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2008年延辺+長春+大連旅行(概略版)

 2008年7月@吉林省防川。中朝露三国国境地帯。手前が中国。左がロシア。右が北朝鮮。奥が日本海。地の果て感満点。
 この国境を形成する川の名を豆満江(トマンガン 中国名:図們江トゥメンチャン)。この川は日本海に達する前にロシアとも国境を形成するのだが、中朝露三国の国境合流地点が、日本海からほんの数キロ上流のところにあり、そのため中国は直接日本海に出ることができない。
 時はちょうど北京オリンピックが開催される年の夏。本当ならシルクロードに行くつもりだったが、外務省の渡航情報で現地の危険度が上がってしまったので、予定を変えて、世界級の嫌われ者国家トップ3、中国、ロシア、北朝鮮(かなり言い過ぎ)の国境に行ってみた。こっちの方が危ないのではないかという突っ込みは一切受け付けない。
 中国吉林省の山奥に延吉という街があり、そこは延辺朝鮮族自治州の州都。そんな田舎街でも朝鮮民族つながりでソウルからの直行便の飛行機がある。アシアナ航空で移動したのだが、ソウルでの飛行機のチェックインから少し躓いた。なぜか係員が「日本人はビザがいらないかどうか確認します」と言ってきた。要らないに決まっとろうがバーローめと思ったが、ここは鷹揚に「はい」と答えた。ところがかなり確認に時間がかかってしまった。僻地に行くから調べるのかとも思ったが、そんなことない。あまり時間がかかると、実はビザが必要だったのかと想像してしまう。結局「必要ありませんでした」といわれたが、そんなこと百も承知だ。その時は随分幸先が悪いと思ったが、結果的に現地到着後、悪い予感が現実となった。

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 飛行機の乗客は、誰が何人なのかよくわからなかったが、どこかで日本語と韓国語だったかをちゃんぽんで話す国籍不明の女性の声が響いていた。
 飛行機は、北朝鮮を避けながら、ソウルから1時間半くらいで延吉に到着した。過去、いままで入国審査のところでなにか調べられた記憶はなかったが、この時は係員からなにか話しかけられ、言葉がわからないので黙っていると、荷物をピックアップして別室へ連れて行かれた。そこでバッグを開けられ、荷物を全部チェックされ、「これはなんだ」といちいち聞かれた。そのうちに、先程のちゃんぽんの女性も連れてこられた。お互い当局から怪しい人物に認定されたようだ。この女性もやはり荷物検査を受けたが、言葉ができるのでそれほど時間がかからなかった。そして自分の荷物についても係員に説明してくれた。デジタルカメラを取り出して「何か怪しいものはとってないかと聞いている」と言われたので、「これから撮る」と答えた。そのうちに女性は先に出て行ってしまった。私は何もあやしいことは「まだ」していないので、結局お咎めなしで解放されたが、北京オリンピック妨害を警戒しているのだろうか。実際、聖火ランナーはつい最近通過していったらしい。テロリストが、警戒の薄い辺境から入ってくることを想定しているのだろう。そもそも第三国人がここにくること自体が間違いなのかもしれない。空港の出口には、本当に誰もいなかった。タクシーもいなくて、遠くの駐車場まで行って捕まえなければならなかった。
 今回の目的地は、交通の不便なところなので、日本から車をチャーターした。今回車を手配した現地の旅行会社はHPが日本語で、その中に現地ガイドとして、若い女子大生の顔写真が数名載っていたので、どんな美人がやってくるのか楽しみだったりした。ホテルの部屋の電話に旅行会社から電話が入り、あいさつと打ち合わせにやってくるとのこと。
 しばらくしてやってきたのは、きつね目の色白の細い朝鮮族の男性。日本語はほぼぺらぺら。一応社長とのこと。愛知産業大学に留学したことがあり、美合あたりの寮で暮らしていたとのこと。明日いつ出発する云々を話したあと、一番の肝心事であるガイドさんについて、どんな子がくるのかすごく気になったが、ずばり訊くのも恥ずかしいので、「明日は社長さん自ら運転してガイドしてくれるんですか」と訊いたら「そうです」とのこと。あのHPは不当表示ではないのかと思った。
 三国の国境地点には展望台があり、右手は北朝鮮の平原、左手はロシアの小さな村、真ん中には北朝鮮とロシアを結ぶ鉄道橋があり、さらにその先には日本海があるのだが、この日は曇り空で日本海はよく見えなかった。ただ本当に中国領の端っこ、辺境に来てしまったという雰囲気が存分にあった。ここの景色のイメージとしては、火曜サスペンスドラマのエンディングで、BGMに竹内まりやの曲が流れながら、警察に崖の上まで追い詰められた彼氏に対して、女の人が刑事の横で「もうおしまいなのよ!」と絶叫しているシーンがよく似合う。ここはすっかり観光地化されており、それなりに旅行者がやってきていた。

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 帰路に、国境の川を跨ぐ橋がある街に寄った。この橋のほぼ真ん中に線が描かれてあり、ここが国境らしい。橋自体は北朝鮮までつながっているが、見物の場合はここまで行くことができる。そこには中国側の警察官らしき人物が一人立っていた。横で記念撮影をしていても、一歩だけ向こう側に足を踏み込んでも何のお咎めもない。全く緊張感のない国境だが、北朝鮮側には人影が見当たらない。

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 お土産屋で物色している時、北朝鮮のタバコが欲しくなり、ガイドに話をしてもらうと、お店の人はどこかからタバコ1カートンを持ってきて真っ黒な袋に入れて渡してきた。なんでもこれはちょっとおおっぴらに商いできないブツだとのこと。密輸品ということか。値段もそれなりにしたが、自分としては満足できる買い物であった。ところが後日、別の国境の街(丹東)でそのタバコはみやげ物屋で普通に売ってあった。値段も数分の一だった、どうやらおみやげ屋に一杯食わされたらしい。そんなこともあったが、高いお金をかけて行く価値は十分にあったと思う。
 美人女子大生ガイドはいないわ、買い物でも頼りにならないわという具合ではあるが、もしこの地を訪れることがあれば、この旅行会社を使ってやってください。まだやっていればだが。



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