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倫敦1988-1989〈11〉テート・ギャラリー

あと数日で日本か…と少し憂鬱になりながらも、ひとりで地下鉄に乗る。今や地下鉄やバスにも慣れ、タクシーも乗れる。ロンドンキャブを止める時には腕を真横に上げる。何故かは知らないがみんなそうするので真似をする。

ビクトリアラインに乗り、ピムリコ駅で降りる。車内の吊り玉につかまっていたので手が金属臭い。ピムリコ駅からしばらく歩くとテート・ギャラリーがある。今日ここでやっているディヴィッド・ホックニー展を見るのだ。

それにしてもスケールがでかい。大英博物館ほどではないにしろ、見て回るのも一苦労だ。後にコレクションが収蔵しきれなくなり「テイト・モダン」という別館ができるのだが、その建物は元発電所だそうだ。さぞかし広いのだろう。

入り口から奥へ、ずっと歩いてはいるのだがホックニーにはたどりつかない。しかしその道中の絵画も逸品揃いであるから足を止めずにはいられない。まるでそこに光が射しているようなレンブラント。手を翳すと温かささえ感じる。ターナーのコレクション、そしてオフィーリア!耳元で水の音がするようだ。こういった重厚なアートの先に急にロイ・リキテンスタインが
登場したりする。ポップなドットの連続。集合体恐怖症の人にはダメかもしれない。

休憩所を隔てて、やっとホックニーのコーナーについた。淡く、軽く、明るい色彩の世界。プールや中国の絵が多かった。アクリルの他に写真やクレヨン画もあった。ダックスフンドみたいな感じの犬の絵が可愛くて、ギャラリーショップでポスターを買った。

今頃Mちゃんは新しい家を探して物件巡りをしているはずだ。正月早々難儀な…と思うがこっちの人はあんまりお正月感がないようで、店も普通にやっている。アメリカ人もクリスマスからカウントダウンはアホみたいに盛り上がるのに、年が明けると何もなかったように仕事に行くらしい。日本人はクリスマスも正月も祝っていい加減なものだが、楽しみは多い方がいい。私がもっとロンドンにいられたら節分もバレンタインも雛祭りもやって日本人の節操のなさを見せてやりたいと思った。

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