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共著入門書『基礎から学ぶ商法』にこめた個人的な思い

久しぶりのエントリになります。
5/20に有斐閣から、『基礎から学ぶ商法』というタイトルの商法入門書を出版します。大阪公立大学の小柿徳武教授、関西大学の伊藤吉洋教授、立命館大学の島田志帆教授との共著で、僕は株式会社の設立、商法総則・商行為法を分担執筆しています。企画から長い時間をかけて検討してきたものですが、ここでは個人的な思いをまとめておきたいと思います(他の3名の共著者とすりあわせをした内容ではないことをご了解下さい)。

共著者の陣容が固まった時点で、概ね僕が商法総則・商行為法の担当であることも決まっていました(控除説的ではありましたが)。僕自身は北村雅史編『スタンダード商法I商法総則・商行為法』(法律文化社、現在は第2版)という概説書の分担執筆も行っていたので、それぞれの本の役割分担という観点も意識しつつの執筆となりました。
出だしでまずつまずいたのは、そもそも商法総則・商行為法が何のためにあるのか、どのように説明するかでした。ご存じの通り債権法改正・平成30年商法改正により、短期消滅時効・商事法定利率の規定は削除され、民法に一本化されました。従来は営利性・迅速性とお題目を唱えていたはずの目的・差異の説明が、にわかに困難になりました。まずここからどうにか調理しなければなりません。書きぶりは実際の書籍をご覧いただければと思いますが、苦心の作となっています。

実際の執筆に当たっては、共著者間の筆致の統一感をかなり意識するところはありました。Caseを設定した場合、それに対応する答えを明確に書くことは徹底されています。法律の教科書では意外とこの点の対応関係が明確でなく、特に初学者は置いてけぼりになる可能性があります。僕の担当分では必ずしも多くありませんが、他の共著者は図表もかなりふんだんに使っています。似たような図表は個々の授業でも先生方が図示されていると思われるので、そのような参考にもなるのではないかと思います。

あとは紙数の関係で、どの論点を取り扱い、どれを落とすかはかなりもめました。幾度となくテーマが盛り込まれ、詳しすぎる・難しすぎるとして落とされ、次の回では何でここが書かれてないのとちゃぶ台返しされる、といったことも度々でした。個人的には共著書はなるべく少人数の方が統一感が得られやすいと思っていますが、それでも4人はかなりの限界値なのかもしれません。

本質ではありませんが、書名案も種々流転しました。「○○商法」というネーミングが新手の商法やよろしくない商法を連想させないかという懸念があったため、結局は企画段階のものに落ち着きました。

学者が書いたものがどの程度学生・特に初学者フレンドリーなのかは、フィードバックがなければなんともわかりません。こちらとしての工夫はしたつもりですが、想像力には限界があります。読者カードのリアクションなどは貴重な参考意見になると思いますので、是非お手にとって頂いた方にはご返送を頂ければ嬉しく思います。

僕自身の最近の書き物は圧倒的に保険法が多く、最近も共著の保険法教科書の分担を仰せつかりました。これについてはまたもう少し話が進んでからにさせて頂きます。

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