腰方形筋の役割と腰痛との関連性

腰には腰方形筋という筋肉があるのですが、なかなか理解しにくいことがあるかと思います。


腰方形筋の役割

腰方形筋には色々な機能がありますが、身体を安定させる機能にも注目したほうがいいかもしれません。

  • 身体を反らすような動きに腰方形筋が働きますが、筋肉の形状などを考えると腰方形筋よりも脊柱起立筋のほうが身体を反らす力を生み出しやすいと考えられています1。

  • 腰方形筋は身体を横に曲げるような動作にも働きますが、これも筋肉の形状を考えると腹斜筋などのほうがより大きな力を生み出しやすいと考えられています1。

腰方形筋は主役になるというよりもサポートする役割のほうが強いと言えるのではないかと思います。


腰方形筋の左右差と腰痛のリスク

スポーツの特性上で多少の腰方形筋の左右差であれば問題ないこともあるようです。

  • フットボール選手は軸足の腰方形筋のほうが反対側と比べて大きい傾向にあり、その左右差は怪我には関係していなかったことが報告されています2。

  • テニス選手にも腰方形筋の左右差がある傾向にあったそうです3・4。こういった左右差があるスポーツにおいては体幹周りの筋肉が非対称に発達することは珍しくないようです。

  • クリケットの選手の腰痛をシーズンを通して追跡したところ、腰方形筋の左右差が大きかった選手のほうが腰痛を発症していなかったそうです5。一方で左右差が大きかった場合に怪我が増えたという結果も報告されています6。

スポーツの性質によっては多少の非対称さが好ましい場合もあるのかもしれませんが、極端にバランスを崩してしまうような場合には逆効果なのかもしれません。


腰方形筋が過度な発達と腰痛のリスク

腰方形筋の働きは大事ですが、過度に発達して周辺の筋肉とのバランスが取れないことは怪我につながるかもしれません。

  • ある研究で多裂筋に対して腰方形筋が大き過ぎてしまうと将来の怪我の発生率が増える傾向にあることが報告されています7。

  • 腰痛を持っている人の座る姿勢において、脊柱起立筋の活動量が少なくなっている代わりに腰方形筋などの活動量が増えていた場合には腰痛との関連性があったことが報告されています8。

このように周辺の筋肉とのバランスが乱れてしまうことが怪我の原因のひとつと考えられるかと思います。


腰方形筋のエクササイズについて

腰方形筋を狙って鍛えることは簡単ではありません。
筋肉の活動量を調べた研究によるとサイドブリッジなどのエクササイズが効果的であり9、横方向や回旋などの負荷のほうが腰方形筋が働きやすいのではないかと考えられます。

腰方形筋が働きやすいエクササイズはいくつかあるものの、他の筋肉の影響を完全に切り離して腰方形筋だけを単独で鍛えることは難しい部分もあります。


まとめ

腰方形筋はサポート役に徹している筋肉であり、他の筋肉との関係性などのバランスが大事になってくるかと思います。


<参考文献>

  1. Andersson EA, Oddsson LIE, Grundström H, Nilsson J, Thorstensson A. EMG activities of the quadratus lumborum and erector spinae muscles during flexion-relaxation and other motor tasks. Clin Biomech (Bristol, Avon). 1996;11(7):392-400.

  2. Hides J, Fan T, Stanton W, Stanton P, McMahon K, Wilson S. Psoas and quadratus lumborum muscle asymmetry among elite Australian Football League players. Br J Sports Med. 2010;44(8):563-567.

  3. Sanchis-Moysi J, Idoate F, Izquierdo M, Calbet JA, Dorado C. The hypertrophy of the lateral abdominal wall and quadratus lumborum is sport-specific: an MRI segmental study in professional tennis and soccer players. Sports Biomech. 2013;12(1):54-67.

  4. Sanchis-Moysi J, Idoate F, Álamo-Arce D, Calbet JAL, Dorado C. The core musculature in male prepubescent tennis players and untrained counterparts: a volumetric MRI study. Journal of Sports Sciences. 2017;35(8):791-797.

  5. Kountouris APGD (Sports P, Portus M, Cook J. Cricket Fast Bowlers Without Low Back Pain Have Larger Quadratus Lumborum Asymmetry Than Injured Bowlers. Journal of Sport Medicine. 2013;23(4):300-304.

  6. Forrest MRL, Hebert JJ, Scott BR, Brini S, Dempsey AR. Risk Factors for Non-Contact Injury in Adolescent Cricket Pace Bowlers: A Systematic Review. Sports Med. 2017;47(12):2603-2619.

  7. Hides JA, Stanton WR. Predicting football injuries using size and ratio of the multifidus and quadratus lumborum muscles. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2017;27(4):440-447

  8. Park RJ, Tsao H, Claus A, Cresswell AG, Hodges PW. Recruitment of Discrete Regions of the Psoas Major and Quadratus Lumborum Muscles Is Changed in Specific Sitting Postures in Individuals With Recurrent Low Back Pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(11):833-840.

  9. Imai A, Okubo Y, Kaneoka K. Evaluation of Psoas Major and Quadratus Lumborum Recruitment Using Diffusion-Weighted Imaging Before and After 5 Trunk Exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 2017;47(2):108-114.