とみいえひろこ

短歌的。かばん・cahiers・舟の会

skin(『舟』34号より)

ほそくほそく連なる水のあることの夕べ小さな咳のきこえる

パーカーのフードをかぶり閉ざされるときのしずかな気持ちで訊きぬ

つめたい床。はだかの管に埃、光。またすぐ冬が来る窓の傍。

skin(『舟』34号(舟の会))より3首

扉の音

ゆっくりと閉まるほど心にのこる扉の音がひとつあること

少しだけお金が入る 沈丁花 くもり空 すこし落ち着いてくる

うずくまる姿が見たい川があり少しだけれど花散る夕に

そのことを言いだすまでの川べりのいくつものかよわき螢

乳飲み児が昔に聞きし櫂の音 桜のはなの青き時刻に

近代の短歌がひとつ敗戦ののち何もなき秋をのこしぬ

ほうほうと梟の鳴くほんとうに食べたいものはべつにとくにない

白白と

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山沢栄子 私の現代(大谷記念美術館)

印象に残っている写真は、赤色がかすかに映り込んだ銀色と白のぬめっとした無機質な何かの表面の写真、針金みたいなものの一部の大写しとそれがつくりだす影の写真、黒地に白抜きされたタイトルと木の肌で構成されたレコードジャケットのようなタイトルページとその内容、別々のものたちの色、影の関わりを切り取った詩としての写真など。

晩年である1970-80年代の抽象写真シリーズ〈What I am doing〉と

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『ミカヅキカゲリ作品集』I.II.III/ブックデザインしました

ミカヅキカゲリ作品集I.II.IIIのブックデザインをしました。

長編、短編、童話、詩、短歌、戯曲など、ミカヅキカゲリさんが書き溜めた膨大な作品のなかから厳選された作品集です。

色々なかたちや匂いの闇をたっぷり吸った、「眸」という字が多く出てきます。私は、作品集IIの詩作品がとても印象に残っています。ゆっくり、身体が闇に浸されてゆくような、背徳感にも似た気持ちよさ、そして、ぽわあんとひろい水面

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『箱庭弁当』劇団態変(伊丹アイホール)

劇団態変の芝居はわたしにとっては、電車に乗ってひとりで身体を見に行くだけの時間をもつ、という感じ。

身体を、自分が殺してきたものを観る。全身をぴったり包むタイツは、身体が、身体の内部の様子がよく見える。

わたしもその何かの一部としていつかばらばらに地面におかれ、時間をかけて人型になり、アイデンティティのようなものを身につけた。肌が触れるものを感じ、痛みや痒みや不快さ、心地よさなどを感じるのは、

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木下こう歌集『体温と雨』/ブックデザインしました

初版は砂子屋書房より刊行。品切れ以降入手困難だった歌集が、今回新たに49首を増補し私家版として刊行されました。

近くの本屋さんで手にとって購入できるように、と、発行者の牛さんのブログにて取扱書店が随時更新されています。

木下こう歌集『体温と雨』私家再版について

今回加わった「Ⅳ あはくてあかるい」から。

葉はむすう花はかぞへてその白をなづきのなかまではこべば残る

沼に胸ありてさみしき 飲

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