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一番大切なものは何ですか?~人はそんなに多くを抱えられない~

こんばんは。
みなさんお元気ですか?

小学校がお休みになって息子と二人きりの日々が続き、なかなか外へ出るのもままならなかったんですが、先日やっと、久しぶりに街の方までお出かけしてきました。

自転車で天神・中洲方面へ。街中もなんとなく人が少なく、通り過ぎるバスはガランとしている印象。時々親子連れとすれ違う度に、もう春休みに入ったように錯覚するけど、本当ならまだ学校で学年最後の一ヶ月を過ごしている時期だよね。春休みなんていう、あったかくて平和な響きのするものじゃないよなぁ、今の状況は。

遠くの街の話だったコロナウイルスが、少しずつ少しずつ、すぐ近くまで近づいてきていると感じていた時、自分自身と家族を守るための準備を始めました。いざという時どうしたら大切な人たちを守れるか、息子が通う小学校は安心できる場所なのか??そんなことを考えながらニュースを見ている時が一番、危機感を持っていたように思います。

いざ、学校が休校になって長い休みが始まると、息子と過ごす毎日の3度のゴハンのこととか、頭の中は生活していくためにやることが増えていき、ニュースを見る時間も前より少し減っていきました。

ニュースを見なければ、ここは何でもないただの日常。
何も怖いものなんてない普通の。

休みが始まってたったの一週間で危機感が薄れていくようじゃいけないな、と思いながら、だけどそういつまでも、気持ちを張り詰めていたらやってられないよ。ただでさえ、急に始まった春休みにお母さん達は疲れているんだもの。

でも、とりあえず学校が休みになったおかげで「家」という安心できる場所ができたことは確か。


安心できる場所を確保したら、少しづつ周りの状況をうかがうゆとりが出てきたのに加え、コロナウイルスの影響が違った意味でもっと身近なところに影を落としはじめているのが見えてきました。健康・生活・娯楽・経済・・。こんなにも繋がっていたんだな、と改めて気付かされます。

あちこち思いもよらなかったところにもコロナウイルスの影響が出てきて、ほんとにこの先どうなっちゃうんだろう。


ニュースを見たり、SNSで流れてきたり、現場の人の話を聴いたり、自分で見て感じたりして、あらゆる業種の方々がとても苦しい状況にいることを知りました。

給食センター、酪農家、野菜農家、飲食店、卸市場、ライブハウス、スタジオ、袴レンタル業、お花屋さん、音楽家、教師、保育士、病院、習い事のスクール、スポーツジム、美術館、博物館、鉄道、飛行機、バス、ホテル、旅行業、歯科医院、観光施設、お土産屋さん、相撲、野球、サッカー、、、、。

なんて、あげてもきりがないくらい、思いつく全ての業種で何かしらの影響が多分出ているのだと思います。

感染のリスクがあるところへすすんで飛び込んでいくことはできないけれど、そうじゃないところで、何か力になれることがあるのならやりたいなと思いました。

お花が余って困っているのなら、滅多に買わないお花を買って誰かに贈りたいな、と思うし、牛乳が余っているなら牛乳をたっぷり使うお料理をしてみたり。

できることは限られているけど何かしたいと思うのは、直接会ったりSNSで現場の声を聴いたこと、そして、みんなただ嘆いているのではなく、どうやったら乗り切れるか、一生懸命アイデアや対策を練って頑張っているからだと思います。


私は音楽をやっているので、普段からスタジオやライブハウスにはお世話になっていますが、今回のコロナの影響をとても大きく受けているように思います。

それでも、早くから施設内の除菌や換気をこまめにやったり、消毒用アルコールを入口においたり、利用者が入れ替わるごとにマイクや鍵盤の消毒をしたりして、気持ちよく利用してもらえるように頑張ってくださっているところもあります。

もちろん、それで完全にリスクが無くなる訳ではないけれど、安心して使ってもらいたい、利用者を感染から守りたい、という気持ちがとてもありがたいと思うのです。

安心して利用できるっていうのはやっぱりすごく重要なことだと思うけど、利用者の立場からはなかなか聞けないものだから(少なくとも私は)。


それ以外にも、無観客で配信のライブを企画されたり、キャンセルで空いたお店を練習スタジオとして貸し出したり、皆さんいろいろな知恵をしぼって、音楽を聴きたい人にも演奏したい人にも、そしてお店にとっても嬉しいことを考えて頑張っていらっしゃいます。

私にできることなんて、時々スタジオで練習することくらいしかないけれど、落ち着くまでなんとか一緒にがんばれたらいいな、と思っています。
でも、、

それでも。


それでも、ライブハウスを介して感染者が拡大してしまった報道があり、世間の目は冷たいし、イベントによっては人が密集するという点で、危険性の高い場所なのかもしれません。

よく考え、ライブを続けることも中止にすることも、観に行くことも行かないことも一人一人が自分で判断するしかないんだけど、私だったら、その判断の一番の理由となるものは何だろうと考えてみました。

いろいろな状況があり、責任があり、なかなか決断できない気持ちはすごくよくわかります。私もそうだから。でも一番、絶対に譲れないことを考えてみたら?


皆さんにとって一番大切にしたいことはなんですか?


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自分が感染するのなんて全然怖くないという人もいるかもしれません。確かに、健康な人なら症状が出ないまま治る人もいるかもしれないし、重症にはならないのかもしれないから、過度に恐れることなんてないのかもしれません。

でも、自分自身の体はいいとしても、自分が感染することで周りの大切な人たちを危険にさらすことになる訳で、私はそれが怖いです。怖いというより、私のせいでそんな危険に巻き込んではいけないという気持ちが強いです。

まだまだ友達と同じクラスで過ごしたかったと、息子が悲しい気持ちを我慢して家で過ごしているのに、私が外からウイルスを持って帰るわけにはいかない。

一生懸命スタジオの消毒をして、少ないお客さんでも安全に気持ちよく使ってもらおうと頑張っているところへ、私がウイルスを持って行くわけにはいかない。

家族や大切な友達にうつしたり迷惑をかけたくないから、できる限りの予防はするし、リスクの高い人混みには行かないようにしたいです。

といいつつ、いろいろな立場があるし、お仕事があり責任があり生活があるので、そうしたくてもできないジレンマや、私よりもっとはるか上の次元で悩んでいる方がたくさんいらっしゃるんじゃないかと思います。


こんな時。


こんな時、震災の時もそうだったけど、自分にとって一番大切なものは何かと問われているような気がするんです。仕事?責任?家族?友達?

人はそんなに多くのものを抱えられない。
2つも3つも守ることはできないのだ、と。


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昨日、3月の東京のライブの出演をキャンセルさせていただきました。

ライブ出演のキャンセルをすることは、出演者にとってもとても辛いことです。よほどのことがない限り、キャンセルはしたくないです。ここでずっと音楽をやっていきたいと思うから、呼んでくれるライブハウスにも大事な音楽仲間にも誠実でいたいです。

一緒にやろうと呼んでくださった方や、観に行くよと言ってくれた方々の気持ちを裏切ってしまうようで、本当にすごく悩んだし、こうした決断になって、本当に申し訳ないです。

だけど今は、今度ばかりは、私は大切な家族、大切な友達の安全を守ることに決めました。

連日テレビでライブハウスで感染者が増えたと報道されているのに、お母さんはどうして行くの?飛行機とか電車とか危ないんでしょ?どうして乗るの?と聴いてくる息子に、私は大丈夫だとは言い切れませんでした。


この数週間ずっともやもやしながら考えてきたのだけど、昨日、この文章を書きながら、ようやく決心ができました。

残念だけど、とても悔しいけど、今度の東京のライブは出演をキャンセルさせていただこうと思います。

何が正しいのかはわかりません。私の考えが間違っているのかもしれない。こんな無責任なことをして、もしかしたらこの決断を後ですごく後悔するのかもしれないし、これでもうミュージシャンとして音楽活動ができなくなってしまうのかもしれないけど、それでも仕方がないと覚悟しています。

関係者の皆さまには、本当にご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません。楽しみに待っていてくださった方にも、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

もし次の機会がいただけるなら、精一杯の歌で返していくしかないと思っています。


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こんな話をするつもりで書き始めたんじゃなかったけど、やっぱり避けては通れなかった。
今はとにかく、一日も早く事態が良くなっていくことを願うしかありません。

できる限りの自己防衛をして、無理なくできることをやって、心も体も健康でいられるように。たくさん食べて寝て笑って、大切な人と共に楽しい日々が戻ってくるのを待つしかありません。充電期間、練習期間だと思って腐らないで過ごせたらいいですよね。

一番大切なものを見失わないように。


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神様にお願いしてきた。

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2020.3.5
ウスイヒロミ


ありがとうございます!創作の力と糧に!