『短歌人』2018年4月号掲載五首

富士山に登るひとあり顔しかめ酸素は良いねゆつくりと言ふ

日が暮れる 雪を掻く音聴こえきて三日のお節はぽつりぽつりと

切実な願ひを込めて一文字を書にしたためるやうに一日

死ぬときは選べざれども三日とろろ食みにし記憶の貴かりけり

蟻の巣のやうな新居に老婆逝く桃と林檎の畑の奥で