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倫敦1988-1989〈5〉大英博物館

倫敦の街並みは古い石積みの建物が多く、まるで映画の中にいるような美しさだ。中でも大英博物館は城のように重厚で大きく、一日で回れる気が全然しない。夜はまた遊びに行かないといけないので「巻いて行こう」と気合をいれる。ミイラコーナーは興味があったので少しゆっくり観察するがなかなか生でミイラを見る機会はないのでドキドキする。猫のミイラがあるのはエジプト人の猫好きを思えば理解できるが、魚のミイラまであるのは驚いた。
何体も人間のミイラが並び、ただでさえ怖い雰囲気なのに背後から「酷いハナシよね〜」と声をかけられビクッとなる。

振り向くとフィフィのような女性が立っていた。「そもそもウチらの先祖なのに勝手に持っていって見せ物にして。海賊かよって感じ。先に文明が発達しただけで道徳がなってない。本当に先に文明開花したのはこっちなんだからもっとリスペクトしろって思うわ」一気に捲し立てられて、私に言われても…と思ったが「あんたならわかるでしょ?勝手に植民地にされてさぁ」と言われて香港人と思われていることに気づいた。「確かにアヘン戦争については酷いと思うけど、香港は住みやすいですよ。特に私が住んでる九龍は」と答えるとフィフィはヘンな顔をして離れていった。ヤバいやつだと思われたのだろうか。その後、九龍城は取り壊され、香港は中国に返還されるのだが、当時の私は知る由もなかった。

それにしても広い。展示物も世界中から集めたあれこれが所狭しと飾られているので半分も行かないうちにグッタリだ。館内のソファで休み休み進むと彫像や絵画を模写する人達に気付く。写真も撮り放題で入館料はまさかの無料。奥さ〜ん、文化レベルが違うよ。

しかし大好きなシルクロードの神々を見ないわけにはいかない。インドのシヴァ、スリランカのターラー、ギリシャの仏頭なんかもたまらない。セクシーでクールなイケてる神をまとめて拝めるのはありがたい限りだ。

そして楽しい楽しいミュージアムショップへ。私は東京博物館でもハニワグッズや鳥獣戯画手拭いを買ってしまう人間なので、あらかじめ予算を決めている。そうしないとミニロゼッタストーンを親戚の数だけ買ったり、原寸大のエジプトの猫の彫像を欲しがったりするからだ。

結果的にはミイラの棺型ペンケースや
ツタンカーメンのマグネットなどを買った。エジプトものばかりになったのはさっきのフィフィの影響かもしれない。全然怖くないファラオの呪いであった。

            (続く)

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