母語の感覚
母語の感覚
いろいろなところがつらくなってゆき板間のすみで憎しみに会う
どのように老いた形になるのだろう石のからだを湯舟にまるめ
背中からふかく抱かれるイメージで大つごもりの古雲のある
風にゆび 熱よびおこすよろこびを絞りだすとき人でなくなる
いいえその戦争じゃないその女でもないあなたには伝えない
古い古い歌をさまよう唇に過ぎ去るかげの遅れて響く
目に見えてうしなうものは何もなく 為兼、と呟けば風吹く
朝霧の集荷エリアへ 小夜中に腫れてしまった紙を託しに
(かばん2019年2月号)
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