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倫敦1988-1989〈12〉オチョコチョイ

Mちゃんの引っ越しの手伝いに追われているうちにロンドン最後の夜が来た。Mちゃんの新しい家は庭付きの一軒家でとても可愛らしい。ものすごく古いのと中心地からはずれているので
家賃もまあまあ手頃。

私はおみやげ用にハロッズでクッキーを買ったのだが、それのジンジャー味にハマって全部食べてしまった。仕方なく近所の雑貨屋で駄菓子みたいなのをたんまり買い込んだのだが
Twixというチョコバーにハマり…結局おみやげ品は全体的にマズそうなものが残った。ちなみにTwixはイギリスじゃなくてアメリカ製なことを後に知る。

荷造りはめんどくさいのでギリギリまで引き延ばす。延ばしたところで自分が困るだけなのだが。

限界を感じて乱雑に荷物を詰めはじめる。明らかに「何か」が増えていてトランクが閉まらない。そんなに嵩張るものは買った記憶がないので不思議に思いながらトランクの上に座っていると、中身が圧縮されたのかやっと閉まった。閉まったはいいが、引いて歩こうとすると地獄の重さである。

「空港まで送るから大丈夫だよ」とこんな時ばかりは英国紳士ぶりを発揮するエディとマイロ。しかしトランクを持ち上げて「む…むぅ…」と唸る。「オマエ、これ何入れてんだ?」と強制的にトランクを開けられ「I kill you!!」と言われる。なかなか言われないセリフだ。

ブライトンで拾って密輸しようとしていた石がトランクからゴロゴロでてきてMちゃんからも「あんたバカなの?バカなんだね!」と言われる。「どうしても持って帰るならひとつだけ!ひとつだけ選びな!」と詰められ、泣く泣くピンクっぽいのを選ぶ。

それでもまだトランクは重く、エディとマイロに毒付かれながらヒースローへ向かった。空港内のバーでギネスを飲みながら、帰りのチケットの確認を一切してなかったことに気付いた。時は夜の10時。離陸は夜の11時だったよね…と盤石の自信でチケットを見たら昼の11時発だった。夜出立だと思い込んでウダウダしていたが私は朝から間違っていたのだ。

完全に「無」になった私を見てMちゃんはすべてを察したようだ。「やったね…」「ハイ、やりました」。仕方ないのでそこからは私の奢りで飲み放題となり、エディとマイロに「オチョコチョイ〜」「オチョコチョイ〜」と変な発音でバカにされながら家へ帰った。

           (つづく)

#ロンドン
#イギリス
#海外旅行

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