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「減価償却」が理解できないサラリーマン投資家は、築古木造アパートを買ってはいけない!

サラリーマンのための投資戦略(20)】
このマガジンでは、サラリーマンが「信用資産=お金を借りる信用力」を活用して「年収の10倍以上の資産」を作るための方法を解説しています。

マガジンに記事をまとめています。➡【サラリーマンのための投資戦略】

今回は、「木造築古アパートを売りたくてたまらない人たち」から怒られそうなテーマを取り上げます。

正直、この記事を描くかどうかは、少し迷いました。

でも、十分な税金や会計の知識もないまま、大きな借金をして「築年数が20年を超えるような木造アパート」を買い進めようとしているサラリーマンの方が多いので、注意喚起したいと思います。

1、税務上の「減価償却」の計算が分からない人は、勉強するまで、木造アパートを買ってはいけません。

不動産の価値は土地部分と建物部分から構成されていますが、「減価償却」が関係しているのは建物部分です。

(1)土地部分の価値

土地部分の価値は、土地の取引価格で決まります。時間の経過とともに、人気がある土地の値段は上がり、人気のない土地は値段が下がります。

ですので、「減価償却」は土地部分の価値の変動には関係がありません。

(2)建物部分の価値

「減価償却」が関係するのは建物部分です。

建物部分は古くなると価値が失われます。難しい計算をしなくても新築の建物と築40年の建物を比べて見れば、築年数が古くなるほどに、価値が失われていることはわかると思います。

古くなるとどのくらい価値を失うかについては、物件の建てられ方とその後メンテナンスで消耗度合いに大きな差が出ます。良い建物をしっかりメンテナンスすれば、使用できる期間が長くなりますので、建物部分の価値は下がりにくくなります。

一方、税金をいくら払うかという計算では、どの建物も「建物構造によって決められた共通のやり方」で計算することとなっっています。この計算の方法を「減価償却」と言います。

2、木造アパートへの投資で「減価償却」が重要な理由

<注意点>ここからの説明はわかりやすいように細かな点を省略します。木造アパートの購入に際して「原価償却」への理解がなぜ大事なのかをざっくり理解しましょう。

(1)減価償却による節税の仕組みを理解しよう。

楽待で検索した「福岡市内の築10年、売出価格5000万円の木造アパート」で考えてみましょう。

築年が10年の木造アパートの場合、「減価償却」によって、購入後の14年間、建物部分の価値に0.072をかけた金額を経費にすることができます。

物件価格が5000万円で土地評価が2000万円の物件を購入した場合は、建物部分の価値である3000万円に0.072をかけた金額、216万円が経費になります。

不動産所得にかかる税金は人それぞれですが、仮に税率20%だったとしたら約43万円を毎年節税できることとなります。

14年間の節税の総額は605万円です。

5000万円の物件の表面利回り7%と楽待に書いてありますから、年間の家賃収入は350万円くらいです。家賃収入くらべてみると、毎年43万円の税金を支払わなくて良いのは節税効果が大きいからですよね。

ただし、このケースでも14年を過ぎると税金の支払いが43万円多くなります。

減価償却ができなくなる14年目以降もローン返済が滞らないような資金計画が必要になってきますが、多くの投資家は、この14年目を迎える前に売却を検討しています。

(2)築古物件は減価償却による節税がほとんどできない。

次に、築年数が30年の木造アパートを購入したケースを考えてみましょう。

築年数が30年くらいになると多くの場合、物件価格の大部分が土地価格になっているはずです。(そうでない物件は購入を再検討すべきかもしれません。)

楽待で同じく福岡市内の物件を検索してみます。

土地評価が2000万円の物件を2500万円くらいで売り出しているものがありました。建物部分は500万円です。(築年数が30年であっても、家賃収入が維持できていると、実際のマーケットでは建物部部の価値がある程度評価されています。)

築年数が22年を超えた物件は、建物部分の価格に0.25をかけた金額を4年間だけ経費として計上することができます。

このケースですと毎年125万円が経費計上できます。所得税率が同じく20%とすると、年間約25万円、4年間で約100万円の節税となります。

そして、5年目以降は節税効果がありません。

(3)築10年と築30年の購入金額の価格差を考えてみる。

売出価格で比較すると、築10年の物件は5000万円で、築30年の物件が2500万円なら、価格差は2500万円ということになります。

ところが、上記のように「減価償却」のよる節税効果を加味すると、今回のケースでは、節税メリットの差が505万円(=605万円ー100万円)があるので、価格差は1994万円まで縮まります。

節税メリットを加味すると、築10年の物件の売出価格は5000万円ではなく4395万円、築30年の物件の売出価格は2400万円として比較しなければなりません。

売り出し価格を「節税メリット」で価格補正すると、だいぶ印象が変わってきませんか?

(4)他の建物構造はどうか?

鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年、鉄骨造では27〜34年です。木造アパートに比べると減価償却できる期間が長いことが分かります。

例えば、サラリーマン投資家が購入することが多い「区分所有マンンション」の場合、その多くが鉄筋コンクリート造なので、減価償却は木造アパートの2倍の期間をかけて緩やかに経費化が進みます。

そのため、比較的長期間にわたって節税メリット受けることができます。

中古マーケットで多く見られる築年数が20年くらい経っている区分所有マンションでも、減価償却が可能な期間がまだ30年近く残っているのです。

3、築古木造アパートに出口戦略はあるのか?

投資資金が潤沢にある投資家にとって、木造アパートの成功方程式は「①新築あるいは築浅の物件を購入し」「②比較的高い家賃収入を得て」「③原価償却が可能な期間内に高値で売却する」ことでしょう。

今市場に出回っている築年数が10年から20年前後の木造アパートは、その成功方程式に乗っている不動産投資家たちが、「不動産投資ブームが消滅してしまう前」に、そして「銀行がサラリーマンに対して不動産融資を続けている間」に「高値で売り抜けようとしている物件」なのです。

売主だけなく、販売側の不動産業者も、高く売れる方が手数料が大きくなりますので、当然ですが売り手側の人たちです。関係者の誰もが、そうした物件を早くしかも高値で売りたいのです。

買い手であるサラリーマン不動産投資家は、孤独な戦いをしていると肝に銘じておきましょう。

買い手にとって「耳に優しいセールストーク」は、買い手のためのアドバイスではないのです。

私たちが「築古木造アパート」を購入する際に考えなくてはならないことは、購入後の出口戦略です。

このことは「減価償却」の知識と同じくらい、私たちサラリーマン投資家の不動産投資が成功するかどうかへの影響が大きいのです。

◆築40年の木造アパートを、実際に見たことがありますか?

◆木造アパートの取り壊し費用がいくらかかるか知っていますか?

築年数が10年から20年前後の物件を購入して、長い不動産ローンを返済し終えた後に「築年数が30年から40年前後になった物件」をどう活用するのか?ということが重要なのです。

私たちは、購入を決断する前に、10年20年先に想いを馳せ

◆将来、誰かが買ってくれるような物件(底地)なのか?

◆取り壊してアパートを建て替える資金計画(ローン手当)が可能なのか?

ということを考えなくてはなりません。

この「問い」への答えは、買い手である私達以外は誰も関心がないのです。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

山海弘