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摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.9 「呼吸と嚥下」〜頭頸部編②〜後頭下筋群

はじめに

摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。9月に入り、急に秋の訪れを感じています。皆さん、下半期に向けての準備はいかがでしょうか。アシスタントメンバーも地道に活動を継続しながら、知識と技術を磨いて皆さんとその先の患者様へ還元できるように日々取り組んでいます。前回は胸郭の前面の可動性の低い患者様に対して「舌骨下筋群」に注目してお伝えしました。今回のブログでは、~頭頸部②~と題しまして、「後頭下筋群」に注目してお話していきたいと思います。

誤嚥防止機能である咳嗽を学びたい方!
咳嗽機能向上の為の腹圧評価・治療アプローチの臨床応用編

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前回のレポートはこちら

1.長期臥床の悪影響

長期臥位での胸郭の特徴

 長期臥床が続くと胸郭の可動性が低下します。その影響により呼吸時に1回換気量の低下が起こることは、以前のブログでもお伝えしました。
 重力により、胸郭だけではなく頭頸部も伸展してしまいます。その結果、下顎が下制・開口し口呼吸となってしまう患者様が多くおられるのではないでしょうか。また、舌骨下筋群が伸張されて嚥下時の喉頭挙上が阻害されます。さらに、咽頭腔が広がり嚥下圧をかけづらくなります。

2.後頭下筋群について

後頭下筋群の解剖

後頭下筋群には4種類の筋があり、小後頭直筋、大後頭直筋、下頭斜筋、上頭斜筋に分かれています。両側作用で頭部を伸展させ、一側作用で頭部を同側に回旋させます。ただし、上頭斜筋(青色)のみ一側作用で頭部を同側に傾斜、反対側に回旋させる作用があります。

3.頭頸部の運動学・解剖学


頭部・頸部の運動学と解剖について

環軸関節の解剖・運動学について

頭部と頸部とは具体的に分けて介入すると治療しやすくなります。
頭部とは上位頚椎とも呼ばれ、①環椎後頭関節②環軸関節からなります。
①環椎後頭関節は後頭骨と環椎(C1)からなる関節で、頭部の前後屈の動きを担ってます。②環軸関節は環椎(C1)と軸椎(C2)からなる関節で、主に頭頸部の回旋の動きを担っています。頸部とは下位頚椎(C3〜C7)とも呼ばれ、頚椎の前後屈,左右回旋,左右側屈の 6 方向に運動方向をもっています。今回は、頭部に注目してお伝えしていきます!

4.後頭下筋群の評価

<背臥位での評価>

背臥位での評価

耳垂(耳たぶ)と肩峰との関係性を評価します。これは アシスタントサポートVOL.8の胸骨舌骨筋の評価・治療でも同様です。
頭頸部を評価する際は上記で述べた上部頸椎(C1、2)につく後頭下筋群と、下部頸椎(C3~7)につく後頸部の筋に分けて考えます。

後頭下筋群の触診

頭部屈曲(顎引き)に問題がある場合は、後頭下筋群が付着している軸椎(C2)の棘突起を目印に後頭骨下縁を指で把持しながら頭部屈曲の動きを促していきます。C2は後頭骨からたどって一番最初の頚椎の出っ張りです。頭部回旋は環軸関節をイメージし、頭頸部が側屈しないように注意して誘導していきます。

5.後頭下筋群の治療(頭部屈曲・回旋)

後頭下筋群の治療

頭部屈曲は指や手首、肘屈曲で持ち上げてしまうと頭頸部の複合屈曲になってしまうので要注意です。頭部を動かそうとして頭と床面の隙間ができてしまっていないか観察してみてください。

【ポイント】
・後頭下筋群に指をかけ頭部を固定(虫様筋握りでメロンを持つようなイメージ)した状態のまま、手は動かさずにセラピストの重心を後下方へ移動するだけです。
・指や手で無理やり引っ張ってしまうと痛みを伴うのでゆっくりとエンドフィールドまで動かします。

<頭部回旋>

頭部回旋の誘導

上記で述べた環軸関節をイメージしながら頭部回旋を誘導していきます。頭頸部が一緒に側屈したり、胸郭が一緒に回るような代償運動がでないように頭部だけを回旋させていきます。回旋側を動かそうと意識するほど代償が出やすくなります。
【ポイント】
・固定と運動を意識することです。その中でも支持側の固定が重要で、支持側の後頭下筋群を伸ばしていくことで頭部回旋生じやすくなります。

まとめ

 今回は、頭部屈曲のための後頭下筋群の治療についてお伝えしていきました。上位頚椎が頭部を構成します。環椎後頭関節と環軸関節を意識して介入してください。
臨床場面では常に仮説〜評価、治療⇄効果判定の繰り返し行う事が重要ですので、必ず嚥下と呼吸機能の評価を行なってから介入しましょう。今回の効果判定としては頭部屈曲しやすくなることで口唇閉鎖ができ、鼻呼吸が行えるようになったか?また嚥下時の喉頭挙上範囲やスピード、嚥下圧が改善したか?が観察ポイントです。

おわりに

 これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます。同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

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皆さん、いつもnoteをご覧になって頂きありがとうございます👍
 この度、基礎知識から臨床での評価・治療アプローチまで考えられるように呼吸&嚥下4回コースの開催することになりました(^ ^) 
 今回は、9月28日(火)に第2回コースで咳嗽機能向上に繋がる腹圧の評価・治療アプローチ『臨床応用編』への参加希望が多数ありましたので、当日セミナー参加できるようにさせていただきました!復習用動画もついてますので、何回も見て復習しながら、臨床活かしてもらえれば幸いです。

摂食嚥下について興味・もっと深く学びたいと思った方は、脳外臨床研究会の摂食嚥下セミナー講師の小西がお送りする学びのコンテンツへ⬇


今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!