Hiroshi

米国BOC-ATCアスレティックトレーナー。 アメリカで6年間活動、帰国後に怪我でスポ…

Hiroshi

米国BOC-ATCアスレティックトレーナー。 アメリカで6年間活動、帰国後に怪我でスポーツを諦める人を減らす「Hero's Body」を起業。 マニアックな内容を個人的なメモ代わりにアップしています。

最近の記事

筋膜リリースの効果について

筋膜リリースとは?筋膜リリースは英語でMyofascial releaseなどと呼ばれ、小さな力を反復的に加えて筋膜を伸ばすことなどを目的とした手技の総称を言います1。 とはいえ様々な広告や雑誌、SNSを見ていると、筋膜リリースと言いながらただのストレッチではないか?、ただのマッサージではないか?と思うこともしばしばあります。 筋膜リリースの明確な定義というのは曖昧なもので、狭い範囲で言えば筋膜に効かせるもの、広い範囲で言えば身体をほぐす行為全般という印象です。 そもそ

    • ピッチング時の肘の内反トルクが肘の負担につながる?

      ピッチャーの肘の手術は大きな問題であり、ピッチング時の肘の内反トルクが肘の負担につながると言われたりしています。 肘の内反トルクとは?まず肘の内反(Varus Torque)とは何かについて簡潔に説明すると次のようになります。 肘の内反は外側の靭帯に負荷を与えるような力 肘の外反は内側の靭帯に負荷を与えるような力 肘の内反トルクの役割ピッチング時の外反トルクは肘の内側の靭帯に負荷を与えるのですが、その力に対抗・軽減するためには次のような要素があります2。 肘の内反ト

      • 肘の角度(肘外偏角)が怪我のリスクとなるのか?

        肘の靭帯への負荷にはピッチングフォームや練習量だけではなく、関節の角度や緩さなども関係しています。 同じような練習をしていても怪我をしやすい人とそうでない人とではこういった身体の構造も関係している可能性があります。 肘の角度と怪我の発生率次の図のように肘外偏角(carrying angle)が怪我のリスクと関係しているという考え方があります。 これは男女によっても差があると言われていますが、特に野球選手はこの角度に変化が生じやすく、この角度が大きいほど怪我をしやすいと言

        • 通学用リュック・カバンと腰痛の関係

          最近の子供たちは塾や習い事によってカバンやリュックサックに重い荷物を抱えていることが珍しくないようです。 重い荷物を日常的に抱えて通学していると、これが時には腰への負荷へとつながることがあるようです。 通学用リュックサックと腰痛複数の研究で通学用リュックサックと腰痛には一定の関係があることが明らかになっています。 海外ではリュックサックを用いることが多いため、通学用カバンではなくリュックサックに関する研究をご紹介していきます。 重さ 重いリュックやカバンは腰の負荷へ

        筋膜リリースの効果について

          ウェアラブルセンサーによる投球フォームの改善について

          軽量なセンサーを取り付けたスリーブをつけることで投球時の肘のストレスを簡単に評価できるとあって、何かと話題を呼びつつあるMotusのウェアラブルセンサーです。 従来ではこのような負荷の分析には数千万円もする設備が必要で、野球場の中ではなくわざわざ研究室で測定しなければならず、しかもデータの分析に数時間もかかってしまうものでした。 Motusセンサーによる測定肘に加速度計とジャイロスコープを兼ね備えたセンサーをひとつ付けて、そこから投球動作のデータをスマホなどで見ることがで

          ウェアラブルセンサーによる投球フォームの改善について

          体幹部の回旋動作のタイミングとピッチャーの怪我の関連性

          最小限の力で効率的に動くことができると身体への負荷を下げつつ、高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。 がむしゃらに身体を鍛え可動域を上げていくことも大事ですが、どうやったら質のいい動きができるようになるのか?という理解も役に立つことかと思います。 そこで今回は、体幹部の回旋動作に焦点を当てて解説していきたいと思います。 体幹部の回旋動作の速度や角度が球速に影響している?体幹部の回旋動作は重要だと考えられていて、こういった動作のトレーニングが行われていたりします。

          体幹部の回旋動作のタイミングとピッチャーの怪我の関連性

          ドローインに腰痛を減らす効果があるのか?

          体幹トレーニングという言葉を耳にすることが増えたかと思いますが、それと同時にドローインという言葉も耳にしたことがある人も少なくないと思います。 ドローインとはお腹を凹ませながらやるエクササイズのことを言います。(厳密にはもっと細かい手順がありますが) こういったエクササイズにより腹横筋と呼ばれるお腹をコルセットのように包んでいる筋肉が鍛えられ、腰痛改善やスポーツのパフォーマンスができるのではないかと考えられています。 しかし、体幹トレーニングについては熱い議論が交わされ

          ドローインに腰痛を減らす効果があるのか?

          ピッチング時の肘の外反ストレスと靭帯損傷のリスク

          肘の外反トルクとは?ピッチング時の肘の外反トルクは肩の最大外旋時において発生していると考えられています1。 このストレスが肘の内側の靭帯の損傷につながっていると考えられています。 肘の外反トルクと肘の故障実際にプロのピッチャー25名の投球動作を分析したところ、肘を痛めたピッチャーは肘の外反トルクが高い傾向にあったそうです2。 ピッチャーの肘の痛みを減らすためには、このピッチング時の外反トルクを減らすことが役に立つ可能性があるわけです。 肘の外反トルクに影響する要素ピッ

          ピッチング時の肘の外反ストレスと靭帯損傷のリスク

          中臀筋について

          中臀筋は股関節の安定性に大きく関わっており、中臀筋の機能低下が怪我のメカニズムに影響を与える可能性があります。 中臀筋の役割について中臀筋は片足立ち状態やランニングの接地時などに身体のバランスをとる働きがあります。 中臀筋の機能が低下することで左右のズレが生じやすくなったり、身体のバランス保持能力が低下したりすることが考えられ、 反対側の骨盤が落ちてしまいやすくなると考えられています。 特に中臀筋の後部線維が片足バランスにおいて重要であると考えられています。 ロボッ

          中臀筋について

          変化球の手首の動きで肘の靭帯への負荷が変わってくる?

          変化球を投げることがピッチャーの怪我に繋がるという考え方がありますが、そのメカニズムはまだまだわからないことも多くあります。 変化球の投球動作解析で見落とされがちなことモーションキャプチャーなどを使って投球動作を解析すると、変化球は身体への負荷が少ないという結果になってしまいます。こういった解析は球速がとても大きな要素であり、手首の動きなどが十分に考慮されているわけではありません。 変化球を投げることにより手首の動きが異なってくることがあり、この手首の位置によって肘の靭帯

          変化球の手首の動きで肘の靭帯への負荷が変わってくる?

          変形性膝関節症と骨棘の形成による膝の負荷の増加

          膝の軟骨の損傷などの変形性膝関節症には、骨がトゲのように出っ張る骨棘の形成が関わっています。 骨棘と変形性膝関節症骨がトゲのように少し出っ張る骨棘の形成は、変形性膝関節へとつながるリスクがあります。 早期の変形性膝関節症の人でも膝の骨棘が多く形成されている傾向にあることが報告されています1。 骨棘の形成は将来の変形性膝関節症の発生率を高めることが報告されています2。 骨棘の形成と軟骨の損傷には強い相関関係があることが報告されています3・4。 このように膝の骨棘は変形

          変形性膝関節症と骨棘の形成による膝の負荷の増加

          膝の脂肪体と変形性膝関節症との関係について

          膝の怪我には様々なものがありますが、膝周りの脂肪体の状態が膝周りのコンディションを反映していることがあります。 膝の脂肪体の解剖膝の脂肪体は滑膜に近いところにあり1、衝撃吸収や関節の動きの円滑化といった役割があると考えられています。 膝関節の動きに合わせて脂肪体も動くようで2、脂肪体を取り除くと膝の動きに影響が及びます3。 膝の脂肪体と炎症における役割膝の脂肪体には炎症時に脂肪体から様々な化学物質を放出すると考えられています4〜6。膝の脂肪体には他の脂肪とは違う特徴があ

          膝の脂肪体と変形性膝関節症との関係について

          変形性膝関節症と歩き方の特徴について

          歩行動作が変形性膝関節症に関係していることがありますが、特定のパターンに限定されるわけではなく人それぞれ違う歩き方になることは珍しくないかと思います。 歩き方・歩行動作歩行動作次第では膝の軟骨への負荷が高まることがあります。 歩行時の膝の内反(O脚)による負荷 変形性膝関節症の特徴のひとつとしてO脚のような歩き方があり、これが変形性膝関節症と関係している可能性があります。 症状がより重い人達は歩行時のこの負荷が大きい傾向があることが報告されています1〜3。 膝の角度

          変形性膝関節症と歩き方の特徴について

          膝の内反(O脚)が変形性膝関節症の原因なのか?

          一般的に膝の内反(O脚)が変形性膝関節症につながりやすいと考えられています。 膝の内反(O脚)と内側の変形性膝関節症膝の内反(O脚)は変形性膝関節症に関係しており、特に内側の軟骨のダメージにつながります。 膝の内反は膝の内側の変形性膝関節症のリスクを高める可能性があることが報告されています1〜4。 膝の内反が軟骨の内側への負荷を高めることが有限要素法による解析で明らかになっています5。 このように膝の内反(O脚)へとつながりやすくなるため、膝のアライメントを整えること

          膝の内反(O脚)が変形性膝関節症の原因なのか?

          腰方形筋の役割と腰痛との関連性

          腰には腰方形筋という筋肉があるのですが、なかなか理解しにくいことがあるかと思います。 腰方形筋の役割腰方形筋には色々な機能がありますが、身体を安定させる機能にも注目したほうがいいかもしれません。 身体を反らすような動きに腰方形筋が働きますが、筋肉の形状などを考えると腰方形筋よりも脊柱起立筋のほうが身体を反らす力を生み出しやすいと考えられています1。 腰方形筋は身体を横に曲げるような動作にも働きますが、これも筋肉の形状を考えると腹斜筋などのほうがより大きな力を生み出しやす

          腰方形筋の役割と腰痛との関連性

          ピッチャーの投げすぎによる骨棘形成と怪我のリスク

          怪我をしたピッチャーが手術時に骨の出っ張りを少し削ってなめらかにすることがあります。 このような骨の出っ張りがどのように形成されるのか、そのメカニズムについてご紹介していきたいと思います。 ピッチャーの投球と骨棘の形成投球イニングが増えると肩や肘に骨が少し出っ張るように骨棘が形成される傾向があることが報告されています1。 ピッチャーの繰り返しの投球により肩や肘にダメージが蓄積していっていることも骨の変形に関係しているかもしれません。 関節が不安定なことも骨棘形成の要因

          ピッチャーの投げすぎによる骨棘形成と怪我のリスク