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かばん2019年2月号より

目を開けて最初に見えたくらやみを海だと思いこんでしまった

木村友/視界


あるでしょう誰にもうばえないものがまぶたをおろすと赤いくらやみ

斎藤見咲子/よく燃える服


黒が黒でいられることを許す木々、ビャクヤは禽獣の声に似る

(ビャクヤ=白夜)

赤木瞳/kaii


今もまだお味噌汁は煮えていておかえりこどもとあのひとが言う

鳩/鳩的歌舞伎町


頑張った、よく頑張ったと褒められる夢の中なる私の光に

(光=かげ)

前田宏/立替え立直し


さざんかの白しんしんと公園の夜に灯ってさざんかは白

小川ちとせ/永遠は在ります


ふいにくる不安のように片時雨あなたはときにわるいひとだよ

田中ましろ/レンズフレアの生まれるように


口紅を真紅に変へて八十の老女すつくと歩みはじめる

嶋田恵一/聖母の心臓


明日があることを背骨に刻む夜 青い卵に慰められて

小野田光/ボブスレーを選ぶ


水飲むと口からこぼれる変だなあ顔面麻痺の最初のサイン

織部壮/顔面麻痺(ベル麻痺)


傾けた器の水のななめさと 分け合うことのない水の水色

どうぶつとぶどう/いたちがわ流れる



歌誌「かばん」2019年2月号より



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