから私に甘いパンを食べるという習慣をつけてくれていたとしたら。。。

こんな皮肉なこともあるなんて、人生ってやっぱり面白くて“ええじゃないか”と思うのです。


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