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【著作権】自由に利用できる場合(図書館の著作物の利用)

 今回は、他人の著作物を自由に利用できる場合として、図書館の著作物の利用について述べたいと思います。

 著作権法31条では、図書館の職員による複製を一定の場合に認めています。

 このうち利用者に関係するものだけを取り上げると、1号において、利用者の求めに応じて、その調査研究のために、公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供することができるとされています。

 図書館に設置されているコピー機を用いて利用者が複製する場合、一つの考え方として、上記の図書館の職員による複製の代わりに利用者が行ったという位置付けをするというものがあり、そのような考え方によって図書館側が上記の通り著作物の一部分を一人につき一部としているところもあるようです。

 ただ、別の考え方として、結局図書館の図書を借りて図書館の外でコピーする場合もあるので、その場合には一部だけとならず複数部コピーする場合もあります。

 以前にお伝えしました通り、私的使用のために複製することはできますので、この場合には一部でなければならないわけではないのです。

 図書館の外か内かで区別する実益はないとして、利用者も図書館の職員が複製する場合と同様に一部だけとするものではないという考え方もあります。

 なので、私的使用であれば何部でも良いということになりますが、あくまでも利用する図書館の利用規約等に従って図書を利用することになるでしょうから、その利用規約等で一部と制限していれば、複数部の複製をした場合は利用規約等には反することになります。ただ、その図書の著作権者との関係では複数部であっても私的使用として許される、ということになります。

 図書館がする複製は営利を目的としない事業として許されていますので、コピー代の実費を徴収するのは構いませんが、それ以上に徴収して利益を出すのは本規定に違反することになります。そこまで徴収している図書館はないとは思います。

 また、本規定は、令和3年に改正がありましたので一部だけ紹介します。

 本規定では,複製及び複製物の提供(譲渡)しか許されておらず,図書館等から利用者に対して,FAXやメール等による送信(公衆送信)を行うことはできませんでした。

 そのため,複製物の入手までに時間がかかるなど,デジタル・ネットワーク技術の発展を踏まえた国民の情報アクセスの確保等が十分に図られていないという課題がありました。

 そこで,従来、紙媒体での提供が可能とされていた図書館資料のコピーを権利者の許諾なく公衆送信することができるようになりました。

 インターネットでの提供が可能となったのです。

 もっとも,図書館等以外の場所で国民が簡易かつ迅速に利便性の高い形で資料のコピーを入手・閲覧することができるようになることで,権利者に与える影響が大きいものとなります。著作権者にとって権利が制限されているということです。

 そこで権利者保護を図る観点から,図書館側が以下の(ⅰ)~(ⅳ)の措置を講ずることとしています。

(ⅰ)送信主体を「特定図書館等」に限定【第31条第3項関係】

 送信主体となる図書館等については,第31条第1項で定める「図書館等」のうちデータの目的外利用を防止するために適切な人的・物的管理体制等が整えられているもの(特定図書館等)に限定することとしています。

 データ管理がきちんとした図書館に限るということですね。 

(ⅱ)不正拡散を防止・抑止するための措置【第31条第2項第2号関係】

 公衆送信を受信した利用者が不正にデータを拡散させることがないよう,図書館等からの送信時に不正な拡散を防止・抑止するための措置を講ずることを要件としております。

 このような何らかの技術的な措置があるものと思います。

(ⅲ)「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の制限(正規市場との競合防止)【第31条第2項ただし書関係】

 今回の公衆送信によって,正規の電子配信サービスの市場等を阻害し,権利者の利益を不当に害することのないよう担保するため,「著作物の種類…及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には,公衆送信を行うことができない旨のただし書を設けています。

 これにより例外的に権利者の利益が害されるような場合に個別に救済を図る趣旨ですね。 

(ⅳ)補償金の支払い義務【第31条第5項等関係】

 今回の送信サービスの実施に伴って権利者が受ける不利益を補償するという観点から,図書館等の設置者が権利者に対して一定の補償金を支払わなければならないこととしています(なお,実際の補償金負担は,基本的に当該サービスの受益者である図書館等の利用者が負担することが想定されています。)。

 利用者としてはいくらか支払う必要があるようです。

 
 本改正は、「著作権法の一部を改正する法律」が,第204回通常国会において,令和3年5月26日に成立し,同年6月2日に令和3年法律第52号として公布されたことによるものです。

 前述の本法律による改正事項である各図書館等による図書館資料の公衆送信に関する措置については,上記の公布から2年以内で政令で定める日から施行されることになっています。あと1年半以内くらいには実現することでしょう。

 今回はここまでとします。読んで頂きありがとうございました。

 

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