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秘密の場所

うちから歩いて行けるところに川があります。時々散歩がてら行っては橋の上から川を眺めたり鳥を見たりして帰ってくるのですが、ぼんやり川を眺めていると割と頻繁に魚が水からピョーンと飛び跳ねて出てきます。
我々がロケットに乗って宇宙に飛び立つように、きっと魚チームも世界の外側を見てみたいんだ。なんて言ってみたくなりますが、おそらく何かプィ〜ンと飛んでいるのをパクッとやったのか、もしくは体のどこかがカユいのか。いや、もっと何か特別な理由があるのかもしれませんけれど、次はどこから出てくるかと水面を凝視していると、向こう側から鴨の軍団がゆるい雰囲気でスィ〜っとやって来る。『あ、こっちにもいた!』とよくみればこちらは鵜。鵜かー。鵜だったかー。う〜マンボッ!と今度は川辺に目を移すとこちらではサギが遠くを見て黄昏ていたりして。
この一見シブい感じのサギもシブそうに見えて案外とぼけていて面白いのです。しばらく目を離しているといつのまにかもう1羽増えていてやはり同じポーズで黄昏ていたりちょっとコントっぽい。みんなして何をそんなに黄昏るのだと向こう岸を見れば、ウロウロとどこか落ち着く場所を探している雰囲気の兄さんが。突如ピタッと止まったと思ったらいきなり縦笛をふきだした!きっと笛を吹くためのベストスポットを探していたのでしょう。

そんな、静かなようでわりと賑やかな様子を橋の真ん中から眺めるのですが、その風景の中にいい場所があるのです。川の曲がったところのちょうど出っ張り、そこに一本の木があります。まるで絵本に出てくる木みたいで、これも橋からの眺めのみどころなのです。
巨大な木ではないけれど、時々小さな椅子を持ってきて一杯やってるおじいさんたちがいたり、ヨガっぽい人が瞑想してるっぽかったり(ぽいぽいテキトーな言い方ですね)。その木は橋のもっと先で土手を降りていかないといけないので私はただ眺めているだけでした。

ところが先日、逆方向から散歩をしてみたらそのゾーンまで降りて行ける階段を発見。これならサバイバルしないで行けるぞと行ってみたのです。


到着してみると思ったよりも川に寄っていて、出っ張りにある分はなれ小島のようでした。木の他には何もありません。ここまで降りてくる人もいません。そして今まで遠くから見ていたこの木の下に立ってみると、

亜空間!

遠巻きにいつもの橋が向こうに見えましたが、ここは別世界でした。ヨガっぽい兄さんが瞑想っぽかったり、おじいさんたちが一杯やりに来ていたりした気持ちがよ〜くわかりました。極上の木陰です。きっとヨガっぽい兄さんにとって、そして一杯やりに来ていたおじいさんたちにとってここは秘密の場所に違いありません。これはヤバい!

なんてサイコーなのだと木の下から上を見上げてうっとりしていたらギョギョッ!よくみると木から海ブドウみたいなものがゆらゆら垂れ下がっていました。なんだこれは!そして垂れ下がる海ブドウの上に小さな赤い花が…。もしかして何かヤバい木かもと慌てて木、垂れ下がる、などなどで検索してみたらこれはクルミの木ということがわかりました。おぉ、ギターとかになってるウォールナット、なるほど。

この左側にあるぶら〜っとした海ブドウがクルミの雄花なんだって。それにしても快適!次に来る時は小さな椅子と本とビールを持ってこよう。おそらくヨガっぽい兄さんや一杯爺さまたちのほかにもここの常連がいるはずだから、みなさんのジャマをしないように誰もいない時を狙って、私も8級からスタートしますのでどうぞ混ぜてくださいな。

私の秘密の場所、発見です。




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