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6.痛みなんていらないと思ったけれど、痛みがあるおかげで生き延びている。


パキッという甲高い音。電流のような衝撃。そのままうずくまってしまった。

自宅にある硬い柱に(やわらかい柱があればいいのに)、右足の指先を思いっきりぶつけてしまった。サッカーボールを蹴るみたいな勢いで。久々にもんどりうった。もんどりうつ、で日本語あってる?

タンスの角に小指をぶつけるのはよくあるけれど、痛いけれど、たいてい1時間もすれば何事もなかったように暮らすことができる。足の小指は不死身だ。小学生の頃から知っている。


でも今回は、中指だった。中指を柱にぶつけるって、どういうシチュエーションなのかよくわからないけれど、きっと風呂上がりでYou Tubeの続きがはやく見たくて焦っていたのだ。焦って、中腰のまま、体勢を半回転させて最短で机に向かおうとしたら(どいういうシチュエーションだ)、あやまって柱に激突させたらしい。中指だけ。

ズキズキとかジンジンとかとも違う、カミソリで切られるような痛みがずっと続いた。寝てるときも。痛くて目が覚めた。翌朝、紫色に腫れていた。もしや、と焦った。これってもしや、ヒビとか骨折とかじゃないの?


自慢だけれど、ヒビも骨折も、人生で経験したことがなかった。他人のは見たことがある。父が足を骨折したとき、足全体が内出血で紫色にパンパンに1.5倍ぐらいに腫れていた。それに比べたら、今回のは1.1倍ぐらいだ。気持ち腫れているという程度。そろりそろりと歩くぶんには大丈夫。でも指先がなにかに触れると(靴下を履くとかでも)激痛が走るのだ。


最強の兵士は、痛みを感じない兵士だ。あ、戦場での話ね。

痛みをまったく感じなければ、銃で撃たれたって平気だから、たしかに最強だ。ゾンビみたいなものだ。世界各国は最強のゾンビ兵士をつくるために、麻薬とか麻薬で脳内を麻痺させて戦わせたりした。

(ちなみに、なんで銃の先に剣(銃剣)をつけるかというと、ゾンビ兵士が猛ダッシュしてきたら、弾を当てても突っ込んでくるし、即死だったとしても慣性の法則で何メートルも走ってくるそうで、そうなると敵が銃剣を装着していたらこっちはそのままズブリとやられてしまう。それを回避するために、接近戦の可能性のあるときは、昔から現代に至るまで銃剣をつけるのが決まりというか鉄則なんです)


痛みを感じなければ、たしかに最強だし、生きるうえでもめっちゃ利点になるのでは? 

と思って調べてみたら、生まれつき痛みを感じない人がいるそうです。痛点がないらしい。足をぶつけても痛くないし、頭痛もないし、腹痛もないし、肩こりもないし、腰痛もないし、歯も痛くならない。めっちゃいいことずくめじゃん、って思ったけれど、次の事実を知って撤回した。

痛みを感じないということは、自分が骨折していることにも気が付かないということだ。足の骨が飛び出したまま走り続けたりするそうです。痛くないから。でも、そんな状態だと当然、身体の炎症反応は起こるわけで、というか肉体的に機能不全に陥ってしまう。後遺症が残ったり。

ケガをして血がドバドバ出ていても、痛くないから気が付かない。そのまま失血死する場合もある。

痛みがないから、それが危険な行為だとは気が付かない。だから生傷が絶えないし、生傷どころが、骨折とか致命的なケガとか、病気とか、そういうものに気が付かない。舌を噛み切っても気が付かない。火傷をしても気が付かない。腹痛も頭痛も気が付かない。虫歯にも気が付かない。

痛みを感じないということは、危険を察知できないということだ。残念だけれど、長生きはできないそうです。

身体の痛みを感じることができるから、なんとか生きていられるのかもしれない。そう思うと、極論すれば、痛みにも感謝の念が湧く。いや痛いけれど。でも、この痛さも、生きる上で必要なことなのだ。

もしかしたら心の痛みも。




整形外科でレントゲンをとってもらったら、骨には異常がなかったようで、よかったです。これからは落ち着いて、慌てず騒がずにYou Tubeを見ます。


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