見出し画像

赤字を来年の所得の経費にできるの?

 今回は、その年の所得が赤字だったときに翌年の所得の経費にできるのかについて取り上げます。

 一定の要件に該当すれば、できます。

 赤字というのは収入よりも経費の方が高く、所得がマイナスであることを指していますが、厳密には純損失の金額がある場合(所得税法2条1項25号)を言います。

 これは、損益通算してもなお控除しきれない部分の金額を言います。
  
 損益通算というのは、例えば事業所得がマイナスである場合にプラスである不動産所得からそのマイナスを控除するような場合を言います。所得税法で規定する10種類の所得のうち異なる書類の所得から控除することを言います。

 こういう控除をしてもまだ控除しきれない部分を、純損失と言います。

 この純損失を、翌年以降の所得から控除できるのです。

 純損失を繰り越して控除することから純損失の繰越控除(同法70条1項)と呼ばれています。

 これは、2022年の純損失がある場合、最大で、翌年である2023年からも、翌翌年である2024年からも、3年後の2025年の所得からも控除できることになります。

 要件としては、青色申告書を継続して提出している場合に限られます。
  
 青色申告書というのは、定義が青色の申告書によって提出する確定申告書をいう、というような一見して内容がわからない規定があります(同法2条1項40号)。

 これを提出できるのは納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合に限られます(同法143条)。

 承認を受けるには業務開始から2月以内に申請書を提出しなければなりません(同法144条)。

 承認を受けた場合は、帳簿書類を備え付けて取引を記録し、これを保存しなければなりません(同法148条1項)。

 その帳簿書類というのは、所得税法施行規則57条から64条までに定められていますが、要するにまとめると、

①仕訳帳
②総勘定元帳
③貸借対照表
④損益計算書
⑤決算で棚卸資産の棚卸しを行う場合は棚卸表

 です。

 上記各書類についての説明は割愛しますが、こういった書類が必要となります。

 純損失の繰越控除があるのは、事業というのは1年間で終了するものではなく、それ以上継続していくものですが、このうち会計期間というのは1年間という期間で人為的に区切っているわけで、その場合にたまたま赤字があっただけで、数年間という期間でプラスマイナスすれば必ずしも赤字というわけではない場合に、1年間という人為的に会計期間を区切ったことの見返りとして、赤字を繰り越すことを認めたというものと理解しています。

 1年間という会計期間と事業が継続するという前提とを純損失の繰越控除を認めることで調整したわけですね。

 今回はここまでとします。

 読んでいただきありがとうございました。

 

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?